第5話「静寂の空」

 憂鬱な気持ちを抱えて私はテントを出た。なんて日だ。すっかり暗くなった空の下で開かれるいくつもの祝宴をぼんやりと見る。兵たちが車座になって囲む中心には、湿気った木が燃え白煙を上げている。兵たちは酒を飲んですっかり上機嫌で、燻された肉を焼き串から外すことすらせずかぶりついている。あんな木で焼いたら煙たくて仕方ないだろうに。彼らにとってはそれも些細なことなのだろう。私は彼らに背を向けた。雨はだいぶ前に止んでいたが、地面はまだしっとりと柔らかく私の足を迎える。

 気の利いた貴族なら彼らの中に飛び込んで健闘をねぎらうところなんだと思う。まして自分の不始末で部下を死なせた直後なら。もっと器用に生きる才能が私にあったなら、きっと何も考えず自然と体が動いたに違いない。そんな現実から目を逸らしたくて私は彼女を探す。岬に置かれたかがり火に照らされた棚引く長い髪。あんな綺麗で長い髪の持ち主が、この島に二人も三人もいるはずはない。胴間声の歌を背後に聞きながら、彼女のもとへと小走りで向かった。

「ああ、クロエラエールさん」

 岩に波の砕ける音がする。島の最南端にあたるこの場所は物見岬と呼ばれている。今回の来寇で真っ先に警報を発したのはここに詰めていた兵だ。ここから南を眺めると、最早空と海、点在する船しか見えない。アトミールは、そんな場所の岩に腰掛けていた。

「クロエでいいよ。海を見てたの」

「……はい、クロエさん。空がとても静かでしたので」

 演奏会を楽しむ人のように彼女は目を閉じた。私も隣に座り同じようにする。先程の歌声はいよいよ大きくなり、大合唱になりつつあった。歌われているのはどうやら最近街で流行っている恋歌であるようだが、てんでばらばらに歌っているから聞くに堪えない。

「結構、うるさくない」

 彼女はにっこりと笑って、自分の髪を撫でた。

「音響信号は盛んですね。私が話しているのは電波のことですよ」

「電波? あの、無電に使う、お屋敷の幅くらいある大きなアンテナの?」

 無電は各地の領主と中央とを結ぶ強力な道具だ。伝令を飛ばせば何月も掛かるような距離を、文字通り瞬時に結んで情報を伝える。連邦がこれほど広大な領土持ちながら一体性を保っていられるのも無電の力によるのだと説いている先生を見たことすらある。便利な無電だが、送受信機と水車などの発電機を作るために広い土地と沢山の人手、そして何より大量の資源が要る。信号の理解にも特別な訓練が必要だ。彼女の体は普通の人より少し大きい程度、特別な訓練やら資源やらはともかく、送受信機のように大きな装置はどこにも見えない。

「中波までならこの程度で十分ですよ」

 そう言って彼女は自分の髪をつまんだ。それがアンテナだと彼女は言っているのか。髪はたかだか半ミノエミア強(約一メートル強)と言ったところ。長い方だと思うけど、思い描くようなアンテナとは全然違う。現代にアンテナと言えばその十倍以上の長さがある。それに電波に種類があるなんて考えたこともなかった。海の波が空気と水の間で生まれるのと同じように、電波は電気と磁気の間で生じるらしい。この二つが同じようなものだとするなら、なるほど電波にも種類があっておかしくない。海の波に高さの大小波長と周期の長短があるように。

「どんな種類があるの? 教えて」

「電波のことですか? 今の装備で取り扱えるのは六二〇クロメミア(約一一・五ミリメートル)から半エミア(約一キロメートル)までの範囲です」

 彼女が差し出してきた髪の一端はさらさらと絹のように滑らかで、微かな温もりがある。人の髪と殆ど違わないのに、それがなぜかかえって彼女が異質な存在であるということを思わせた。

