6-4話 悪い噂と試験前夜
──試験勉強というもう1つの戦いまで、刻々と迫ってきた。
塚田からソードツインズの有力情報を聞いた俺は、午前中の不満な気持ちが解消した。あいつ、1年生の問題児の癖して俺には役立つことを言いやがって。
「ソードツインズの考え事をしながら、起用の授業が終わった……」
放課後、俺はカズキと川間さんと共に帰宅している最中だった。今日はカズキも川間さんも予定が入っているので、勉強会は来週中必ず行うことを公約した。俺も今日は1人で行いたかったし、割と好都合かもしれない。
「どうしたんだ令? 君はなんか、1限目前と比べて気分が大分違うな」
「なんか、塚田のおかげで色々やる気が戻ってきたんだよ」
「塚田くんはまたキミに迷惑掛けたんじゃないの? 話によると、勝手に教室入ってきたんてましょ」
2人はその時教室にいなかったから、バカ鮫と俺のやり取りは知らないもんな。でも、俺からしたら塚田がいいことを言ったのは事実だ。
「おい、急に止まるなよ令!」
「いや大丈夫だ……これは?」
校舎から出ようとした時、2つの強い気が近くに感じたため俺は右手で頭を抱えた。カズキに心配されるもの、大したことではないことを告げる。
「影地令……」
「藤野……牛島……」
そこには、ソードツインズの2人が立ち塞がっており、帰宅する俺達に姿を見せた。こいつら、もしかして俺を待ち伏せするために待機していたのか?
「おっと影地令、ここで会ったからには……」
「無駄口を叩くな牛島! ここでも戦う場面じゃない。俺はただ、影地令の様子を少しでも伺うために待機しただけだ。お前は単に付いてきただけだろ」
「ったく、藤野は冷静すぎて頭が上がらないぜ」
「藤野……お前?」
様子を伺う……どういうことだ? 冷静な藤野は俺を見ただけでも何かがわかるとでもいうのかよ。牛島は相変わらず俺と戦おうとしており、また藤野に止まられている。
これで、俺はソードツインズと戦うことが避けられないことが確定となった瞬間だった。もし、菜瑠美や塚田までここにいたら、2日連続で校内の騒ぎ事まで発展してそうだ。
今はソードツインズを無視して下校ルート以外にないだろう。ま、カズキや川間さんまで巻き込むようなことはしたくないし。
「おいおい令、塚田に続いてあの2人にも目を付けられたのかよ……気の毒だね」
「ワタシ達の中学の間でも、藤野くんと牛島くんの噂は広まってたね。彼らが海神高に入るから、ここに行きたくないという生徒もいた程よ」
ソードツインズが入るという理由だけで、海神中央高校に行きたくない生徒までいたのかよ。それだけソードツインズの悪い噂が千葉県内に広まってたことか。
そりゃ裏で賞金稼ぎをする連中だし、ただ強いだけでなく悪評も流れるのも自然の流れとしか言いようがない。
◆◇
「じゃあな令、来週は宜しくな」
「あの2人には気を付けてね、影地くん」
カズキや川間さんと別れ、俺は家に戻って1人でとことん勉強することを決めた。ソードツインズの新たな噂を聞いただけで、なんかぞくぞくとしてきたな。
「それだけではないんだよな」
ソードツインズだけにはとどまらない、今後現れる虹髑髏の新たな刺客……新技の取得……中間試験……そして、菜瑠美との恋の関係。こんなに迷うことが今の俺にあるのか、これも思春期なのか。
「ん……そこにいるのは菜瑠美か」
家に帰る途中、タクシー乗り場に待機している菜瑠美を見かけた。正直、ここで声を掛けるべきか迷うな。
「あっ、つかさ……」
菜瑠美は俺に気付き、タクシー乗り場から離れて俺の方へと向かってきた。おいおい、俺は帰宅途中だぞ。まさか、偶然を装って今日は一泊しようと思ってないよな。
「菜瑠美……こんな時に俺の家に行きたいとか言うなよ」
「いいえ、私はあなたの顔をじっくり拝みたかっただけです」
「なんだそれ?」
それだけの理由だけで、わざわざここへ来たのか。ま、急に泊まりたいと言わなかっただけで助かったぜ。
「ではつかさ……短かったですが、また来週」
「ああ、またじっくり会えるのは中間試験後だな」
菜瑠美は俺の顔を見て嬉しく感じてから、タクシーへと乗った。もしかすると、俺の顔を見ただけでも幸せなのかもしれない。
「さてと、今度こそ勉強に集中するぞ」
菜瑠美と別れて今の俺は色々考えてる最中でもあったから、今日はもう家に帰ろう。ひょっとしたら、ソードツインズの片方が単独で攻めてくるかもしれかもしれないし。
◇◆
2019年5月14日22時20分
明日で高校初の中間試験を迎える、俺は最後の総仕上げをしていた。たしかに、不安な点もあるが、それでもやるべきことはやってきた。
襲撃事件の日に約束していたカズキや川間さんとの勉強会も、昨日と一昨日とで俺なりの指導で教えた。俺の指導力が正しかったら、恐らく川間さんも赤点を取ることはないだろう。
「今回は藤野を意識すべきだな」
菜瑠美はもちろんだが、藤野にも目を離す訳にはいかない。学年1のイケメンで頭脳も菜瑠美に匹敵する相手に、俺も頭脳に食らいつければいいと思った。
「中間試験の目的は、俺流の文武両道であることを証明することだ」
光の能力者としてはまだまだかもしれないが、俺はいずれ最強の光を手に入れる男だ。『わだつみ』の現メンバーは全員学校の関係者だし教員すらいるから、成績が悪かったら脱退なんてあり得る話だ。
俺だって成績優秀で頭がいいと言われるようにはなりたいさ。学年成績1位候補の菜瑠美の恋人なのだから、自分なりに立証しなくては──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます