3-13話 朱のレイラ Part3

 ──巨乳が武器でもある菜瑠美に、こんな格好してたら凶器に等しい。


 強力なレイラの技、ガイザー・ストーンを受けた俺は、絶体絶命に陥っていた。

 レイラの投げる扇子でとどめを刺されそうになった時に、菜瑠美が助太刀に入った。

 制服が濡れていた菜瑠美は、着替えてやって来たのだが、外へ出歩くにはかなり際どい服装をしていた。


「おい菜瑠美、何だよその派手な格好は?」

「私の……戦闘用の服です。今日、何かが起きることを予知して、鞄の中にこの服を用意しておきました」

「それにしたって、露出度高すぎだろ」


 戦闘用といっても、胸元が開いている青色と灰色を合わせたハイレグレオタードのような衣装だった。食い込みに関しても、かなりギリギリなラインだ。

 嘘だろ……巨乳である上に、胸元を揺らしながら戦うのかよ。下手したら、ポロリするんじゃないのか……俺は別な意味で心配した。

 レオタード以外にも、白色のニーソックスに青色の長い手袋、首飾りとして白色のフリルタイも付けてるな。手袋の上に紫色の指輪もしている。


「菜瑠美は胸が大きいし、こういう格好は似合ってると思う。だが、恥ずかしくないのか?」

「一応、つかさの前でなら……恥ずかしくはないです。でも……変な目で見ないでください」


 胸や股間の部分がすごすぎて、こんなの誰も変な目で見るわ。学校でそんな格好したら、男子生徒の失神者が続出するぞ。

 まあここにいるのは俺だけでなく、レイラや自身の糸で縛られて、今は寝ているスグルもいることを忘れるなよ。


「つかさ……あなたは少し休んでください、レイラは私が倒します」

「そうだな……頼んだぞ」


 菜瑠美は本当だったら、大和田さんと共に行動して避難するつもりだった。わざわざ着替えまでしてきたんだ。

 そもそも、こんな格好でまともに戦えるのか? 菜瑠美が動きやすいと思えばそれでいいか。


「胸も確かにやばい。しかし、後ろ姿も反則だろ……」


 菜瑠美の後ろ姿を見ている状況だが、お尻が丸見えじゃないか……しかも、どちらも胸や脚と同じくらい、綺麗な尻でTバックなせいで余計破壊力が高い。


「俺は今、菜瑠美が戦うところを見てることしかできない」


 なんか、主人公とヒロインの立場が逆転したみたいだな。菜瑠美はレイラの方へと向かい、戦う姿勢を見せた。


「ほぅ……天須菜瑠美まで来たか、都合いいねー。あんたをいち早く殺したかったんだ、わざわざ私に殺されに来たのかい」

「いいえ……あなたに、私を殺すことはできません。柳先生や大和田先輩、そしてつかさのためにも、私はあなたに負けない」

「よく言うねぇー。その上、私より随分と派手な格好しておいて、許さないよ!」

「別に……私を許さなくて構いません。私も……虹髑髏を許すつもりはないのですから」


 互いに性格は真逆なのに、女同士のプライドが既にぶつかっている。菜瑠美はよくこんな状況でも、よく冷静でいられるな。俺には到底無理だ。


「さっきのババア同様、私は女には負けないよ!」

「私も……少しは熱くなった方が、良さそうですね」


 既にレイラは、扇子を大量に落としている。もう所持してる扇子は少ないはずだ。


「天須菜瑠美には、この技で攻めるか」


 レイラは、扇子を上下に扇ぎはじめた。何度も扇ぎを繰り返していたら、隕石のようなものがレイラの扇子の上に飛び立っていた。

 レイラも、まだこんな技を持っていたとはな。


「これでもくらいな、ウインド・メテオ」

「菜瑠美、かわすんだ!」

「つかさに言われなくても、わかってます」


 ウインド・メテオは発射速度こそ遅いが、当たったらきつい一撃になりそうだ。

 菜瑠美は、右側にジャンプしながら移動し、レイラのウインド・メテオをかわしていた。


「無事か、菜瑠美?」

「はい……それにしてもこの格好、予想以上に動きやすい……」


 菜瑠美は決して機動力が高いわけではないが、あの格好はやっぱり菜瑠美にとっては動きやすいものなのか?