「む、うん。じゃあ、波の高さとか周期は関係ないの、かな」

 つっかえつっかえ彼女の言葉を読み解こうとする。

「振幅は無関係です。もちろん大きい方が抽出しやすいですが。周期は電磁波に関しては波長と反比例しますから同じことですよ……どうしましたか」

 そんな心配そうな顔で見てくれるな。そうじゃないんだよと言いたいけれど、直面している衝撃が大きすぎて上手く言葉にできない。何度か深呼吸して、ようやく言葉が見つかった。

「一言一句が大発見なんだもん。びっくりしちゃう」

 学問は誰が言ったかではなくて、何を言ったかによって評価されるべきだ。鵜呑みにしないで彼女の主張を検証する必要はあるだろう。しかし、もし彼女の知識が全て言葉にされて、示されたなら。あらゆる学問、いや世界そのものに大きな衝撃が走るだろう。それはとても心躍る光景だ。

「物質の持つ活力は相互に変換されるだけで総量は変わらないという古代の文献にあった記述は本当? そもそも活力というのは何なの。私が理解している限りでは系内に変化を生み出すために必要なものに思えるんだけどそうだとすると物体が真っ直ぐ動いているときに変化しないというのがよくわからなくて」

 またやってしまった。当惑の表情を浮かべ視線と肩とを落としている彼女を見て、私は消えてしまいたくなる。

「ごめんなさい。古術学の話になるとつい。あ、古術学っていうのは、古代の智慧を現代に蘇らせるための学問なんだけど。一応勉強してて」

 自分の好きな話題を相手も好むとは限らないなんてことはわかっている。それでもても時々やってしまう。黙っているのが気まずくて、両手を組んで弄ぶ。沈黙に耐えかねたように、アトミールが尋ねてきた。

「文献や口頭での知識継承は――そうか。電子情報が解読できないんですね」

 彼女が言っているのは電気本のことだろう。解読できないわけではないけど、それは巨額の賭け金を積み上げた賭けだ。最高の保存状態の電気本と、当時の導線、電気変換装置、超一流の職人が作った手回し発電機と熟練の発電師。これらが揃ってようやく電気本は読めるようになる。

「うん。紙のものは読めるけど……。物語とかばっかりなんだ。もちろんそれが専門の先生がたにとっては凄い資料なんだけど、当時の技術を知ろうとするには、ちょっとね」

「物理媒体は趣味性が強いものでしたからね。物理媒体が技術情報を伝達するために使われていたのは五・六百年前にはなるのではないでしょうか。私が製造されるよりさらに数百年遡ります」

 どおりでと納得した。図書館にあった本当に貴重な古代の学術書はおしなべて極端に劣化が酷かったから。古い年代のものばかりだったのは、前崩壊文明の末期にはそもそも作られていなかったからなのだ。

「どんな風なの。電波を聞くって」

 アトミールは少し考えるように目を動かしてから、浜辺の方を見た。

「少し、歩きましょうか」



 夜の海は怖い。真っ黒な闇がどこまでも広がって、ざざ、ざざという波の音で私たちを呼ぶ。その闇の向こうを並んで眺める。星空と砂浜とに挟まれた場所で、アトミールは私の問いかけへの答えを語り始めた。

「ざらざらとした紙の上に指を触れて、その凹凸をなぞるような。浜辺に寄せる波の音を聞きながら、岩に波の砕ける音がするのを感じるような。行き交う人々を眺めながら、その中を歩く一人に目を留めるような。そんな感覚です」

