第13話 3

 次の日、ノッポは学校を休んだ。

 クラスのほとんどが風邪でもひいたか腹痛でも起こしたと思っていた。しかし、次の日もその次の日もノッポは登校して来ない。金太のこれまでの危惧が現実となってきた。

 担任の安田先生もさすがに気になったらしく、すべての授業が終わったあと、クラス全員に心当たりがないかをたずねる。おそらくさきおとといの出来事が原因に違いないと考えた金太は、勢いよく手を挙げた。

「はい、山井くん。なにか柳田くんのことについて知ってることがあったら先生に話してくれる?」

「先生、柳田くんが学校に来ないのは、ウサギの耳のことがあったからだと思います」

 と、大きな声で先生に訴えた。


 そのあとすぐに先生に呼ばれた金太は、先生と一緒にノッポの家に向かうことになった。その道すがら金太は先生に聞いてみたいことがあった。

「先生、飼育小屋のことだけどォ、犯人わかったんですか?」

「いいえ、残念だけど……。せっかく校長先生が、生徒たちの優しい心を育むようにと飼育小屋を拵えたのに、こんなことになってしまって、先生本当に残念だわ」

「先生、ひょっとして、うちの学校の生徒じゃないのかなァ?」

「山井くんはどうしてそう思うの?」

 先生は立ち止まって金太の顔を見る。

「いえ、なんとなくそんな気がしただけです」

「そお、それならいいけど、先生またてっきり山井くんが犯人を知ってるのかと思ったわ」

 先生は口元に薄っすらと微笑をたたえながら言った。

「違います」金太は真剣な表情で何度も首を横に振って否定する。

「でも、平気であんなかわいそうなことをするなんてね」

「ぼくもそう思います。なにもあそこまでしなくても……」

 金太は視線を足もとに落とした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る