7-14話 RARU

 ──操られたソードツインズの裏を操っていた人物がいたとは……しかも、正体も驚いた。


 俺と菜瑠美の前に突然現れた藤野はなんと、虹髑髏に洗脳されて奴らの手先となっていた。昨日の菜瑠美と戦った後の面影が全くなく、俺と菜瑠美に敵意を持っている。

 藤野がこの場にいるのに関わらず、拉致犯だと未だ決めつける牛島も今は喜んでる場面ではなかった。それでも、盟友の藤野を信頼しているために虹髑髏に付いていくことを決意した。


「お前ら逃がしてたまるかよ!」


 藤野の竜巻によって、ソードツインズは公園から離れようとする。奴らを逃がさないために、俺は2人揃って意地の抵抗を仕掛けた。

 俺と菜瑠美なら、きっと藤野の洗脳を解くことができる。その思いを秘めて雷光ライトニング幻影ファントムをぶつける。


「そうはさせないよ影地令」


 逃げるソードツインズに雷光幻影を仕掛ける前に、1人のやや高めな女の声が公園の中から聞こえてきた。ここには俺と菜瑠美とソードツインズしかいないはずなのに、また虹髑髏の新手が来ると言うのか。

 

「誰だ? うっ……なんだこの痛みは?」

「私もです……とても苦しい……私とつかさに何かが当たったような感じがします」


 女の声が聞こえた途端、俺と菜瑠美に何かの衝撃波を撃たれたような痛みを感じてしまう。そのまま俺と菜瑠美は、地べたに膝をつけながら倒れこもうとする。

 くそっ、こんな時に限って俺は満足に動けない上、ソードツインズに逃げられてしまうのかよ。


「いずれまた会うことになるだろう影地令、天須菜瑠美……

「状況はまだ理解してないが、今度会った時は藤野と協力しててめぇらを絶対に殺す!」


 謎の衝撃波に苦しめられてしまい、邪魔物がいなくなったソードツインズは藤野の竜巻によって行方をくらましてしまう。

 なんだよなんだよ、全くわけがわからねぇ! 藤野も虹髑髏に操られているし、牛島は洗脳もなしで俺を怨まれてるしよ。さらに、豊四季の時みたいに突然の痛みがまた俺に襲ってくるしよ……。


「ソードツインズとの因縁はまだ続きそうだな」


 藤野が生存しているのは嬉しく思ったが、こんな再会は待ち望んでもなかった。牛島も騙されているとは全く思わず、藤野を信頼して本物の悪に染まるんだな。

 今度ソードツインズと会うときは海神中央高校の生徒ではなく、虹髑髏の工作員になってからか。奴らに対抗する特訓は継続することになるが、更なる励みが必要となりそうだ。


「つかさ……私達の前に誰か来ます」

「おそらく、さっきの声の主か」


 俺と菜瑠美が倒れてる間に、微かな足跡が公園内に聞こえてくる。おそらく、衝撃波を放った女の声だろう。


「ふっ……悪いな影地と天須、ソードツインズは我らがもらうよ」

「君は桜井さん?」


 しかし、そこに不敵な笑いを取りながら現れたのは桜井さんだった。いやいや、桜井さんはさっきカズキや塚田と共にここから撤退したはずだろ?


「桜井さん……君も昔からソードツインズと仲がいいことはわかっていたが、よりによって君も虹髑髏に協力する必要はないだろ?」

「やっぱり俺はソードツインズが大好きなんでねー、


 桜井さんも虹髑髏の仲間……いや、それだけは絶対にあり得ない。彼女は2週間前のアナーロによる襲撃事件で麻衣によって監禁及び変装されていたし、今は虹髑髏に敵意を持っているはずだ。


「……」


 桜井さんが実は裏切り者である事実を知った俺だが、そんな中で菜瑠美は考え事をしていた。おいおい、友人が裏切り者であったのに驚きもしないのかよ。

 すると、菜瑠美は桜井さんに向けて指をさしてくる。これはまた説得のお時間かと思ったら、桜井さんの異変を察していた。


「いいえつかさ……この人は桜井さんではありません。さっき一人称をと言ってましたが、こういう時の桜井さんは普段ならと言うはずです。それと、本物の桜井さんより身長が少し小さいです」

「なっ、こんな時に冗談かい天須?」


 そこにいるのが桜井さんじゃない? 菜瑠美はいくらなんでも鋭いな、これが事実だったら俺はあっけなく騙される所だったぜ。

 気の毒だな桜井さんも……虹髑髏に2度も変装されるなんてな。今回は桜井さんいないけど、当の本人が見てたらまた怒りの頂点だろう。


「冗談……私は本気ですよ誰かさん。私の友人を変装したなんて、あなたを許しません」


 菜瑠美は右手で闇の球体を大きく出しながら、怒りをあらわにした。7組で最も話す友人を騙していたためか、桜井さんの分まで込めているな。


「あなたもまた虹髑髏の新手なのですか? 本当の顔を見せてください!」

「ちっ、私のプランが台無しだねこれは……ふんっ!」


 偽物の桜井さんは上空に高く跳び移り、ポケットに隠していたマントに隠れながら早急に着替えと化粧を済ましていた。


「本当はなんてしたくなかったが、菜瑠美さんにバレたら仕方ないね」


 桜井さんに扮した女は紫色のセーラー服を着て両耳にピアスを付けている、つまりこいつは高校生か?

 それと、桜井さんのことが大嫌い……? こいつも桜井さんやソードツインズと同じ真久間中の出身者か? 


「誰だお前は? 見るからに未成年のようだな」

「ふっ、私もあなた達と同じ高校1年生……驚いたかしら? どうやら、あなた達に自己紹介する必要があるわね。私は虹髑髏第5部隊の工作員・志野田來璃、組織内ではRARUと言われているわ。ちなみに、津田沼で令くんに変装していたのはこのわ・た・し!」


 変装の達人のRARUは俺達と同級生でありながら、虹髑髏の工作員なのかよ。豊四季もそうだったが、虹髑髏は学生でさえも歓迎する組織なのか?

 それよりも、俺に変装してたというのが気にくわないな。怒りが沸いたぜ!


「にしたって牛島くんはバカだったねぇ。私が令くんに変装していたことを知らないまま、洗脳とか一切ない状態で令くんにあんな殺意が沸いたなんて想定外だったわ。おかげで、牛島くんをより強化してにしたいねぇ。あっはっはっ」

「ふざけるなRARU! お前俺を騙して牛島を弄ぶとかいい神経してるじゃねぇか!」


 この女の真実を聞いたら、牛島もなんで自分が騙されたことを気付かなかったんだよ。RARUの仕業だったとはいえ、あいつの殺人は取り返しがつかないぞ。


「昨日は偶然を装ってあなた達のチームへとスカウトしようとした藤野くんを拉致及び洗脳させて、我が組織にのは大きな収穫だわ」


 藤野も本当だったら今日は『わだつみ』の参加には承認してたいたし、ここでRARUも倒していたかもしれない。ちくしょう、完全にRARUの計画通りだ。


「虹髑髏……こんなところにも関わっていたとはな」


 レイラやアナーロの部下の姉妹もそうだったが、虹髑髏に所属している女は嗜虐的どんな汚い手段を使っても問題ない奴らばっかだな。

 RARUのせいで、俺を拉致犯だと思い込ませた牛島を殺人マシンへと変貌させた……気分はものすごくシャイン死ねだな──

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