「わかるような、わからないような……」

 帽子越しに頭を掻くようにもどかしい。知ってか知らずか、アトミールは私の反応をさも当たり前のように見えている。

「結局は皆さん人類の五感にない感覚です。精度と分解能の高い表現をするのは難しい」

「ふうん」

 相槌を打つのが精一杯だった。人として生まれた以上彼女の世界を見ることは決して叶わないのだと知って、私の心の中が小さく波立った。

「なんか、ずるいな」

「ずるい、ですか」

「うん。ずるい。だから、教えて欲しいの」

「あまりからかわないでください。混乱します」

 困惑顔の彼女を見てしてやったりとほくそ笑む、意地の悪い私。

「私の知らないことを沢山知ってる。私の見えないものを沢山見てる。それを独り占めにするなんて、ずるいよ。だから、教えて。知らないこと、見えないものを」

 気付くと彼女の顔が目の前にあった。月明かりにぼんやりと照らされる彼女の顔立ち。こんな距離で人とお話をしたのはいつぶりだっけ。距離の近さを嬉しく思っていたのに、不意に彼女は離れていった。

「……私は基礎科学や政治学・社会学的な知識について大幅な情報の制限を受けていました。あなたが期待しているほどの情報は持っていないと思いますよ」

 離れた彼女の表情は窺えない。

「そんなこと言ったって。今と比べたら全然違う。私たちは古代みたいに気軽に電気を起こせない。物がなぜ落ちるのか。鳥はなぜ空を飛べるのか。について何も知らない」

「それは危険な選択です。とても。私はお勧めしません」

「なぜ?」

 問いに彼女は黙り込み、私の目を見つめた。やがて考えがまとまったのか彼女は再び口を開く。

「私に。すなわち人類以外に人類の行く末を委ねる行為だからです。私が嘘をついていたらどうしますか? いなくなったらどうしますか?」

 天与の恩寵は人を時に自立から遠ざける。彼女が恐れているのはそういうことのようだった。私はうまく返事ができず、沈黙するしかない。それを彼女は納得と受け取ったようで、話題を区切るように小さく咳払いをした。

「先程は何かお悩みだったようですね」

 この問いかけには驚いた。彼女の前でそんな素振りを見せたつもりはなかったから。

「わかるの」

「何十万人分も人の感情を推定させられました。飽きるというものをあのときはじめて知りましたよ」

「それは……大変だね」

 いやまったく。私なら五分で音を上げる。彼女が自分の気持ちについて話すのは初めてのような気がする。よほど苦痛だったのだと思う。

 波は私たちの会話なんてお構いなしに寄せては返す。三百年前も。いや何千年も前からきっと変わらずに。私が口を開くことを決心するまでに、その波が三度浜辺を洗った。

「叱られてね。遺跡でのことで」

「私を連れ出したことですか」

「ううん。もっと単純だよ。私が駄目だから部下を二人も死なせて、もう一人も死ぬところだった。自分も危なかったし、もっと言えば先遣隊としての役目も果たせなかった」

 結果として賊の目的を阻止することはできたのかもしれない。あの男は襲来した海賊全体を率いる立場だったらしく、それを失い背後を衝かれた賊は総崩れになった。現時点で骸の数は四十を越えており、明日捜索すればさらに増えるだろう。けど、こちらの損害もあまりに大きい。二十一人が命を奪われた。最初の銃撃を受けた前衛が十一人、その後の射撃戦で四人、側面攻撃後の掃討で二人。そして、私の部下が二人。皆勇敢に戦って死んだという。じゃあ私はどうだったか? 父さまは私にただした。戦で兵を失うのはやむを得ないことだ。完璧に磨き上げた球でさえ、転がせばやがて勢いを失い止まる。完璧な軍勢でさえ消耗は避けられない。しかし、兵を率いる立場の者がしかるべき責任を果たさなければ、軍勢はやすりに掛けられたようになるだろう。父さまは言った。今回は天佑あって辛うじて自身とミューナルトを救えたようなもの。お前は何を成したのか。何もしていないではないかと。何一つ言い逃れはできず、私はただ歯を食いしばって父さまが語り尽くすまで耐えた。

