鬼の咢
「本当に来るんですかい?」
顔に深い傷を刻んだ男、百目鬼が司令室のようにモニターの並んだ部屋でぼやくように言う。
「さあね。でもこのくらい自分で嗅ぎ付けてくれるようじゃなきゃ、どの道使えないわ」
シルクの服に身を包んだ真遊海が、その後ろで偉そうに腕を組んでいた。
「助けに来る気が無かったらどうするんで?」
「これでも人を見る目はあるつもりよ。彼はお人好しじゃない。私なんか心配しないわ。彼は自分の力を試す機会がほしいのよ」
躍斗には言うなとキュオに言ったが、キュオは必ず躍斗に伝える。
そうすれば躍斗は助けに来る。その点においては真遊海には確信に近いものがあった。
これで来なかったら本当に馬鹿みたいだが、ハズレを引かされる事には慣れている。
「お。来たようですぜ」
躍斗に渡したペンダントに仕込まれたGPSが、彼の来訪を知らせる。
「じゃ、そろそろお嬢さんには檻に入っていてもらいやしょうか」
その言葉に真遊海は傷のある顔を睨む。
百目鬼が無線から指示し、待機している連中がショットガンに初弾を装填した。作戦開始だ。
銃は暴動鎮圧用のゴム弾。子供相手に使うには危険だが、これから戦う相手を子供だと思っていると痛い目に遭うぞと全員に通達する。
「さあ、利賀躍斗君。あなたの力を見せて頂戴」
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