3-11話 朱のレイラ Part1
──相手が今、犯罪組織の幹部とはいえども、立場上は先輩だ。
俺達の前に現れた朱のレイラは、虹髑髏の幹部グループである七色の1人。そして、柳先生の元生徒であると同時に、海神中央高校の中退者であった。
「こんな形でたかこ先生と再会できた上に、ここで高校時代鬱陶しかったあんたを殺すことができるなんて、夢のようだねー」
かつての恩師であることを全く思わずに、高笑いをしながら柳先生を殺そうとするレイラ。一体、過去に柳先生と何があったのか?
「戦う前に一服させてくれよ」
何か余裕の表情を見せてるのか、レイラは煙草を吸い始めた。
「愛宕。あなた隠れて喫煙したのが私にばれて、退学になったんじゃないの?」
ここは大和田さんの私有地だぞ。こんな所で平気で煙草を吸うのかよ。
しかも、退学理由は喫煙か。これとばかりは完全にレイラが悪いな。
「そうだったわねー。もうその時から私は愛宕じゃなく、
「また平気な顔して、私の前で吸うの? それに、あなたはまだ19歳であるはずでしょ」
「ふん、未成年も糞もあるか。あっ、今あんたとは何も関係ない存在だったな」
恩師の前で、関係ないなんてよくいえるな。柳先生は、悪の道に進んだレイラを心配して言ってるんだぞ。
「おいお前!」
「ちょっと、耕ちゃん?」
「ここは俺の私有地だぞ。煙草吸うのやめろよ」
さすがの大和田さんも、レイラに怒りをぶつけた。あの大和田さんがお前呼ばわりするなんて、相当なものだぞ。
「あん。てめぇ私より年下じゃないか。お前呼ばわりするなんて生意気なガキだぜ」
「ではそう言うあなたこそ、
「ちっ。あんたもこのババアを殺した後に、共に行かせたいねぇ」
レイラは、柳先生と大和田さんの忠告を無視して、煙草を下にポイ捨てした。もうこれで、戦いはどちらかが倒れるまでになりせそうだ。
「つかさ……あの人、学校の先輩だと認めない」
「俺もだ菜瑠美。いくらなんでも、常識が欠けている」
俺と菜瑠美だって、レイラのような未成年喫煙する奴のことを、学校の先輩なんて思いたくもない。
でも今は、柳先生がやってくれるはずだ。俺からすれば、柳先生は厄介者かもしれないが、本当は生徒思いであることを。
「今、ここで仕留めるのはたかこのババアだ。だが、本来の標的である影地令と天須菜瑠美にも、見せつけてやろう。私の持つ、組織内の能力『
「ではあなたの組織が持つ能力の技量、見せてもらおうかしら」
先に柳先生の方から、攻撃を仕掛けようとする。工作員を倒したのは、何かの自信の現れかもしれないな。
「いくわよ、さっきあなたの配下2人を倒したこの技、ラフ・ウォーターで、あなたの心まで受けさせて改心させてもらうわ!」
柳先生は再び、工作員達を倒したラフ・ウォーターを出す構えに入っている。
「私の波で流すだけでなく、あなたの体ごと洗わせてもらうわ!」
柳先生の得意技、ラフ・ウォーターが、工作員に撃った時以上に威力が増し、波がレイラに向ける。
しかし、レイラは余裕の表情だ。レイラは、チャイナドレスに隠し持っていた扇子2枚を、両手に取り出した。
「私には、こんなことができるんだよババア!」
扇子を回し続けたレイラの前に、扇子から自然石が大量に積み上げ、壁のようなものが作り出していった。
レイラはこの壁で、ラフ・ウォーターを受け止めるつもりなのか。
「こんな壁、私の波にかかれば愛宕ごと流してやるわ」
「流す? この自然には、反射能力があってね」
レイラの言葉通り、ラフ・ウォーターはレイラが作り出した壁で、柳先生に向けて跳ね返した。
「嘘っ、私のラフ・ウォーターが……簡単に……」
お返しだと言わんばかりに、跳ね返ったラフ・ウォーターが、柳先生に命中してしまう。
「柳先生!」
「ババアの心配か、影地令?」
「どういうこと?」
「まさかあんた達、ただ見てるだけだと思ったら、大間違いだよ!」
ラフ・ウォーターは、確かに強力な技だった。だが、ラフ・ウォーターには余波があり、俺達3人にも向かってくる。
「きゃっ。せ、制服が……」
「くっ、まさかラフ・ウォーターを跳ね返しす奴がいたなんて、驚きだぜ。」
もっと警戒すべきだったな……後ろにいた俺達も、返されたラフ・ウォーターに当たってしまい、制服が濡れてしまった。
「ふふふっ、私の『STYLE-R』はこんなものじゃないよ。自然石を操れる以外にも、私が持つこの扇子にも隠れた『力』がある」
『STYLE-R』はまだ防御技しか見せていない。やはりハイトの
「ババアは今ずぶ濡れだし、この技で仕留めるか」
レイラは、持っていた扇子2枚を地面に叩きつけた。一体何が起きるだろうか?
