第41話

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 あくまで格闘を行うカイオに対し、シルバの所作は演武の色を強めていった。

 近接間合いになり、シルバはくるりと反転。後ろに手を突き倒立をして、両腕の間からカイオを注視する。

 無意味な動きを咎めないカイオではない。両腕を交差し上半身を落とすと、一気に加速。アルパォン・ジカベッサ(突進頭突き)を放ってくる。

 シルバは脚を畳んで前に遣った。向かってくる頭に膝をぶつけると、鈍い音が辺りに響いた。

 カイオはふらりとしていた。シルバは衝突の勢いを利用して回った。着地時に足の裏を強く打つが、ダメージは少ない。

 左足を強く踏み込んで、シルバは左に傾斜。上半身を水平にして、右脚の脛をカイオに向けた。僅かな溜めの後に、膝から下をコンパクトに振り抜く。

 側頭にヒットし、カイオの顔面はがくっとした。しかし勢いを利用し、身体を横に九十度回転。手を下方に持っていくとともに、左足を振り上げた。

 波に乗るシルバの反応は早い。屈んですれすれで避けて、くるりと横旋回。振り向きざまに、メイア・ルーア・ジ・フレンチ(半月蹴り)を見舞う。

 耳の上に当たった。カイオは大きくぐらつく。シルバの攻撃は、確実に効果を生み始めていた。

 流れるようにシルバはしゃがみ状態へと移行。上半身を後ろに遣って、両手を支点にふわっと後転をする。またしても攻めを度外視した振る舞いだった。

 身体を沈めつつ、カイオは突き進んできた。手でシルバの腿を取り込もうとする。

 右足を引いて回避し、シルバは後ろを向いた。上半身から先に戻して、伸びた左脚を追随させる。

 シルバは右脚一本で跳び、身体を翻した。勢い付けで両手を振り、右足を全身全霊で以て振り抜く。

 渾身のパラフューゾ(捻り跳び蹴り)がカイオの顔面に迫る。衝突の瞬間、ゴッ! と低い音が響き渡り、カイオは左方に急加速していった。二回ほど跳ねた後に、動きを完全に止める。

 その瞬間、全方位からの拍手の音が生じた。音量は並外れて大きく、人数は百や二百では利かないようにすら思えた。

 シルバはふうっと息を吐いた。

(勝てた。これで、みんなを守りきれた。リィファ──)

 達成感を得つつ、シルバは振り返った。倒れ伏すリィファが目に飛び込んできた。周囲には信じられないほど多量の血があった。

 肝を冷やしたシルバは、すぐさまリィファに駆け寄っていった。一歩の距離まで至ってさらに踏み出そうとするも、どういうわけか瞬時に身体は硬直した。強く念ずるも動かない。明確に異変が生じていた。

 混乱するシルバだったが、程なくして視界は黒に塗り潰された。

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