第7話――エピローグ
エピローグ。
というより、ただの長めの後日談。
ニニギはその後どうなったのか、ということについて、私、ヤタガラスから簡単に述べさせていただきます。
ニニギは、いわゆる『神の存在の消滅』を恐れた結果、そのままスサノオに降参する形を取りました。これ以上の神の狼藉を認める人間でもなかった、ということです。それがたとえ、神に認められた数少ない特別な存在であったとしても。
そして、ニニギはこう言いました。
「……結局、決着は着かなかったな! だが、次は僕が勝つ! 絶対に、だ!」
そう言い残して、ニニギは去りました。
ご丁寧に、天叢雲剣を残して。
そのまま盗み去ってしまえば、こちらも困ったものを――最後まで筋の通った神様であったと思います。最後まで、問題なく過ごしていった存在だと思います。神じゃなかったら、まともに動かないぐらいに愚直で真っ直ぐな人間だったと思います。
で、あるからして。
その物語がどのように解決するかどうか――ということについては、オオヤシマに聞かないとはっきりしないのですよね。
という訳で。
「……以上が、ニニギとの戦いの顛末だ。何か質問でもあるか?」
スサノオさんの言葉を聞いて、イザナギ様は言います。
「……うーん、悪くはないけれど、もう少し何とかならなかったのかい? 例えば戦いをしないだとか……」
「親父殿。いったい全体、歯切れが悪いようだが、今回の『事件』、どのように解決すりゃ良かったんだい?」
スサノオさんは言います。
「何もかにもばっさばっさと切り捨てた訳でもねえ。神を殺した訳でもねえ。ただ単純に、逆賊から神の剣を取り返してきただけだ。そこに何の間違いもないだろうが」
「そうだろうか?」
イザナギ様は窓から景色を眺めながら、言いました。
「僕には、これが何かの始まりに過ぎない、と思っているのだよ。ほら、前あった、アメノトリフネの事件だってそうだ。『タケミカヅチ一派』がオオヤシマに反旗を翻した事件。今は未だ彼らも動いていないようだけれど……、そんな事件がいつか起きるだろう。それこそ今度は不味い方向に動いてもおかしくないぐらい……」
「だが、それをどう止めろって言うんだよ?」
スサノオさんの言葉はひどく淡泊でした。
だから、だからこそ、イザナギ様は真面目に答えてくれるのかもしれませんけれど。
「……今回の事件はあくまでも『非公式』だ。良いな? 神の剣が一柱の神に盗まれた、なんて知られたらこの『オオヤシマ』の権威が失墜する」
「分かっている、分かっているよ。……あー、これ以上面倒なことが起こらなきゃ良いけれどな」
「それについては、私も同意だ。これ以上面倒なことは、出来ることならば起きて欲しくない。一番起きてしまう可能性が高いものと言えば、それこそアマテラスの引きこもりぐらいだろうか……」
「アマテラスは、最近オオヤシマをふよふよしているようだけれど。権威とかそれこそそっちの方が失墜するんじゃねーの?」
「そこについては問題ないと思っている。なんやかんや、今のアマテラスは安静だよ。私としても一安心、と言ったところだろうか」
そんな会話をしていますが。
スサノオさんとイザナギ様は、これでも親子。
親子の会話が、そんな事務的なもので良いのでしょうか?
私はそんなことを思いながら、スサノオさんとイザナギ様の話を聞き続けるのでした。
ただの他人の関係ならまだしも、親子の関係に簡単に踏み入ることなんて、出来る筈がありませんでした。
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