8-48話 ハンドレッド・スティーリア
──100の氷柱達は相手が何人いようとも逃さない、Blue-MODEは最後の最後まで見逃せないものだ。
レーザーソードに変形可能な愛剣グレイシャル・ブイ、より激しい地を這う結晶が放てるクリスタリック・ストリーム、一瞬ながら忍者の如く消えかかる高速移動技のシャドー・グレイ。
次々とBlue-MODE限定の能力や技が明かされていくが、どれをとっても相手にしたくないものばかりだ。
「ここまでわたくしの気分が変わるとは思いませんでした……では、今のわたくしの集大成を見せつけます!」
そして、愛弥は刀梟隊の隊員でさえも恐れる究極の技、ハンドレッド・スティーリアで奴らを追い詰めようとする。相手が憎き虹髑髏という理由だけでない、愛弥の怒りのエネルギーも存分に込めている。
ハンドレッドの名前通りに100本の氷柱達が愛弥の周りにあらわれ、それをすべて奴らにぶつけようと目論む。Blue-MODEが100秒しか使えないのに合わせ、氷柱も100本というのも随分と辻褄が合うな。
「愛弥からすればもう奴らに眼中なんてない、あとは時間の戦いだな」
やはり気になってしまうのが、Blue-MODEの残り時間だ。時計を改めて見たらあと15秒程しかないし、長く溜め続けている時間なんてない。
うまく例えるなら、今からCM1本分見るくらいの感覚でハンドレッド・スティーリアを見るのか? 任務が終わるまでは黙ると心に誓ったし、最後の15秒間はもう愛弥の好きにするか。
「愛弥隊長のためだから仕方ない、俺も仕事しますかね……みんな俺の前に集まってくれ!」
「え? 和俊さん何故墨を、いったい何をするんですか?」
ハンドレット・スティーリアが放たれる前に、和俊さんがなにかうなずきながら能力である墨を左手から生成する。次に、俺達に対して和俊さんのもとへ集まってほしいと急遽号令する。
奴らには危害を加えないという公約はしたが、こんな大事な場面に和俊さんは何をするんだ? 愛弥と距離も結構離れているし、協力するのには無理がある。
「ぐだぐだするな令! 時間もないんだし、とにかく和俊の言うことを聞きな」
「愛弥様のためにも、今は和俊と毅の言うことを聞くんじゃ令くん」
こんなときでも毅の言い方には気に食わないが、半蔵さんも言っているからここは従って和俊さんの付近に集まるか。俺だけでない、大和田さんや桜井さんに加藤も同じ行動を取りはじめた。
仲間達が和俊さんの周りに集まっただけでも7秒は喰ってしまったが、ハンドレッド・スティーリア絡みの秘策がある和俊さんを信じよう。思えば学校のクラスメイトの兄貴はすごい能力者だなんて、昨日までの俺は信じそうにないな。
「よし、全員揃ったな。インク・リフレクト」
「おっ、川間の兄ちゃん何をやるんだ!?」
「少しの辛抱だぞ、わしらや愛弥様のためにも」
和俊さんは両手で上空に大量の墨を発射してから腕を大きく広げ、飛び上がった墨達で大型バリアを作り上げた。この大型バリアのおかげで、俺達5人は製作者の和俊さんに護られた状態となる。
たしかに、和俊さんは虹髑髏に危害を加えないとは言ったが、俺達を援護しないとまでは言ってないからな。和俊さんがここまでするということは、ハンドレッド・スティーリアは大きな被害を及ぼす技なのか?
「こっちは問題ない愛弥隊長、存分にやってくれ!」
「ここぞというときの和俊殿の援護、非常に助かります。和俊殿のみならず、インク・リフレクトの中でわたくしのことを見守っている毅さん達も対象です」
刀梟隊が誇る頼れる守備要因の援護もあり、これで攻撃準備は全て整った。もしも和俊さんがいなければ、愛弥はハンドレッド・スティーリアを使うのか戸惑っていたに違いない。
それにしたってさすが刀梟隊隊長の一言だな、こんな大事な場面なのに俺に対しても敬意を示している。俺に変わって愛弥が
「では、わたくしのハンドレッド・スティーリアで氷の怒気を受けてみなさい!」
愛弥は右手を広げながら激昂し、ハンドレッド・スティーリアの核となる100本の氷柱達が奴らに向けて一斉に発射する。1本の時点だけですごいものに、これが100倍の数で襲ってくるのだから逃げ道なんてない。
ただ、ここにきて1つ残念な点がある。インク・リフレクトの中にいるためか、ハンドレッド・スティーリアの視界がうまいように見ることができない。これに関してはバリアを張ってくれた和俊さんに感謝しきれないから、反論したらここで大問題だ。
「うわぁぁぁぁぁ!」
「ひぇぇぇぇぇぇ!」
「びぃぃぃぃぃぃ!」
とりあえず、奴らの叫び声だけ確認できるだけましか。刀梟隊隊長の逆鱗に振れたふざけた態度、とくと味わいな。
音だけでなんとなくわかるような気がするな、これも愛弥の気持ちの表れというものかな。あまりに激しい騒音で氷柱達は次々と粉々に破片していき、周りからは猛吹雪が降るかのような感じがな。
一方の俺達はインク・リフレクトで防がれてるため、危害を全く受けていない。本当に和俊さん様様だな、視界が見れないことに脳内で不服たれて申し訳ない。
「奴らが氷柱達の被害にあったのは事実だが、肝心の愛弥はどうなった? Blue-MODEの時間が過ぎたぞ?」
「心配しすぎだぞ令、愛弥が柔だと思うか?」
「うるさい毅、まさか愛弥も飲み込まれたんじゃ……」
こんなときに年上の毅のことをうるさいと言ってしまったが、今はそんなこと関係ない。なんとかインク・リフレクト内で時計は見れるが、肝心のBlue-MODEの制限時間となる100秒が過ぎてしまっていた。
嘘だろ……愛弥はまさかBlue-MODEの究極技ハンドレッド・スティーリアを制御できずに自滅したのか? それでも、俺は二木愛弥隊長の無事を誰よりも信じている──
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