6-6話 連携技を作ろう
──ソードツインズの絆に対抗するには、菜瑠美との連携が必要なのかもしれない。
菜瑠美の家の近くにある幕張海浜公園で特訓を始めようとした俺は、ソードツインズの怪しい私生活を見かけた。俺と菜瑠美が目にしたのは、強盗を自らの異能を使って捕まえたのだった。
どうやら、桜井さんの言っていたことは本当のようだ。高校生活を過ごしている裏で、悪党を捕まえて賞金稼ぎをした挙げ句、悪人に対しても容赦ない態度を取ることを。
「それだけでない、『わだつみ』以外に能力者が海神中央高校にいたことを」
牛島が雷の能力者であると判明し、藤野もまた何かの異能を所持していることは間違いない。最初は塚田同様にただの喧嘩屋だと思ったら、大きな間違いだった。
ソードツインズを『わだつみ』に迎えたら、一気に戦局は変わる。俺と菜瑠美はそう確信した。
「あいつらもいなくなったし、今後こそ特訓するか」
「そうですね……ソードツインズを仲間に入れるためには、私とあなたが彼らと同等の強さを持っていないと興味が沸かないでしょう」
ソードツインズは始末した強盗を連れて警察署に行ったし、しばらくはここに来ないだろう。これで、ようやく特訓に集中できるな。
「あいつらを説得して『わだつみ』に入れさせるには、俺か菜瑠美しかいない」
上の立場であることを利用して、柳先生や大和田さんに頼み込んでソードツインズをスカウトするのは何かが違う。むしろ、あいつらは上下関係とは無縁そうだし。
また、ソードツインズと面識のある桜井さんや塚田は『わだつみ』のメンバーでもないし、能力者であることは知らないはずだ。
となれば、ソードツインズの『わだつみ』入りを提案した俺か、それに同意した菜瑠美のどちらかしかいないよな。
◇◆◇
「とにかく、技を磨かないと駄目だな」
予定時間から1時間近く遅れて、俺と菜瑠美は特訓を始めた。今の俺は技のキレを取り戻すために、既存技の強化を中心に行う。
特に
「そうだ菜瑠美、いいことを思い付いた!」
「どうしたのかしら……つかさ?」
菜瑠美も技を磨いている最中、俺は打倒ソードツインズに備えて打開策を閃いた。2人揃って俺と菜瑠美を襲って来た場合、これさえ持ってれば対抗できることに感じた。
「きっと、ソードツインズは互いの息があった連携技を持っていそうなんだ。俺達も連携技が欲しくないか?」
「連携技……良いですねそれ。つかさが発したのだなら、いい案はあるのですか」
「ああ、任せとけ」
任せとけと言ってしまったが、ただの思い付きなことを菜瑠美には言えるはずがない。
そもそも、ソードツインズを見てぱっと閃いたものであり、この提案が素直に菜瑠美が了承するとは思わなかった。
今から新技を考えるよりも、既存の技同士でも十分できるはずだ。俺だって、菜瑠美の技くらいは把握している。
「いいか、君の
「あなたの雷光十字で……わかりました、動作でやってみます」
今は相手が存在しないため、イメージトレーニング程度しかできない。だが、飛び道具もできる万能技な闇の球体で相手を油断させて一気に俺の雷光十字でとどめを刺すことだ。
雷光十字も輝きを増すよう努力してるし、射程が伸びれば数人を一気に片付けることができる。
「なかなか合わせるのが難しいですね……」
「いきなりできるなんて、天才でも無理だ」
まずはタイミングが重要となるが、俺と菜瑠美の心は一心同体だと思ってる。むしろ、そうでないと無理に等しい。
ま、1日だけで上手くできるとは思えないし、頭脳明晰の菜瑠美も苦戦中だ。明日も菜瑠美と練習だな。
「もっと特訓して上手くいけば、相手が何人来ようがになっても負ける気はしない。そうだろ菜瑠美?」
「はい……私はあなたと共に戦う人間てもあります」
光と闇の連携(タイトル仮)か……お互いに対となる『力』同士であるのに、こんな連携技が生まれてしまうのは恋人関係だからこそできることだな。
ソードツインズと遭遇した時間もあってか、日も暮れてしまったな。それでも、今日は収穫を多く手に入れたから満足はしておこう。
◇◆◇
菜瑠美との特訓を終えて、俺は菜瑠美の家に到着した。今は部屋の中でくつろぎ中ではあるが、肝心の菜瑠美は制服に再び着替えていた。
「そういえば、菜瑠美は中間試験はどうだったんだ?」
「私にとっては易しい問題でした……」
「は? 簡単?」
よくそんなこと言えるな菜瑠美の奴……俺なんて、最後の数学は空欄を埋めたくないために適当に書いたほど難しく感じたぞ。
菜瑠美が易しい問題と言ってる以上、総合1位は確実そうだな。他に対抗馬なんて藤野しかいなさそうだし。
その上、闇の天罰は試験期間中に生み出した技だろ? 勉強する間によくそんな時間あったもんだな、やっぱり菜瑠美は天才かよ?
「菜瑠美、今日は考え事をしたいから隣の部屋で寝ていいか?」
「わかりました、その前につかさ……良いですか」
数日間の勉強疲れもあったし、今日は隣の部屋で考え事をしたい気分だ。ただ、恋人のしたがっていることは俺も受け入れるしかないと思い、菜瑠美との距離を縮めようとする。
「ちゅっ……くちゅくちゅ……」
「んんん……んむ……」
お互い気持ちは同じなのだから、今回は同時に唇を振れた。もう慣れちゃったな、菜瑠美とのキスで唇に咬まされることが。
「ちゅ……ちゅっ……ではおやすみなさい……つかさ」
「ああ、また明日な」
今回も軽めのキスで済ませたが、眠気が飛んでしまったかもしれないな。菜瑠美とのおやすみなさいのキスを済ませた後、俺は隣の部屋へ移動した。
「菜瑠美との結束力だけなら誰にも負けない」
まだ見ぬ藤野の異能はどれ程なのか? 戦うことを好む牛島に対し、悪人を裁くこと以外は手出しをしない印象があるんだよな。
ソードツインズの固い絆は計りしれないものだが、俺と菜瑠美の愛の絆がそれ以上であることを証明して見せたい──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます