8-22話 砂嵐を喰う闇 ※たかこ視点
──この中でダントツ最年少の天須さんが窮地を救うなんて、私達お姉さん達もまだまだのようね。
ナンバーワンだかオンリーワンだかなんだかしらないし、私からすればセンスのある技名なんてどうでもいい。ただ、技名に反して愛宕の工作員4人は一斉に砂嵐を操り、私達を砂嵐の中に閉じ込めさせる。
今まであいつらのことは正直舐めていたけど、愛宕と同じ『STYLE-R』の一部を使えたことで少しはやるじゃんと見直したわ。それなのに、結局のところはまた逃げたせいで、戦う気のない弱虫であることに変わりはないわ。
「次見つけたらきついお仕置きをするのは確実、その前にこの砂嵐をどうにかしないと」
それよりも問題なのは、駐車場の近くで砂嵐に巻き込まれてることよ。視界が見えなくなったのは今日で2回目になるけど、さっきと比べて威力は増してるわ。
「私に任せてください柳先生、私の『力』であの人達が逃げて巻いた砂嵐を消滅させます!」
「その前に天須さん、近くに姉さんやりりっちがいること。そして駐車している車が何台も停めてあることを忘れないで」
「この2点に関しては問題ありません……それに、梨理亜さんと芳江さんの気はかなり強いものですので、2人がどの辺にいるのかは把握しています」
天須さんが絶対の自信を持っているのなら、今回も期待してもよさそうね。今までのピンチも全て自ら解決してきたわけだし、天須さんもあいつらのことが許せない気持ちが伝わっているわ。
「柳先生、くれぐれもここから動かないでください。やぁっ!」
天須さんは合図代わりに言葉を発し、数秒経つと上空から
「思った以上にこの砂嵐を耐えられますが、これは賭けに出ましょう……
闇の球体だけでなく闇の渦まで使っている……つまり、砂嵐の中で天須さん本人も近くで上空にある闇の球体と同じように回転しているということ?
すると、上空にある闇の球体がひたすら回転し続けながら横に広がりながら拡大していく。それだけでない、あいつらが放った砂嵐が闇の球体の中に飲み込まれていく。
「すごい、闇の球体にこんな吸収能力があったなんて」
「お褒めいただきありがとうございます。そろそろ払うときでしょう……はぁあああっ!」
全ての砂嵐を飲み込んだ天須さんの闇の球体は、まるでバレーボールをトスするかのように叩きつけながら上空へと飛ばせる。
「天須さんの潜在能力……私からしたら計り知れないわ」
いくら球技が苦手な天須さんでも、闇を操ることに関しては別物ね。飛ばした闇の球体もそのまま消滅し、強大だった砂嵐はまるで粉雪の如く下に降り続いたままなくなっていくわ。
「上空から砂……これは何が起こったのかしら、無事ですかたかこ先輩?」
「私は無事よ、やったのは私じゃないけどね」
「そうよたかこ、菜瑠美ちゃんに感謝しなさい」
砂嵐に巻き込まれていたりりっちや芳江姉さんも、何事もなくこっちに向かって来るわ。というより、天須さんがいなければ砂嵐の中で苦しめられて私達自体の任務はそこで失敗だったわけだしね。
「本当にありがとう天須さん、あなたのおかげで私達お姉さんトリオは助かったのよ」
「これは私達の任務の途中ですので、最後まで遂行することは当然のことです。ですが、そんな暇はありません……私は疲労をこらえて、あの人達を追うことと桜井さんと再び合流しなければいけません」
砂嵐は天須さんのおかげでかき消すことはできたが、言葉通りこれでまだ終わってはいない。問題なのは、逃げ回ったあいつらの行方とRARUと戦っている桜井さんの心配だわ。
ためらっていないで、ここからすぐ離れないといけないわね。天須さんの体力も心配だけど、彼女が大丈夫と言ってるからそのまま行った方がよさそうね。
「柳先生……少し宜しいですか?」
再出発する前に、天須さんが私に話しかけてくる。休みたいというなら先に言ってほしいけど、そんな感じではなさそうね。
「詳しくは言うことはできませんが……私が闇の渦で砂嵐を消滅しているあいだに、初めてつかさと会ったときのことを思い出しました。今ここにつかさはいませんが、頭の中ではつかさのことを考えて闇を放ちました」
「影地くんと? いったいどういうことなの天須さん?」
たしか影地くんって、入学式のときに忘れ物をしに遅刻寸前だったはずよ。今の天須さんの発言からして、入学式前に影地くんと天須さんは会っていたことになるよね? やっぱり影地くんと天須さんって……。
ま、天須さんは学校の人気者でもあるし、疲労もあるからここで聞くのはやめときましょう。この任務が終わったあと、脅迫する形であの入学式前のことを影地くんに聞いてみようかしらね。
「3人共あれを見てください、あいつらよ!?」
「え、あれは愛宕の車!?」
影地くんと天須さんの本当の関係を頭の中で考えていた中で、りりっちは11時の方向を見て1台の大きな爆音がする赤色のオープンカーと運転に目をつけた。あの車の形は間違いない、愛宕の車だわ!
視力のよいりりっちの目による情報だけど、助手席と後列席にもしっかり工作員4人全員座ってる。あいつら、砂嵐を撒いた隙に愛宕の車に乗り込んだわけね。
「とにかく愛宕達を追うわ……ん、これは手紙……?」
私達も駐車場から出ようとするなか、1通の置き手紙がこっそり地べたに落ちていた。あいつらが砂嵐を出す前にこんなものなかったし、もしも私達が脱出できた際に用意してたということ?
「今すぐ読むわ……な、『目障りなたかこのババアへ』ですって?」
間違いない、この手紙は愛宕が書いたものだわ。本当愛宕ったらまだ子供みたいな部分があるわね、こんなもの書いて私の怒りを最大限にさせるつもりかしら──
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文字数の関係により、女性視点は次回まで続きます。令視点に戻るのは24話からです。
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