 ウインド・メテオをかわしたことに問題は全くない。だが、胸元が空いてるから乳揺れが半端ない。

 しまった。今は菜瑠美の胸と尻と股間ばかり見てる暇なんてない、戦ってる所を第一に見ないと。


「へぇー、私の技をかわすなんて」

「今度は、私から攻めますよ」


 菜瑠美は両手から闇の球体を出してきた。遠距離攻撃で攻める気か?


「ふっ、第6部隊の奴らがやられた技だね。こんな技、私には通用しないよ」


 レイラは闇の球体をわかっていた。闇の球体は隙の長い技であるために、すぐに扇子を地面に投げつけて、ガイザー・ストーンを仕掛けはじめた。


「そんな……既に私の闇の球体が、虹髑髏全体に知れ渡ってるなんて……」

「あんたもこの痛みを味わってやろう。ガイザー・ストーン!」


 まさか闇の球体が、レイラに対策済みだなんて驚いたぜ。菜瑠美はガイザー・ストーンを、俺の時と同じ体全体に受けてしまう。


「きゃあああ!」

「菜瑠美!」


 菜瑠美は両手で腹を抱えながら、倒れ込みそうになった。

 下半身を見たら、太ももに数ヵ所傷がついている上に、ニーソックスも破けている状態だった。


「では天須菜瑠美、あの世に行ってもらうよ!」

「うっ……ごめんなさい……つかさ……柳先生……大和田先輩……」


 これでは菜瑠美がやられてしまう。こうなったら、ここは俺が最後の力を振り絞るしかない。


「レイラぁ!」

「ふん、影地令。ズタズタな状況であるお前が、私に悪あがきするのかい」


 悪あがきだと思っても構わない。でも俺は、この前新技を編み出したんだ。ここで最後の賭けにでるしかない。


「何をする気なのかい、影地令。どの道、無意味なことなのは目にみえているけどね」

「菜瑠美のやられてる光景なんて見たくない、雷光回転ライトニングスピン!」


 体の痛みをこらえながらも、俺は最後の意地を見せて、雷光回転をレイラにぶつけた。

 これは俺だけの雷光回転ではない。菜瑠美と柳先生と大和田さんの4人分も込めて、力強く回転して蹴りあげた。

 

「げふっ、ば、馬鹿な」

「レイラ……これが俺達の結束力だ」


 賭けの一撃だった。初めて人前に使った雷光回転が、上手くレイラに命中した。

 雷光回転を受けたレイラは、痛みを感じて倒れ込んでいた。しかし俺ももう倒れ込むくらいに、限界に等しい。


「大丈夫、つかさ?」

「へへ、起死回生の一撃だった」


 見せ場は俺が取っちゃったな。菜瑠美は俺の元へ近づき、今の俺を心配した。


「ふふふ、まだ終わったと思うなよお前ら……」


 倒れ込だと思ったレイラは、不敵な笑いをとりながら立ち上がった。扇子も全て落としているし、もう奴に戦える気力なんて残ってないはずだ。


「まだやるのか、レイラ? 俺達の勝ちは決まったようなものだぞ」

「ふん、私にはまだこれがあるんだよ!」


 レイラにガイザー・ストーンを越える、隠し玉があるのか? だが、レイラの体力はもう尽きている。隠し玉に余程な自信があるのか。


「お前達にこれを見せるなんてねー。

「つかさ、レイラの顔を見てはいけません。レイラの付けてる眼帯に、何か仕掛けがあります」

「仕掛け?」


 菜瑠美はいち早く、レイラの行動を察していた。

 するとレイラは、右目に付いていった眼帯を取りはじめ、レイラは眼帯を俺達に投げつけた。


「覚悟しな! 影地令、天須菜瑠美。私の右目に、隠し玉を所持していることを」


 菜瑠美に忠告される前に、俺はレイラの顔を見てしまった。一体、レイラの右目に何を隠し持っているんだ?──

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