3-10話 生徒副会長と生活指導員の本気
──俺の担任が、能力者としての確かな強さを持っていたことと、教師としての深い宿命を背負ってたとはな。
大和田さんの家に向かう途中に、虹髑髏の工作員と遭遇した俺達4人は、ここから奴らを追い出すことにする。
工作員は3人組だが、柳先生と大和田さんの2人だけで、立ち向かおうとしていた。
だが奴らは全員、プラモデルとはいえどもマシンガンを所持している。相当危険な相手であることに、変わりはない。
「あなた達覚悟しなさい。私の生徒と甥に迷惑かけようとするなんて、きついお仕置きが必要ね」
「俺達の本拠地に触れたこと、後悔させてやる」
大和田さんの両手から、水のようなものが出ていた。海の一族というのは、主に水を使った技を使うのか?
「奴らが特殊な『力』を秘めてるのは承知だ、撃て……な?」
「お前らの動き、遅いんだよ。はあっ!」
奴らが発射する前に、大和田さんの両手から出した水鉄砲で奴らの顔に当てた。
「まずは、その物騒なものをなんとかしないとな」
大和田さんは瞬時に、奴らが所持していたマシンガンを取り上げ、地面に落とした。
「よくも、俺達の武器を! だが、素手で戦えることを証明してやる」
工作員3人が、走り出して一気に柳先生の方向に殴りかかろうとした。
だが柳先生、何か構えている。両手を十字にして……俺の
「耕ちゃんではなく、私だけに向かうなんていい度胸してるわね。私の波をくらいなさい!」
柳先生の両手から、大和田さんと同じく水が飛び出していた。柳先生は両手をゆっくり振り降ろし、波のような衝撃波を、奴らに向けた。
「ぐはっ」
「あの女、強いぞ」
柳先生の波により、3人いた工作員の内2人が入り口まで流されていった。
「くそっ、なんて奴らだ! 俺は回避できたし、逃げるか」
「おい待てよお前!」
「はいっ?」
残った工作員も必死に逃げようとしていたが、その工作員は大和田さんの両手に掴まれていた。
「お前にはこいつをお見舞いしてやるぜ!」
大和田さんは工作員に、背負い投げをした。柔道も黒帯であると柳先生が言っていたため、投げる雰囲気も相当なものだ。
「がはっ」
「これで、少しは改心してもらいたい所だな」
最後の工作員も、俺と菜瑠美がいる所まで高く投げられてしまい、そのまま倒れていった。
「私達にかかれば、こんなお子様相手は朝飯前よ」
「強さに衰えはなさそうですね、たかこおばさん」
「いい加減にしなさいよ……耕ちゃん」
これが、海の一族の強さか……? 俺の持つ『光の力』と同等……いやそれ以上の強い気を感じた。
柳先生も久々の戦いだったみたいだが、さっき使った衝撃波はかなりの威力を感じた。
俺と菜瑠美はこの後に、大和田さんと対戦するのか……正直今の大和田さんを見た限りでは、歴然の差を感じてしまった。
「つかさ、危ない」
「お前は隙だらけだったな、影地令」
「しまった……!」
マジかよ……大和田さんに投げられたはずの工作員の1人が、しぶとく俺に近づいて背後から首を絞められた。
「お前、大和田さんに投げられて痛みを感じたんじゃないのか?」
「悪いが俺のタフさは、虹髑髏の中でも屈指なんでな。お前だけはここで死ね!」
工作員の人間離れした体力には驚いたが、握力も大したものだ。だが俺は、こんな奴なんかに首を取られるのか。
「そうはさせません……はぁあああ!」
「なにっ?」
隣に菜瑠美がいてくれて助かった。首を絞められていただけあって、息も苦しかったしな。
菜瑠美は、この前取得した
「俺がこんな可憐なガキなんかに……か、体が?」
「つかさに歯向かおうとしたあなたには、しばらく苦痛を味わってもらいます……」
工作員は、菜瑠美の闇の渦に当たってから段々様子がおかしくなり、頭を抱えていた。いくらタフさが自慢でも、耐えきれてないようだ。
この前菜瑠美の言った通り、相手に精神的ダメージを与えると言うのは本当だったのな。
工作員はそのまま、うつ伏せに倒れていった。このまま放置でも、構わなそうだな。
「菜瑠美……助かったぜ。奴はどうなるんだ」
「命に別状はありませんが、しばらく倒れたままでしょう……」
奴がタフでも、精神的ダメージを与えていたら、これ以上襲ってこないだろな。
「もう邪魔者はいないようだな」
今度こそ、虹髑髏の工作員を倒し、俺達は大和田さんの寺へと向かう。
だが突然、後ろから大きな騒音が鳴り渡り、音が段々大きく近づいて向かってきた。
「ん……何なの? この騒音は?」
「ここは小鳥も住み着いている通路だぞ、うるさいにも程がある。」
大和田さんの言っている通り、草むらに住み着いていた小鳥達は、騒音に気付いて飛び散っていった。
「へへへ、どうやらあのお方が来たようだ……お前らは寺に行くことなく、ここで死ぬんだな」
工作員は、不敵な笑いを浮かべていた。あのお方? 奴らが言っていた幹部か?
すると今度は、猛スピードで赤色のオープンカーが俺達の前に近づき、急ブレーキを踏んだ。
右目に眼帯を付け、朱色の三つ編みをした髑髏模様の黒色のチャイナドレスを着た女が、オープンカーに乗っていた。
「おいお前、影地令達相手に苦戦しやがって」
「大変申し訳ございません……」
「ふん! もう2人も入口に倒れていたし、第1部隊の質の低さが上から知れ渡るじゃないの」
工作員と話していた女は、運転席から降りてきて、工作員の不甲斐なさに一喝を入れた。
「あら、誰かと思えばたかこ先生じゃないの?」
女は俺達に向かってきたが、真っ先に目線を入ったのは柳先生であった。
「あなた……もしかして
「確かにそんな苗字だったねー、今は違うわ。虹髑髏の七色の1人であり、第1部隊長・
朱のレイラ……ハイトに続いて、2人目の七色とお目にかかるとはな。
「どうやら、柳先生の元教え子みたいですね」
「愛宕レイラ……たかこおばさんから何度か聞いたことあるが、本当に闇落ちしてたなんてな」
「そんな……私達の高校の先輩に、七色がいたなんて……」
一番驚いているのは、柳先生だ。こんな形で元教え子と再開するなんて、全く思ってもないだろうし。
「影地くん、天須さん、耕ちゃん。ここは私にやらせて。私はレイラを更正させたい」
「更正? やってみろよこのババア! おめぇが、私を海神中央高校から退学させただろうが」
元教師に対してババア呼ばわりかよ。俺が柳先生の現役の教え子でもあるか、レイラに怒りが沸いてきた。だが、今の柳先生の怒りは最高潮に達している。ここは、過去の因縁の決着を見届けるか──
「ババア? よくそんな口、私の前に言えるわね。あなたがこれほど、悪に染まってたなんて……愛宕レイラ、絶対許さない!」
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