5-7話 アナーロ暴走 ※菜瑠美視点
──戦いたいのに……今の私は無力に等しい存在。
虹髑髏第4部隊による海神中央高校1年7組襲来、私にとっては想像もしない事態です。私としても、クラスメイトの桜井さんが麻衣の変装であることを、早く見抜くべきでした。
隊長のアナーロが教室に入った瞬間、稲毛で初めて会った時の悪夢が再び甦ってしまいました。女好きのアナーロは挨拶代わりなのか、いきなり私の胸を触り出してきました。
「これ以上……私に近寄らないでアナーロ……きゃっ」
「うふふ、相変わらず良い胸してるわね菜瑠美たん、生で制服姿を見たけどすごくお似合いじゃないの。脚もすばらしいねぇ」
「やめて……ああっ」
アナーロは何度も私の胸と脚を強く触ってきた後に、今度は私が付けているネクタイを強く掴んできました。クラスメイトが釘付けで見ているというのに、何故そんなことが平気でできるか理解できません。
「アナーロ……ここは学校ですよ? 場所くらいはわきまえたらどうですか?」
「あら怒った顔しないのよ菜瑠美たん、今日こそ一緒に遊びましょ」
「離しなさい……この愚か者……」
アナーロは私の顔を見つめてばかりで、私の言うことなんて全く聞いていません。
本当なら、未衣と麻衣もまとめて強くなった私の『闇の力』をアナーロにぶつけたいのですが……ここは教室の中です。
教室自体が狭いというのもありますが、今は運河先生やクラスメイト達も見ています。私がここで戦うという選択肢は封じられました。
「それと……桜井さんはどうしたのですか?」
「桜井? ああ、あの俺女か?」
「私が変装した女は校内のどっかに閉じこもってオネンネしてるさ」
「命に関わることはしてないから安心しな」
「いやっ」
本物の桜井さんはどうやら無事のようですが、それでも私の胸を触り続けるアナーロはなんて人なの……私が反抗できないことをいい気になりすぎですね。
「おいお前、天須に何しやがるんだ! 桜井にも危害を与えやがって」
「そうだそうだ、きもいんだよこのキモ眼鏡」
「クラスのみんな……でもあなた達には……」
私が嫌がらせされているのを見てられない7組のクラスメイト達が、ついに動きました。馬込さんを中心となり、一斉にアナーロへ反逆しようとします。
「いくぞみんな、変態を倒しに菜瑠美ちゃんを救うんだ!」
「なによあんた達は? 菜瑠美たんとの遊びを邪魔するなら容赦しないよ!」
いくらクラスが一丸となってアナーロに立ち向かっても、あなた達は能力者ではないですし、アナーロはあくまでも七色の1人です。
私を助けるという気持ちだけでありがたいですが、アナーロはあなた達より断然強い。今は逃げてほしい。
「菜瑠美ちゃんを離せよこの変態!」
「うるさい蝿共め、私のソーン・ブレイクを受けない」
アナーロの薔薇から強烈な
ただの飾りだと思っていた薔薇にこんな技まで所持していたなんて……ソーン・ブレイクを使用中なのに、アナーロの片手は未だ私を掴んだ状態です。
「ぐっ……そんな」
「ははは、私と菜瑠美たんの邪魔をするからだ」
「くそっ……天須が……」
「お主……なんてことを」
「そんな、いゃああああ」
アナーロはソーン・ブレイクで次々と馬込さんらクラスメイトを倒し、私は悲鳴をあげました。そんな……私のためにこんな目に遇うなんて許せない。
「ちょっとアナ……んん!」
「大きな声を出しちゃダメよ菜瑠美たん、これで静かにしてなさい」
「んん……んんんん!」
私はアナーロに抵抗できずに、口をガムテープで貼られてしまいました。それだけではありません、両腕と胸を縄で縛られて今度こそ身動きすらできません。
そんな……今の私はアナーロにすら抵抗できないなんて。
「あら菜瑠美たん……泣くのはまだ早いわよ」
「んんん……んん」
私はあまりのアナーロの卑劣さから、涙を流してしまいました。なんて最悪な男なの……クラスメイト数名を怪我まで追わせるなんて。
「せい!」
「おっとあんた、私に竹刀を向けてくるなんていい度胸してるわね」
アナーロの動向に見ていられなかった運河先生が、剣道部員に変装していた麻衣が所持していた竹刀を取り、アナーロに竹刀を振り回しました。
「お主、私のクラスの教室を勝手にした挙げ句、うちの生徒達に手を出さないでもらえないかな? 私は昔剣道の県大会で優勝した実績がある、お主のような学校を荒らす……そして1年7組は私が守る」
「ほう……生徒である菜瑠美たんを守る、泣けるねぇ」
「んんん……んんん」
運河先生逃げて……先生の剣道の実力があっても、アナーロは何か卑劣なことをしてきます。アナーロに反抗したら、命すら危ういです。
「老害が、私の邪魔をするならこうよ! ヘビー・ローズ!」
アナーロの持つ薔薇から、粉のようなものを運河先生を中心に、私とアナーロと未衣麻衣姉妹以外に吹き散らしました。一体あの粉にはどのような効果があるのでしょうか。
「こんな粉、なんとも……う、動けんぞ」
「この粉を受けた相手は、しばらく自身の体重+150kgの重さが追加されるわ」
ヘビー・ローズと呼ばれる粉は、相手の動きを封じされる効果を持っていました。これは、つかさがもし相手でも危険な粉であることは間違いないでしょう。
「あいにく私は老害をいたぶる趣味はないんで、このままにしておくから私に感謝しな」
「この悪党が……許さんぞ」
「あんた達はしばらくオネンネよ!」
いくら危害を与えなかったとはいえ、運河先生までもアナーロの餌食にされるなんて……このままでは7組は崩壊します、そして私自身も……。
「これで邪魔物はきえたようね、アナーロさま」
「さてと、私は菜瑠美たんと屋上に向かうから、未衣と麻衣はここで見張ってなさい。もしかしたら、影地令くんや海の一族の一味がここに来るかもしれないからね」
「承知しました、アナーロさま」
「1年7組の教室は我々姉妹に任せてください」
「んん……んんん……」
未衣と麻衣はアナーロに一礼をしてから、私は縄で縛られたまま屋上へ連れていかされました。おまけに、アナーロに無理矢理お姫様だっこされるという状況です。つかさ以外の人間にお姫様だっこされるなんて……考えもしなかったです。
「ぴゅぴゅぴゅー、菜瑠美たん」
「んんん……」
口笛まで吹き出したアナーロにとっては最高の気分ですか、私にとっては最悪な気分です。いち早くアナーロから離れたい……。
「さあ菜瑠美たん、早いようだけど私との結婚式をあげようか」
「んん……んん……んんん!」
結婚式ですって……冗談を言うのが下手ですね。私はアナーロが大嫌いです、勝手なことを言うのをやめてもらいたいです。それに、将来一緒にいたい相手が私には既に存在します。
私は今、アナーロに対する憎悪しかありません。ですが、私の中に眠る本当の『闇の力』が隠れていたことは、アナーロに拘束されてる間は思ってもいませんでした──
──────────
えっと、菜瑠美大ピンチです。
次回は執筆していく度にお気に入りになったたかこ視点です。たかこと耕士郎側で今回の事件の動機について描きます。
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