8-12話 アングリー・チェイン
──これが最初で最後にしたくない、俺にとってはこのトリオはかなり息か合っている。
毅の魂のこもったスターダスト・アーチで、令和の切り裂きジャックと謳う男・坪本迅馬との競り合いに勝利する。ビッグマウスが先行していた毅が、俺と同等クラスの能力者であることを実感した瞬間でもあった。
「お前らなら坪本をノックアウトできる、続いてくれ」
「わかってるさ毅」
流れは完全にこちら側な状況だし、さっさと坪本を拘束して加藤との戦いの続きをしたい。でも今は協力な仲間だ、互いの気持ちを1つにしないと連携なんて無理だ。
「こんな奴らにくたばってたまるかよ! 俺様はこんなものじゃねーぞ!」
「何言ってるんだお前? 完全に不利な立場だぞ」
ただ、坪本の血の気は最骨頂に達しており、悪あがきをしてきそうだ。俺達3人は坪本を許しちゃいないし、もう2度と人を切り刻めないようなメンタルにしてやる。
「本当に騒がしい奴だ。久しぶりに俺の奥の手を、お前のようなカマキリ小悪党に使うとはな」
大きく左手を広げた加藤から、激しく燃え上がる紅き鎖鎌を出してきた。この鎖鎌、坪本を焼却せよと言ってるかのように熱く燃え上がっているし、今までの戦いでも数多くの猛者を葬ったように見える……まさに、見ただけでも奥の手に相応しい武器だ。
「お前は別の意味で俺を熱くさせた。覚悟はできてるか坪本とやら?」
「ふざけるなこのホームレス炎野郎! てめぇは元から熱いだろうが!?」
坪本のような犯罪組織に属する奴なんかに、ホームレスなどと言われる筋合いなんてないんだよ。坪本だって虹髑髏に雇われる前はまともな仕事なんてしてないだろ。
「俺をホームレスと呼ぶ奴はここで燃やし尽くす! アングリー・チェイン!」
加藤は左右に体を動きながら、右手で鎖鎌を坪本に縛りかけようとする。これで坪本の動きを封じてから灼熱地獄にする気なのか?
「ふん、そんなもの……な?」
「お前の動きは読み取ったぞ」
獲物は逃がさないと言わんばかりに、加藤の鎖鎌は坪本をうまく目掛けて縛ることに成功する。相手を捕らえるコントロールはかなりのものと俺は見た。
「ちくしょう! こんな鎖鎌でなんかでくたばるわけにはいかねぇぞ俺様は……熱っ!」
「この鎖鎌で熱くなってもらうぞ」
アングリー・チェインの名に恥じないように、怒った加藤の鎖鎌が強く燃え上がって坪本に凄まじいダメージを受けていた。
「なめるなー! てめぇごときが1人で何をしてでも俺様は……」
「そいつはどうかな? さっきまでずっと孤独だった俺には心強い協力者が今はいるんでね」
加藤は今、心強い協力者と言った。利害が一致して少しだけ『『力』』を貸すだけでなく、俺と毅のことを認めてくれたのか?
すると、加藤のアングリー・チェインによって坪本は上空へと放り込ませた。これは、俺にとどめを与えろという合図なのか? それならばやるしかない。
「今だ令とやら!」
「わかった加藤さん、おいしい場面を俺がいただくとは思ってなかったぜ」
坪本が浮いてる間に俺は締めの一撃を仕掛ける。悪いが坪本、これは加藤との戦いの最中に邪魔をしたお前が悪いんだぜ!
「こんなチャンスを野放しにするわけにはいかないぜ!
