第12話 食後のもふもふタイム
「ふあ~、美味しかったぁ……」
大好きな人の手料理をお腹がくちくなるほど食べられて、僕は本当に幸せだった。
「ありがとう、真夜」
僕は隣でちょこんと愛らしく女の子座りをしている真夜に、心からのお礼を伝える。
「ううん、お粗末様でしたっ」
真夜はそんな僕のお礼こそがご褒美だと言わんばかりに、嬉しそうに微笑んでくれる。
……ああもう、こんな時どうすればいいんだろう。どうすればこの感謝の気持ちを伝えられるんだろう。
モテモテのイケメンならこんな時カッコよく決めるんだろうけど、僕はザ・フツメンで浮いた話なんて一度もなかったからどんなことをすれば喜んでもらえるかなんて何も知らない。
こんな事ならクラスで女子に大人気だった竹田君に聞いておけばよかった……。
「そ、それじゃあ僕がお茶入れるね」
「あっ、それなら私がやるからお兄ちゃんは座ってて……」
とりあえず僕が出来る事をやってあげたいと思って立ち上がったのだが、真夜もそれに続いてしまった……のだが、
「わっ」
「おっとっと」
机の一辺に二人で座るなんていう不自然な状態から急に立ち上がった真夜は、バランスを崩してしまった。
その隣に居た僕も中腰の様な体勢であり、真夜を抱き止められる状態には無かった。
かくして二人はもつれあう様に、床に転がってしまった。
「真夜、どこも打ってない?」
大して勢いがついてなかったので僕は痛くも痒くもない。それよりも腕の中に居る真夜の事が気にかかった。
一応、真夜がどこにもぶつけないように気を付けながら倒れたつもりだけど……。
「ごめんね、お兄ちゃ……あっ」
真夜が起き上がりかけたところで、唐突に声をあげる。
「ど、どうしたの?」
「……え、えっとね。ちょっと足が痺れてて立てないかも」
「じゃあ痛いところはない?」
「うん」
「良かった」
「え、えっとね、だからね……」
ぽすっ、と真夜が腕の力を抜いて僕の胸の上へと倒れ込んで来ると、そのまま真夜はネコか何かのように僕の胸に顔をうずめてしまった。
「ちょっとだけこうしてても……いい?」
「もちろんだよ」
いくらでも僕を布団にしてていいからね。
「あ、ありがと……」
僕は真夜の背中へ左手を伸ばすと軽く抱きしめる。
右手は真夜の頭の上にやり、髪の流れに沿う様に撫で始めた。
「んっ」
真夜は吐息を漏らすと気持ちよさそうに目を細めた。
しばらく撫で続けていると、だんだん真夜の瞳がとろーんと蕩けてくる。どうやらお気に召してくれたらしい。
試しに手を止めてみると、
「もっとやって」
と鼻にかかったような声で要求されてしまった。
「はいはい」
と再開すれば、真夜はむふーという満足そうな吐息を漏らした。
……猫みたいだなぁ。なんて感想を抱きながら、僕も真夜の感触を存分に楽しんだのだった。
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