すると、扇子が突然に岩の柱に変形し、柳先生に襲ってくる。
「はははっ! 私の最高の技、ガイザー・ストーンを避けることができるかな?」
ガイザー・ストーンは動きの速い技だ。このままだと、ラフ・ウォーターの跳ね返ったダメージが大きい柳先生は、本当に倒されてしまう。
「死ねー! たかこのババア!」
「くっ……ここまでね……」
本当はこんなことに手出しはしたくない……柳先生とレイラの因縁とはいえど、何故俺が今ここにいるのかわからない。
「令くん! 何をするんだ?」
「つかさ……あなたまさか柳先生を?」
俺は柳先生の所に行き、レイラが放ったガイザー・ストーンを阻止しようと考えた。
ここで柳先生に対して、俺の『光の力』を見せつける絶好な機会でもあるしな。
「この岩を砕けさせてもらうぜ!
柳先生がとどめを刺される前に、俺の雷光十字でレイラのガイザー・ストーンを打ち破ることに成功した。
「なんだと!? ちっ、影地令め!」
先週の特訓の成果が出たようだ。確かに砕けることが成功したが、レイラ渾身の技を止めたんだ。俺の手が痛いぜ。
「ここは下がってください! 柳先生」
「影地くん、どうして私を庇ったの?」
柳先生はもう限界だ。過去の因縁なんかよりも、柳先生の体の方が大事だ。
「これは私と愛宕の関係よ、私自身で因縁をつけると言ったよね?」
「柳先生の言う通り、俺はこの場で首を突っ込む立場ではありません。ですが、柳先生がここで死んだら、海神中央高校の校門を守ったり1年4組の担任をするのは、他に誰がするんですか?」
「!?」
最初は柳先生のことを、俺のことをよく注意する厄介者だと思っていた。
でも、やっぱり俺にとっての柳先生は、海神中央高校に必要な人間なんだよ。
「わかったわ、影地くん……ここは、あなたに託すわ」
「任せてください。後は俺がやります、柳先生」
「これは先生からの宿題よ……愛宕を止めて……」
なんか、ハードな宿題を出されてしまったな。だがレイラは、俺より強いと思った柳先生を打ち勝った強者だ。
もし俺が仮にやられても、まだ菜瑠美と大和田さんもいる。でも俺は2人に頼らずに、俺1人だけで相手してやる。
「まさか影地令、あんたが出てくるとは。ハイトと競り合ったという『光の力』、私にぶつけてみな」
「言われなくてもわかってるぜ。レイラ……先輩」
先輩なんてこれっぽちとも思ってないが、事実なことだ。一応、付けておくか。
しかし、俺は現役の柳先生の生徒だ。柳先生を苦しめた怒りしか、今の俺しか沸かない。仇は討たせてもらうぞ、朱のレイラ──
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