上空に放りだされている坪本を狙いに定めて、俺は両足を揃えて雷光幻影で坪本にとどめを刺す。今の坪本はアングリー・チェインで縛られてるため身動きはとれないし、毅と加藤に続くという頭しか俺にはなかった。
加藤との戦闘を邪魔した分の怒りをこめて、このイカれたカマキリをここで叩き潰す。そして、木更津にいる虹髑髏達をここまで引っ張りだしてやる。
「がばっ、バカなぁあ! この七色に匹敵する俺様がこんなガキ共に負けるなんてよ!」
「どうだ、俺の光は!」
締めとなり雷光幻影を坪本に命中させ、そのまま鎖鎌をほどかしてから地面に落とす。言っておくがよ、加藤との戦いの途中で勝手に乱入したお前が悪いんだよ坪本。
「これがお前の強さか令、カマキリ相手にしては上出来だ」
ついさっきまではライバル視していた毅も、俺の技のキレを見て少し感心しているな。両足を綺麗に揃えただけではない、光輝く見せることも意識したから俺としても結果オーライだ。
「はぁはぁ……予想以上に出来る奴らじゃねぇか。ますます殺しがいがあるってものよ」
3人分の必殺技を受けたというのに、まだ懲りずに俺達に刃向かおうとするのかよ。この腐った根性はもっと叩き潰したいが、これだと殺してしまうな。
「ふん、お前も十分犬じゃねーか坪本! 弱い犬ほどよく吠えるってか」
「言いたいことだけはそれだけか坪本とやら? 本当ならお前をここで焼却したい気分だが、命は見逃してやる」
ついさっきまではまだ敵同士だったのに、加藤との連携技で坪本を痛い目にやったのはかなりの評価点だ。
坪本は自称令和の切り裂きジャックと自称していながらその程度のものかよ、口先だげのかませ犬じゃないか。ま、俺からすれば実力的に期待はずれだったと思っていいだろう。
毅もさっきは弱い犬ほどよく吠えると言ってたし、これは明らかな事実だ。笑い方も下品だし、もう2度と関わりたくないな。
「げへへてめぇら……この俺様がただ単に1人でここに来たと思うなよ……こっちにも作戦というものがあるんだぜ」
「へっ、ボロボロな奴が何言ってるんだ?」
たしかに、坪本単体だけ見ればたいしたことないが、レイラやRARUといった虹髑髏の連中がまだ木更津でうろついている。減らず口を聞く前に、口を聞けない程度まで懲らしめるべきだったかもな。
「よくも言ってくれたなわんころ! いいことを教えてやろう、レイラの部下共が今日の朝からずっとてめぇらを尾行していることをな!」
「な!?」
おいおい、それって大和田さんの実家の近くで待機し続けていたのかよ。今回はないだろうと思ってひと安心してたが、とんだ油断だった。
レイラ率いる第1部隊の奴らは以前も大和田さんの家の通路でやりたい放題していたし、懲りずに俺達を襲うなんてマジでいい度胸してるじゃねーか。
「そういやてめぇらの仲間のアマ共も別行動で木更津まで向かっていたなぁ、そのせいでRARUの奴も本来の作戦から変更になったんだっけ? 今頃はレイラ達が痛みつけてるかもしれねぇぜきゃははは!」
「なんて卑怯者だお前らは!」
「お前と構ってる間に菜瑠美が……」
くそっ、坪本の奴とんでもないこと言いやがった。こんな奴に構っていたら菜瑠美達はレイラに……今すぐ菜瑠美達と合流しなくては。
「君達の仲間がピンチなのはわかったが、こいつを野放しにしたら駄目だ」
「とりあえず、このバカをまた縛ってくれよ加藤」
だが、坪本をこのまま放置しては駄目だろう。せっかく戦闘不能にさせたわけだし、加藤の鎖鎌で再び坪本を縛ろうとする。ま、こいつはしばらく捕虜としても使えそうだし、話せるくらいはしといた方がよさそうだな。
「おしゃべりはそのへんにしたらどうだつぼもとじんまよ」
しかし、縛ろうとする間に坪本の後ろから黒い影が突然現れ、坪本を庇う体勢でいた。あの登場の仕方とその姿……間違いない。
「ふっ、今更来ましたかジャイスさんよぉ」
「ジャイス……」
菜瑠美達がレイラに襲われるとわかったなかで、第5部隊長のジャイスが現れやがって。相変わらず不気味な奴だし、今日こそマスクを剥がしてやる。
ジャイスは七色の一員としだけでなく、ソードツインズ絡みもある。とにかく許せない気持ちでいた。
「つぼもとじんまにあっとうするとはな……さすがはそしきぜんたいがめをつけたのうりょくしゃ・かとうえんじだ。ほかにも、かげちつかさとかたなふくろうたいのにんげんもやりおる」
「おっと、どうやらお頭が来たようだ」
「虹髑髏の大物のお出ましってわけか、刀梟隊としてお前を拘束する」
坪本はそこまで大したことないし体力も限界に等しいから良いとして、ジャイスは未だ謎の点が多い人物だ。数はまだ俺達が多いとしても、不安要素もある。
「ジャイスなんかに構ってる間に、
今日の任務……予想以上にハードとなってしまったな、ここで七色の2人目の刑務所行きという追加任務が。ジャイスを捕まえた後、俺は菜瑠美達と合流する──
──────────
次回はたかこ視点です、女性陣が木更津に着いて何が起きたのかを描きます。
たかこVSレイラ、桜井VSRARUの因縁の対決もあり、菜瑠美もしっかり活躍します。
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