第15話
「どうする? 山井くん」
「はい……」
「じゃあ、柳田くんの様子も見たいので、少しだけ上がらせていただきます」と先生。
金太は先生の影になりながらスニーカーを脱ぐ。新しい家の匂いとはべつに、自分の家にはない匂いに鼻をひくつかせた。
ママに勧められてリビングのソファーに腰掛ける。ふわふわと気持よくて、ママの姿が見えないうちに、2、3度軽く跳ねた。
ノッポのママは、ノッポの部屋の前で先生の来たことを小声で報せている。すぐにママはリビングに戻って来たが、ノッポはいつまでたっても姿を見せる様子がない。金太は気になってしかたなかった。
しばらくしてママは紅茶とクッキーを出してくれた。金太は最初遠慮していたが、先生に勧められると、嬉しそうにクッキーに手を伸ばした。
先生とママはなにやら難しい顔でノッポが休んだ理由についてしきりに話している。
金太はクッキーを食べ終わり、紅茶を半分ほど飲むと、ノッポのママに言った。
「オバさん、柳田くんは、部屋に、いるんですか?」
途切れ途切れの言葉で訊く。
「ええ、いるにはいるんだけど……」
「ぼく、呼びに行ってもいいですか?」
「ええ、かまわないけど、出て来るかな?」
ママは言いながら金太を部屋の前まで連れて行った。
「柳田くん、ぼく、山井。きみが学校休んでるんで、心配になって先生と様子を見に来たんだ」
金太は大きな声で言うと、部屋の前でしばらく佇んでいた。すると、カチャリとドアの開く音がして、バツのわるそうな顔でノッポが姿を見せた。
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