3-14話 朱のレイラ Part4
──あの右目は、想像以上に恐ろしい『力』を持っていた。
ついに、レイラを追い詰めた俺と菜瑠美。だが、レイラの眼帯に隠された右目に、最後の技が残されていた。
菜瑠美から、レイラの顔を見るなと言いだした。既に俺は、眼帯を取ったレイラの両目を見てしまった。
「ふふふっ、影地令は私の右目を見たようだねー。最後の技をおみまいするよ、サンド・ライト!」
レイラは右目に手を合わせ、目を開いた感じに砂嵐のようなものを降りだし、俺と菜瑠美に襲いかかってきた。
「なんだ、このえげつない技は」
「きゃっ! すごい……砂嵐」
「くそっ! 最後の最後で、こんなものなんかに」
「はははっ! これで、私に近づくことは不可能よ!」
サンド・ライトの降りは激しく、俺と菜瑠美は今、身動きがとれない状況だ。レイラに近づきたいのに、このままでは砂の餌食になってしまう。
「私は……こんな砂なんかに……うっ……」
「菜瑠美!」
「私は大丈夫……お願い、サンド・ライトを止めて……つかさ……」
菜瑠美は倒れ込んでしまう。菜瑠美の心配をする前に、まずはレイラのサンド・ライトを止めないと。
だが、サンド・ライトの影響を受けていたのは、俺と菜瑠美だけではなかった。
「お、俺は何で寝てたんだ? ん? この砂嵐はまさか……」
菜瑠美の闇の糸で寝ていたスグルも、サンド・ライトによって目を覚ましていた。
「スグル、あんたやっとお目覚めのようね」
「レイラ様! まさか、あの禁断の右目を解禁したのか!」
「そんなことよりスグル! 今すぐトラックに乗りなさい。今日は、離脱するわよ。ついでに、入口で寝ている2人も、連れて帰るのよ!」
「はいっ、レイラ様!」
俺がサンド・ライトで足止めされていて、菜瑠美が倒れ込んでいる間に、レイラとスグルが自身の乗って来た車で、ここから逃げようとしている。
「つかさ……レイラを逃がさないで……」
「そんなこと言ったって、砂嵐が強すぎる」
ダメだ。俺は、何度もレイラの攻撃を受けてるし、サンド・ライトが一向に収まりそうにない。
「ちくしょう! 逃がしてたまるか!」
奴らはさっきから散々、大和田さんの家の通路で暴れた上に、俺達4人を苦しめた。最後の意地を見せてから、撤退するのかよ。
レイラは、乗って来たオープンカーにエンジンを鳴らし、トラックを運転するスグルと共に出発しようとした。
「じゃあね、たかこババアの後輩共」
レイラの奴、逃げ出す前に眼帯を付け戻しながら、俺と菜瑠美に向かって投げキスをやりだし、入口の方へと抜けた。
「くそっ! 奴らめ、大和田さんの家の私有地でやりたい放題しやがって。
投げキスをした瞬間に、サンド・ライトが収まった。なんとか俺は立ったままでいられたか、もう限界だ。
「砂嵐がやんだか、でも奴らめ……次は逃がさない」
「うぅっ……うぅっ」
菜瑠美は、仰向けになって倒れていた。派手な格好をしているし、このままでは体調を崩してしまう。
「菜瑠美、立てるか?」
俺は、菜瑠美を立ち上がらせるように、手を差し出した。さすがに、手くらいは出せるだろう。
「つかさ……!」
「なっ!?」
菜瑠美は突然、両手で俺の体に飛びついた。俺を見て飛ぶあたり、大丈夫そうだな。
「菜瑠美……ちょっとやりすぎだ」
「ご、ごめんなさい」
運がいいのかわからんが、菜瑠美の巨乳が俺の顔に当たっていた。
菜瑠美は今、どんな格好しているのかわかってないのか? レオタードで胸元も開いているんだぞ。
「それにしても、レイラに……逃げらましたね」
「まさかレイラに、とんでもない隠し玉があったとはな。くそっ、眼帯をもっと警戒すべきだった」
レイラのサンド・ライトによって、あと一歩の所でレイラら第1部隊に逃げられてしまう。間違いなく、俺達は敗者の立場だ。
レイラ自体もかなりの強敵だった。強力な技を複数所持していたし、俺だけでなく、菜瑠美や柳先生に対しても優位な立場だった。
「今度レイラと遭遇した時は、私の闇の糸で縛りつけてみせます」
「そうだな。俺達は、また特訓しないといけないようだな」
俺と菜瑠美には、また新たな課題ができた。次レイラに逃げられないための策をとることだ。
そして、まだ見ぬ七色の5人に対抗できる強さを持つことだ。
虹髑髏は、何をやりだすか予測不能な連中だ。今日みたいに、俺達を尾行してきてから襲うから、今後の奴らの動向にも頭にいれないと。
◇◆◇
「お体は大丈夫ですか柳先生……無理は禁物ですよ」
「私なら大丈夫よ。それに、あなた達を船橋駅まで送りに行けるのは私しかいないでしょ」
俺と菜瑠美は、柳先生の車に乗っていた。レイラとの戦いの途中で負傷していたのに、今俺達を届けるのは柳先生しかできないしな。
レイラに痛みはまだ残ってるはずなのに、気を使ってくれるなんて、生徒想いな所もあるんだな。
「たかこおばさんはこう見えても、毎日体を鍛えてるからな」
「こう見えてもじゃないでしょ、またおばさんと言って」
大和田さんも俺達を心配してるからか、車に同行していた。ジョークをやり取りできるくらいだから、それなりに大丈夫だろう。
「柳先生、大和田さん、すいません。レイラを取り逃してしまいました」
「俺達に謝る必要はない、次はあいつを捕まえればいい」
「愛宕はいずれ、痛い目にあうわ。次こそ愛宕を懲らしめるのだから」
レイラを逃がしたことだけが、今日の俺の中で唯一不満点だった。次があると大和田さんが言っても、俺はどうしても今日レイラを捕まえたかった。
「君達は、厄介な連中に目を付けられてしまったな。こうなれば、俺もできる限り協力しよう」
「大和田さん、本当ですか?」
「なんか虹髑髏とかいう奴らが、すごく気に入らなくなってな。2人だけの『力』では太刀打ちできないだろうと思ってな」
「私も離職覚悟でいいから、影地くんと天須さんに協力するわ。私と耕ちゃんは、海の一族の看板を背負ってるし、奴らも私達のこと目を付けられていたしね。それに、愛宕をほっとけないわ」
「柳先生まで……」
海の一族2人が、俺と菜瑠美に協力してくれるのは非常にありがたい。虹髑髏にも対抗意識を持っているし、願ってもない助っ人だ。
「本来だったら今日に影地くんと天須さんと手合わせするつもりだったが、邪魔者が入ってできなかったのには俺としては残念だ」
「俺もですよ」
「では、令くんの名前にふさわしく、令和を迎えてからやろうか。日はまた改める」
「令和……? つまり、5月になってからですか?」
「そうだ。期間は空いてしまうが、その時は君達だけでなく、俺も今以上に強くなってやる」
令和になってからか……もう少し先の話にはなるが、その間大和田さんだけに限らず、俺と菜瑠美はもっと強くなっているはずだ。
例え協力者が何人でても、俺はどんな能力者よりも上に頂つこと。今はそれだけが望みなんだ──
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