十人十色 永遠の君

雨世界

1 薄紫 うすむらさき

 十人十色 永遠の君


 登場人物


 白湯紫 むらさき 宮中に住む可憐な美少女。


 若草藍 あい 真面目な少年。むらさきと出会う。


 白露紅 くれない 美しい少年。藍の兄。


 白草玉 たま 不思議な雰囲気を持つ、美しい少女。

 

 プロローグ


 愛し。……愛され。


 本編


 薄紫 うすむらさき


 紫が初めて恋をしたのは、同じお屋敷に住んでいる幼馴染の少年。藍と出会ったときだった。

 季節は庭にたくさんある、桜の咲く春の季節。


 その桜の花吹雪の中で、幼い紫は、同じように幼い少年である藍と出会った。


 若草藍。


 紫の父である白湯の君の親友である、今は亡き白露の君の二人いる男子の兄弟の弟君で、今は訳あって、兄君である紅(白露の家を継いでいる)とは違い、藍は母親の実家である若草の家を継いで、若草藍となって、紫の実家である白湯の家に居候をするような形で、最近になって、引越しをしてきた人だった。


「こんにちは」

 柱の影に隠れるようにして藍のことをじっと見つめていた紫のことを見つけて、藍はにっこりと笑ってそう言った。


 その澄んだ、美しい声を聞いて、紫ははっととなって、柱の後ろにその姿の全部を隠してしまった。(返事もしないままで)


 紫はそれから少しして、柱から顔を少しだけ出して、藍のことを見た。すると、藍はまだ紫のほうを見ていて、そんな紫の行動を見て、優しい顔をして、桜吹雪の中で、にっこりと笑って、紫を見ていた。


 それはとても幻想的な風景だった。


 紫はこのとき、初めて恋に落ちた。


 自分の家に都落ちをしてやってきた若草藍を見て、紫は、本当の、本当の恋に、落ちた。

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