8-13話 女達のプライド ※たかこ視点

 ──さすがだわ、だけあってしつこさもかなりものね。


 2019年6月8日12時40分

 影地くんと小金くんが炎の能力者・加藤炎児と遭遇している最中、もう1つの勢力も目的地へと踏み入れる。


「木更津に着きましたねたかこ先輩」


 サービスエリアで昼食を取った関係もあってか、私達女性陣は少し男性陣よりも遅れて木更津に到着したわ。車を格安の駐車場に停めて、影地くんと小金くんが今いる金田さざなみ公園へと向かう。


「目的地に着いただけだからまだスタートにしかすぎないわ、ここからが本当の任務よ。いいわねみんな!」


 今の私はりりっちの協力者の立場ではあるけど、りりっちの大学の先輩でもある私が女性陣の場を仕切らないとね。ついでに、『わだつみ』の《姉貴分》としても。


「あらら、ここは思ったより静かな場所ね。海の方を眺めたいわ」

「ちょっと姉さん……観光しに来たんじゃないのよ。自ら木更津に行くと名乗り出たのだから、任務で来たことを頭にいれてよね」


 この中で1番気を抜いてたのは芳江姉さんだった、ひょっとしたら観光目当てもあるわね。自ら任務に志願したのもAYBSの元メンバーのよしみでなく、海を眺めたいのが目的なのかしら。

 しかし、芳江姉さんは今でも私や耕ちゃんにとっては叶わない存在。今の私達にとってはと呼んでもよく、戦闘要員としてはとても頼りになると思っている。


「わかりました……柳先生や元町さんの足を引っ張らないように頑張ります」


 合同任務が始まるというのに、少し不安そうな顔をしてるわね天須さん。あなたの持つ『闇の力』は誰もが認める強さと恐ろしさを持ってるけど、いつも以上に覇気が感じられない。

 まるで、がこの場にいないかのように。それがもしも影地くんだったら、プライド的に少し許せない気でいるけどね。


「たかこ先輩、候補に入れていたアウトレットパークに車を停めなくて正解でしたね。七色の一角・朱のレイラと虹髑髏の要注意人物2人・RARUと坪本迅馬を、アウトレットパークの喫煙所で見たと毅から通知が来ていたし」

愛宕レイラ……あなたも木更津に来ていたのね」


 ほんと、影地くんと小金くんは私達が来るまでにいい収穫をしたわね。もしアウトレットパークに車を停めていたら、そこで戦闘になって無関係の人を巻き込るから任務どころではなくなるしね。

 私からしたら今日こそ愛宕を捕えたいけど、やるんだったら静かな場所がいいしね。あいつとの因縁にケリをつけるため、影地くんや天須さんが知らない中で激しい特訓を今日までしてきたのよ。


「くそっ、志野田RARUの野郎……あいつ高1のくせに喫煙もしてんのかよ? 言い方悪くなるけど、


 桜井さんもRARUが木更津にいることと未成年喫煙をしていることを知って、怒りを見せているわね。先月のソードツインズの一件もあったし、特訓中も『奴だけは倒す』と気合い入ってたし。

 彼女も『わだつみ』に加入してから日は浅いけど、特訓するのを好んで素手だけなら私に匹敵する強さを手に入れているしね。


「皆さん……静かにしてください」

「どうしたの天須さん?」


 金田さざなみ公園まで歩いてる途中、天須さんが地面を見ながら立ち止まっていた。なにやら、危機感を漂う声で言ったけど何かを感じたのかしら?


「やっぱり……私達のことを追ってきたようですね。やっ!」


 すると、天須さんは後ろを振り向き、誰かが現れたと感じて闇のダーク球体スフィアを投げつけてきた。いきなり攻撃を仕掛けるのは天須さんらしくないけど、敵対する相手の気配をいち早く察するのはさすがの一言だわ。


「ふっふっふ……俺達の気を感じたとは、さすがは天須菜瑠美だな」

「あなた達のことは……木更津に到着してからとっくにわかっていました。しつこい人は……嫌いです」


 あらら、誰と思えば愛宕のかわいい第1部隊の工作員達じゃないの。しかも、以前遭遇した時と比べて1人増えて4人で5人いる私達相手に襲いかかろうとしたのね。


「くそっ、本当ならこの前と同じ場所で襲撃しようと思ったが、レイラ様の指示に従ったせいでこんなことに」

「懲りないわねあんた達も、わざわざあいつ《愛宕》の命令でこの私達を木更津まで尾行してきたなんて」

「あらあらあなた達でしたのね。うちがお寺で家事している間、かわいい妹や息子達を痛みつけたのは。今会ったからには、ただじゃおきませんね」


 どうやら、私達が大和田親子の寺から出た時からずっと追跡していたらしいわね。この前の手口同様、両手にはプラモデルのマシンガンを装備してるけど、こんなの怖くも全くないわ。

 それに今日は芳江姉さんもいることだし、今から姉妹でおしおきしてまた愛宕にベソかかせてあげようじゃない。


「ふざけるな兎共。レイラ様とジャイス様の2大七色の命令により、今日こそお前らをここで始末してやる」

「おいおい、俺達が兎だったらお前らはかぁ?」

「なっ、調子乗るなよ『わだつみ』新入り。RARUからお前だけは命を奪っていいと言ってたし、ここで始末するか」


 桜井さんったら、随分ユニークな例えをするわね。私達がかわいい兎なら、あんたら工作員は愛宕しか頼ることができないでしょうね。ただ、真っ先に命を狙われそうだけど、その時は私が守るから安心して。

 また愛宕がここに来るかもしれないし、さくっと倒して早く影地くん達のいる金田さざなみ公園へと行きましょうかね。


「柳先生気を付けてください……この人達以前と戦った時と比べて格段と雰囲気が違います、同じ感覚で戦うと危険です」

「そうかしら……私から見たら何の変化も見られないけど」


 見ただけでは何も変化ないように見える、あいつらヘルメットで素顔を隠してるからわからないのが現状だけどね。

 天須さんが言うのであれば少し警戒する必要ありそうね。といっても、注目したいのは新たに加わった愛宕の配下ね。あいつだけは、体格が3人と比べて遥かに大きい。


「俺達は前回の失敗以降、血に滲む修行をして戻ってきたんだ。今回の任務では最近頭角を現したテツオもいるからな、今日こそレイラ様に貢献して見せる」

「けけけ、お前達覚悟しな。このテツオがじっくり料理してやる」

「なによ、料理するのはあんた達よ!」

「私は……この人を懲らしめて……はやくつかさに会いたいです……」


 いくら新勢力が来ようと、私達は愛宕の部下なで苦戦するわけにはいかないわ。ここにいる女達は、あんた達の女親玉愛宕よりも強い5ということをね──



──────────


 次回もまたたかこ視点です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る