7-15話 穹のジャイス

 ──俺に変装したRARUだけでなく、不気味なやべー奴も出てきたな。


 虹髑髏に洗脳された藤野は、牛島を連れて東船橋から逃げようとする。俺はソードツインズを逃さないために抵抗を仕掛けるが、新たな刺客が放つ見えない衝撃波によって阻まれてしまう。


「私のプランは大成功……うふふ」


 桜井さんに扮してソードツインズの脱出に協力したのは、同い年の女・RARUであった。RARUは昨日の夜、津田沼で俺に変装して藤野を虹髑髏の工作員にさせた恐ろしい女だ。

 おかげで、頭が鈍感な牛島はRARUの仕業でありながら、藤野を拉致したのは俺だと勝手に決めつけた。そして、牛島の心を弄び凶悪な殺人マシンへと変貌させた張本人だ。

 

「それよりも桜井さんはどうした? お前らまた桜井さんに変装しやがって」

「今回はあいつに手を出しちゃいないね、ついでにあなたの友達2人もね。私達の作戦でただ変装しただけだから、そのことだけは安心しな」

「安心ですって? 私の友達に化けて騙すなんて、あなたは絶対に許しません!」


 虹髑髏なんかに安心という言葉を信じるかよ、カズキと塚田にも手を出したらタダじゃ済まさないぞ。

 菜瑠美もRARUに怒りの姿勢を見せているな。桜井さんと仲良くなる前は7組内で誰も話していなかったし、何より桜井さんのことを友達だと菜瑠美は今口にしたからな。


「牛島をあんな目にしやがって、ここでお前を倒すぞRARU!」

「その許さないって顔いいねー令くん」


 人の心を弄ぶことが大好きなRARUの態度を見て、

 牛島との戦いで疲れは出ているが、最後のあがきをRARUにぶつけてやる。きっと正気の藤野もそう思ってるに違いない。


「駄目ですつかさ……少し落ち着いてください!」

「女相手でもお前はとっととシャインだ死ねよ!」


 菜瑠美がいくら落ち着けと言われても、俺の気持ちが全く納まらねぇ。ここでRARUに光の制裁を与えた後に捕らえる、それしか今は考えなかった。


「うぉぉぉお! 雷光幻影をくらえ!」


 RARUはまた衝撃波を撃とうとするかもしれないが、そんなことは気にせず攻める。俺はRARUに向かって雷光ライトニング幻影ファントムを使い、その腐った心を消してやる。


「いきなり突っ込んできたね、令くんったらお・ば・か・さ・ん」


 しかし、RARUは俺の素早い動きに翻弄されながらも、またもや不敵な笑いを俺にとり始めた。この悪意に満ちた自信はどこからでるんだよ?


「まず今が私1人だけでいると思ったでしょ?」

「なんだと!?」


 雷光幻影でRARUの顔に当たる寸前、彼女の前には身長175cmはする全身水色のフードをまとい、骸骨の仮面を被った人物が突如現れた。

 仮面の人物は、両手の手のひらを前方へかざしながら、四角形の盾のようなものを繰り出してRARUを防ごうとする。


「こんなわざ、われのたてでラルをまもる」

「なっ、誰だお前は?」


 時間を掛けて特訓して手に入れた雷光幻影がこんなに防がれてしまうなんて、俺としても屈辱的だな。仮面の人物も雷光幻影が何もなかったような雰囲気を漂いながら、じっくりと俺の方へと見ているな。

 こいつか? 牛島が言っていた怪しいフード野郎は? そこには菜瑠美がいるし、一体何者なんだ?


「へへーん、今いるのは私だけだと思った? こっちには代表がいるのだから」


 こんなときに限ってRARU以外にもう1人、虹髑髏の刺客が現れやがったか。代表と言っているし、RARUより立場は上か?

 ま、こっちには菜瑠美もいるし、疲れてはいるがこれで2対2の戦いにはなる。不利な状態ではあるが、戦うことになればやるしかない。


「おはつにめにかかるな、かげちつかさとあますなるみよ」

「アナーロよりかは遥かにましですが、この人もとても怪しいです」


 それにしても何だよこいつ……まるでロボットのような喋りをするな、声も変声器がかかっているから性別すらわからない。


「悪いけど代表には逆らったらその時点で『力』を戴くよ令くん」

「あまりちょうしにのらないほうがいいぞラル、われらはいまたたかうのがもくてきではないのだからな。そもそも、ソードツインズがそろってにじどくろにわたっただけでもおおきなしゅうかくだ」


 この2人は殺すのが目的ではなく、俺の『光の力』と菜瑠美の『闇の力』を奪うことが狙いか。ありがたいことに、俺と菜瑠美も今は戦うという気分じゃないんでね。


「ここまできたのだからなをなのるか。われのなまえはそらのジャイス、にじどくろのかんぶグループ・なないろのひとりにしてだいごぶいちょうだ」


 そらのジャイス……俺達が遭遇する4人目の七色か。性別不詳だし、七色は見た目も性格も癖の強い奴ばっかりだな。

 ジャイスの見た目だけはとんだおかしい奴ではあるが、ただ者ではない雰囲気が出ているのはわかる。RARUの前に使った盾以外にも、どんな技や能力を秘めてるか気になるな。


「きみたちとはまたいずれたたかうことになるだろう、ではここからたいきゃくするぞラル」

「ええ代表……影地令くん、今日は見逃すけど今度あなたと会った時はもっと私の衝撃波を撃たせてあ・げ・る」

「待てお前ら!」


 ジャイスとRARUは煙幕を使い、ジャイスはRARUのマントを被せたと同時にジャイス自身もこの公園から姿を消した。

 誰かが入るかもしれない公園に煙を吹き散らしやがって、どこいったんだ奴らは。そう遠くにはいってないはずだが、俺はある悔しさにより公園に留まった。


「くそっくそっ、RARUとジャイスのせいでソードツインズは虹髑髏の手先に」

「つかさ……まずは落ち着きましょう。RARUを許せないのは私も同意ですが、一度学校に戻ってからでも遅くはないです」

「こんな時に落ち着いてられるかよ! あの女、次会った時は容赦しないぞ!」


 とても頭にくるな……俺は全くの無実なのに、牛島はRARUに全く気付くことなく殺人に手を染めたんだよ。

 拉致されたと思い込んだ藤野がおかしいことをわかっていながらも、俺と菜瑠美の言うことを無視して藤野に従った。犯罪者になったからって、そのまま悪の道に進んでいいという話ではないぞ。


「ソードツインズとの因縁はまだ続くが、今度は第5部隊が相手か」


 虹髑髏によって洗脳されたソードツインズ……RARU……穹のジャイス……『わだつみ』の前にはまた新たなる敵が現れた。


「穹のジャイス……次見つけたらそのふざけたマスクを剥がしてやる」


 ジャイスも今まで遭遇してきた七色と同じく、。そして、不気味な骸骨マスクの下も剥がさないとな。


「つかさ……虹髑髏は本気で私とあなたの抹殺と『力』を奪おうとしています」

「わかってるさ、俺はRARUやジャイスなんかに『力』を取られたりはしない」


 2週間前に『わだつみ』がアナーロの拘束及び第4部隊を壊滅しただけあって、奴らは本格的に『わだつみ』を始末しようとしている。

 そのためには、『わだつみ』のがあるな──

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