第七章 復讐のサンダーバッファロー

7-1話 サンダー・ジャッジメント ※牛島視点

 ──俺は好きで人殺しをしたいわけじゃない、藤野を殺そうとする影地令がただただ許せねぇだけだ。


 あれこれ15年来のである藤野健が2人組によって拉致された、犯人の1人はあの憎き海神中央高校の英雄野郎・影地令だった。

 俺はたしかに目撃者ではあるが、証拠が見ただけあって学校や警察の奴らには信じられそうにない。こういうときにスマホの写真を撮っておけばよかったぜ。


「俺には藤野がいない生活など考えられない……大切な相棒を失った、その憎しみを奴にぶつける」


 何故影地令が藤野を拉致した理由は俺にはわからん。もしかしたら藤野は今頃奴に殺され、その翌日は平気な顔をして奴は学校に来るはずだ。

 そんな犯罪者が海神中央高校にいるなんて物騒すぎる、俺は明日どうやって奴を接触しようか考えていた。 


「おい、そこのあんた。ちょっと助けてくれ」

「あん?」

「お願いだ若者……俺は今サツに追われているんだよ」


 気分が最悪だというのに、服がボロボロな見た目30代の髭男が俺に話しかけてきた。こんな時に訪ねやがって、余計目障りだ。

 しかも、こいつ見るからに脱獄囚じゃねーかよ。たしか昨日、千葉市にある刑務所から脱獄したニュースがあったな。


「仕方ないな、脱獄囚」

「え? 助けてくれるのか?」


 助ける? それは違うな。ここでクズみたいな奴を助けたら俺も同罪だ、罪を犯すならこの世から消した方が尚更でしかない。


「てめぇ追われるのが嫌なんだよな? だったら、俺に殺されて人生終わらせた方が楽な気になるんじゃねーのか?」

「は? 誰もそんなこと言ってないだろ!」


 悪人を許さないこの俺に助けを求めてくるなんてえらい度胸してるぜ! ちょうどいい、影地令を殺す前に生きる価値すらないこの犯罪者をまずは仕留めるか。

 藤野だったらそのまま殺さずこいつをまた刑務所送りするはずだが、今の俺は違う。脱獄囚はすぐさま逃げようとするが、この牙がほっとくわけにはいかなくてな!


「ひぃぃぃいいい! 助けてくれー!!」

「逃がしはしねぇぜ、ボルト・ファング!」


 今のボルト・ファングの威力はこの前の強盗の時とは一味違うぜ、影地令に対する憎しみも込めてるからよ。

 まずはこいつに自分の犯した罪を俺の雷で償わせてやる、そして地獄でじっくり後悔するんだな。


「がっ……こんな子供なんかに……」


 脱獄囚はもろにボルト・ファングをくらったな、ざまあないぜ。せっかくだし、奴の倒れている表情でも拝んでやるか。


「はぁはぁ……俺はこいつの命を取ったのか? なんか爽快だぜ!」


 今まで藤野と共に悪人を捕まえることばかりはしてきたが、殺人は今までなかった。おそらく、この脱獄囚が弱かったからか、もしくは俺が強くなりすぎただけなのか。


「これで俺も人間を殺したってわけか! あははははは!」


 俺のやっていることに後戻りはできないことはわかっている、とりあえずこいつの遺体をそこにあるゴミ置き場にある袋に隠しておくか。


「このまま路上に放置するのはまずいし……あぁ!」

「このクソガキが! どこを見てるんだ?」


 脱獄囚の遺体を整理している途中、70代程の老人が俺にぶつかってきた。見た目からわかる通りにただの酔っ払いじゃねーか、酒ってものは恐ろしい飲み物だぜ。


「おいてめぇ、誰がクソガキだって!?」

「お前だよお前、最近のクソガキは生意気な奴……お前死体に何やってるんだ? 警察に通報するぞ!」


 本当に調子こいたクソジジイだ、俺に向けてタバコをポイ捨てしてきやがった。俺の勘によると、このクソジジイは昔前科かありそうな顔をしているな。

 それに、俺が今やっていたことをしっかり見てきやがったな。ちょうどいい、今日2人目の俺からの犠牲者が出るとは夢のようだ。


「おいクソジジイ! てめぇもこいつと同じ目に遇いたいか! あぁっ!?」


 俺は隣にある脱獄囚の遺体の指をさしながら、老人を殺すことに決めた。俺は今まで使いたくてたまらなかった大技を出してやる、もう俺からは逃げられないぜ。


「これであの世へ行くんだなクソジジイ、サンダー・ジャッジメント!」

「ぐはぁぁああ!」


 まさに、狂人へと遂げた俺はクソジジイの肩を掴み、そのまま俺の持つ雷をそのまま流し続けた。

 正直な話、殺人は藤野が望むことではないのはわかってる、


「どうだ!? 文句を言ってなければまだ命はあったんだぜ? もう死んだか……つまんねぇな」


 このうざってぇクソジジイを感電即死させたか、まあいい。警察が来る前にさっきの脱獄囚の遺体もまとめて、今度こそ2人の遺体をゴミ置き場に放置しておくか。


「やりすぎた感もするかもしれんが、これで影地令も殺せる勢いはついた!」


 今日で俺は2、もう今の俺には誰も止められねぇぜ! 俺を捕まえようとするクズ共は、雷の異能で皆殺しにしてやる。

 言っておくが、俺が悪いわけではない。俺を変えさせたのは藤野を拉致した影地令、てめぇが悪いんだぜ!


「俺もここから離れよう……あいにく、影地令を殺す前に逮捕されたくないからな」


 仕方ない、両親には俺が殺人犯になったことを隠しながら、一旦家に帰るか。これも、扱い上行方不明になる藤野のためにやっているつもりなんでね。


「これで俺の準備は満タンだ! 影地令も地獄に送ってやるぜ!」


 今の俺は仲間がいないも同然だが、それで全く構わない。明日の放課後、両親には学校を行ったフリをしておいて俺は奴を襲う。首を洗って覚悟しな、影地令!──



──────────



 牛島くんが人間凶器になってしまいました。

 次回からはまた令視点に戻ります。ソードツインズの事情を知らない令はどうなるのか?

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