第12話
秘密の小屋には、金太が自分の部屋から持ち込んだ、「名探偵 コナン」30巻が置いてある。ネズミの家はここから歩いて3分もかからない。だから毎日のようにここに来てマンガを読んでいる。
「なあ、ネズミ、昨日学校でウサギが殺されたんだ」
「知ってるよ」
ネズミはマンガの本から目を離さずに口だけで言う。
「なんで?」
金太は不思議に思った。
「お母さんとお父さんがご飯のときに話してたのを聞いた」
「そうか。そいで、きょうオレのクラスで、その殺されたウサギの切り取られた耳がペンケースから出てきたんだ」
「金ちゃんの?」
ネズミはやっと本から目を離して、新しいものでも見つけたような顔で金太を見る。
「違う、ほかのヤツのペンケース。だいたいやったヤツの見当はついてるんだけど、目撃したわけじゃないから、先生に報告することもできないんだ」
金太は顔をしかめて悔しそうな顔で言った。
これまで自分も散々嫌な目に遭ってきただけに、これ以上クラス内に犠牲者を出したくないと強く願っている。しかし残念なことに、すでにノッポが被害者になりつつある。1日も早く手を打たないと自分の二の舞になってしまう。
「それって、犯人のこと?」
「ああ」
金太が悔しげな顔をしたのは、犯人に対して沸々と込み上げてくる憤激がそうさせた。
「すごいね金ちゃん。名探偵みたいだね」
ネズミはマンガから目を離して、金太を見上げる。
「そうじゃないよ。ネズミにはわからないだろうけど、オレのクラスにイジメ屋がいて、そいつがやったに違いないんだけど、なんせ証拠がない。その現場をたまたま誰も見ていなかった。いや見ててもあとからの仕返しが怖くて誰も口を開こうとしないに違いない」
「ふうん。で、そのウサギの耳はどうしたの?」
ネズミは木の実のように目を大きくして、ウサギの耳にだけ興味を示す。
「うん、担任の先生が新聞紙にくるんで職員室に持って行った。それからは、ウサギの耳がどうなったか知らない」
「その犯人はいつ捕まる?」
ネズミは読んでるマンガを閉じ、目を耀かせて訊いた。
「テレビのサスペンスドラマじゃないんだから、犯人をつかまえるとか、警察に引き渡すとか、そんなんじゃない。でも、こればかりは犯人を見つけて、2度とこういうことをしないようにしないとだめだ」
「そうなると、いよいよぼくたちロビン秘密結社の出番だよね」
「そ、そうだけどォ、まだ結社はできたばっかだからな」
金太はネズミの意外な言葉に、どぎまぎするばかりだった。
「それもそうだね」
ネズミはわかっているのかいないのか、気のない返事を金太に返した。
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