5-4話 新たなる恋敵?
──いい恋人関係を保つには、隠すことが重要となる。
2019年5月7日8時10分
平成と令和を跨いだ10連休のゴールデンウィークが終わり、高校生活が再開した。令和になっても、授業は普通に受けてテストは安定した成績を残したいと思っている。
「令和になってから大きく変わったものがある、恋人の存在だ」
今俺が1番気をつけないといけないのは、菜瑠美との関係だ。通学前に菜瑠美と連絡を取り合い、校内にいる時は菜瑠美との接触を避けるよう意識するようにしている。
今だって俺は1人で通学している。菜瑠美は今日もタクシー通学だと思うし、菜瑠美を狙う男子達が声を掛けようとしそうだしな。
菜瑠美だけでなく、柳先生や大和田といった『わだつみ』のメンバー以外にも、カズキや川間さんらクラスメイトとも久々に会える。高校生活は充実しとかないとね。
◇◆◇
「あなた! ここの規則ではペンダントの持ち込み禁止だと、何度言ったらわかるのよ!」
「ちっ、相変わらずうるせぇなこのババア」
「何よババアって、先生に向かってその態度はいけないわ! しばらく没収!」
校門を潜ったら、柳先生と塚田が揉めあっていた。塚田は相変わらずバカな奴だな、校門に入った時点でペンダントなんて外しとけよ。挙げ句の果てには柳先生に没収されてやがる。
俺が今ポケットに閉まってあるペンダントだって、菜瑠美から託された大切なものだ。首にかけたくなる気持ちはあるが、没収が怖くて我慢してるぞ。
「おい影地!」
「なんだよ塚田?」
突然、塚田が俺に話しかけてきた。極めて目立つ十字架のペンダントをつけて登校しようとした上に、柳先生にバレて没収されたお前が悪いんだよ。
「教員に歯向かった時点でお前が悪い、ったく俺と菜瑠美に頭を下げて改心したんじゃないのか?」
「うるせぇな、俺はただあのクソババアが気に入らないだけだ! 一発ぶん殴りたいぜ」
「な?」
「どうしたんだ影地、いきなり静かにしやがって」
塚田はバカだから、柳先生を殴りたいと思うのはなんとなくわかるけれど、俺は5日前に手合わせとはいえ柳先生を本気で殴ったのと同時に全力で戦い抜いた。
俺の頭の中で、あの時の感触が蘇ってしまう。さすがに、今ここで殴れば即退学だ。
「あくまでも学校にいる時は上の立場だ」
柳先生とは同じ『わだつみ』として共に虹髑髏を潰す目的でいる。俺は生徒という立場であることを、ここではわきまえないと。
「ったく、お前はあのクソババアの生徒だから気の毒だぜ。ん? あそこにいるのは菜瑠美ちゃん?」
塚田と話してる間に、後ろから菜瑠美が登校してきた。しかも、10人以上の男子生徒からの周りに囲まれた状態だ。
「菜瑠美ちゃん好きです! 僕と付き合ってください!」
「お前には無理だよ、この筋肉の俺ならどうだ」
「ごめんなさい……あなた達には興味がありません……」
「げー、そんなー」
相変わらず菜瑠美の人気はすごいな。学校の間が空いてたということもあり、余計菜瑠美を見たがりたいのだろうな。
菜瑠美に告白する男子達は後を経たないが、全く無理なことだよ。既に菜瑠美には、俺という恋人がいるのだからな。
「お前らには無理だよ! なあ菜瑠美ちゃん」
「塚田さん……あなたはこの前私にしたこと忘れていませんか?」
ったく塚田も懲りない奴だな。自分が改心しても菜瑠美にとっての好感度は変わらないぞ。
「ははは、菜瑠美ちゃんは相変わらず美人だなー」
「カズキか、まあそうだな。あとカズキ、この靴履き心地良いぞ」
今度はカズキが俺に話しかけてきた。カズキも少し菜瑠美の方へ見てるけどな。
ついでにカズキの前で、貰った誕生日プレゼントの靴を見せつけた。本当こいつには感謝しかないな。
「嬉しいよその言葉。それにしても、相変わらず菜瑠美ちゃんの人気はすごいね。僕も告白に挑戦したいけどあっさり振られそうだから遠慮だな」
「そ、そうだな……菜瑠美はお姫様みたいなもんだし」
「あれー令、君は菜瑠美ちゃんを家に泊めてたよなー。君の方こそ告白するんじゃないのかー?」
「ば、バカ言うな」
残念だけど、平成の最終日に菜瑠美の方から告白されて既に付き合ってるんだよな。
カズキも菜瑠美に告白しようと企てはいたが、告白する男子達に瞬殺されたのを目の当たりにしたのを恐れて、勇気すらなくしていた。ま、俺からすればすごく好都合だけどな。
「おい、影地令!」
「ん?」
校舎に入る途中、菜瑠美の周りの中にいたやや小柄の野球部員が、俺の名前を指さししながら呼んできた。俺はこいつとは初対面のはずだ、何故俺のことを睨み付けてるんだ?
「なんだ? 俺はお前のことを知らんぞ」
「ふっ、1年7組の
菜瑠美のクラスメイトねぇ……1年7組の名簿一覧は菜瑠美の方から見たことはあるから、名前だけは聞いたことはあった。それにしても、変な野郎がまだこの学校の中にいるんだな。
豊四季のこともあるし、こいつも虹髑髏が海神中央高校に派遣したスパイなのではと疑いはじめた。菜瑠美のことに好意を持ってるみたいだし、要注意人物として見ておくか。
「令、馬込は他の生徒の噂でも悪評のある奴だぞ。女子相手にナンパをしまくっており、中学時代は万年野球部二軍だったから全くモテずに終わっていたからな」
相変わらずカズキの情報は助かるぜ。つまり、野球の実力もない癖にナンパばかりして女と仲良くしたいと思ってる奴のようだな。
「悪いが、お前には眼中にない」
「な、なんだと影地! 覚えとけよ」
更正前の塚田や豊四季の時で学んだんだ、変な同性の奴には関わらないことを。俺は今の人間関係のままで十分だ。
なんというか、校内では菜瑠美に近寄れそうになさそうだ。ここは、俺と菜瑠美が3年生になってから実は付き合ってましたというサプライズでも良さそうもな。
「今は菜瑠美よりも、授業に集中だ」
校内で菜瑠美と極力会わないようにすると誓った俺だが、2日後にとある事件が発生してその思惑が打ち砕いてしまう──
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