魔王と鬼

「どう?」

 真遊海は躍斗が見えなくなってから体の力を抜き、背後から近づいて来た男に声を掛ける。

 男は建物内をモニターしていたと思われる端末を閉じた。

「本物ですね。いいんじゃないですか? チンピラ遊びも役に立つもんですねぇ」

 その言葉に少しむっとした様子を見せたが、男に向き直ってつかつかと歩み寄る。

 その大柄の男は顔に深い刀傷のような痕が残っていた。ベレー帽の下はスキンヘッドのようで、一口に言えば傭兵のようである。

 真遊海は自身の三倍の重さはあろうという傷の男に、臆する事もなく胸を指で突く。

百目鬼どうめき。彼は私が見つけたんだからね。あんたに任せるけど、そこんとこは忘れないようにしてよ」

「へいへい」

 大男は小娘の横暴な態度に怒る様子も見せず肩をすくめる。

「その犬、早くどっかやってよ」

 鼻を押さえてしっしっと手を振る真遊海に、百目鬼はやれやれとケージを拾う。

「しかし、マルチーズだからチーズってねぇ……」

「どうでもいいでしょ!」

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