 足下の砂を蹴る。きめ細やかな砂は私の感情を優しく受け止めてくれる。

「私は、貴族だから。特権を持っているから。代わりに領地と領民と家臣を守る義務がある。貴族の家に生まれたそのときから。ねえ、何なんだろうね。貴族って」

 私の言葉を咀嚼するよう彼女が私の目を覗き込む。

「特権的身分を備えた社会階層の一つではないでしょうか」

 言って、私が口を開くよりも早く続ける。

「でも、これは求めておられる答えではなさそうですね」

 人並み以上に察しがいい。人じゃないくせに。

「もっと実存的なやつだよ。どうして私が貴族に生まれて、貴族として育てられて、今ここにいるのかなって」

 仰いだ天頂では月を後続の早月さづきが抜き去ろうとしている。早月は毎晩西南西の空にその鋭い姿を現すと、大きくて丸く鈍重な月をからかうように軌道を交えて東北東へと消えていく。

 足早に空を駆け抜けること一夜に二度、月の十倍近い早さで欠けていく生き急ぐようなあり方は古くから数多くの神話を生んできた。前崩壊文明だでって同じだったに違いない。

 鈍重で円満で長命な月と、機敏で短命で先鋭的な早月。こんな日は、どちらにもなりきれない自分が呪わしく思う。

「もっと得意な人はいくらだっているのに」

 視界を天から地上へ引き下ろした先には彼女がいた。月明かりに照らされた翡翠の髪が海風に吹かれ揺れている。

「ごめん。幼稚だよね。みんな役割を全うしてるのに、私だけが、いい歳して、こんな」

 もう目も合わせていられなかった。こんな恥知らずな告白をしているのだから。

「あなたの不安を私が真に理解することはできないでしょう。私は、人から与えられた目的を達するために作られた存在ですから。しかし、どうでしょう。それは社会ではなく、あなたが決めることなのではありませんか」

「私が? 何を?」

「あなたの役割やあるべき振る舞いです。それは社会によって規定されるべきでなく、社会の期待に基づきつつもあなたが決めるべきです」

 彼女なりの励ましなのだろう。古文書に語られる物語には、そうした生き方を讃える価値観が満ちている。きっと古代はそういう時代だったのだろう。じゃあ、私に当てはめていいことなのだろうか? 私は躊躇いなく頷くことができない。だって、それは私に、貴族として与えられた特権の全てを手放すことをも求めるものなのだから。

「私はずるい人間だよ」

 長い沈黙が訪れた。波の音、風の音、遠くから聞こえるお祭り騒ぎ。海を眺めていた彼女は、意を決したように切り出した。

「私はこの地に留まるべきではありません」

 突然の言葉は私のむしゃくしゃを全て吹き飛ばした。驚き見上げた彼女の表情はこの角度からは窺えない。

「敵対勢力の指揮者が死んだことを覚えていますか」

 もちろん覚えている。私たちに降ろうとするなり苦しみだして死んだ男。アトミールによれば、体内に入り込んでいた小さな機械が彼の命を奪ったのだという。おそらくは、口封じのために。

「殺害の実行者、便宜的に未知敵対者と呼びますが、これの背後関係に心当たりはありませんか。かつての高度技術を保持し、私の元へ辿り着く動機を有する個人もしくは集団に」

「独立大学連合とか、かな。私が勉強したところ」

 独立大学連合は、古術学を含むあらゆる学問の中心だ。大陸を挟んだ遙か北東の島にあって、どんな国の干渉も受けずに研究と教育とを行っている。苦労もあったけど、憧れの古術学を学ぶことができたし、いくつかの貴重な出会いもあった。

「でも、そんな秘密主義的なところじゃないよ。研究内容は原則公開するから」

 公開の丁寧さと迅速さは相手からの寄付金次第ではあるのだけど。そのことは言わなくてもいいだろう。

「それでは極秘裏に古代の技術を保持し、私を管理下に置こうとした別勢力の存在が推定できますね。私がこの地に留まり続ける限り、この場所は未知敵対者による注目と干渉を受け続けると推定できます」

 目に見えない機械を使って人をあっけなく殺せるような存在がどんなことを仕掛けてくるかなど考えたくもない。それは私やアトミールに留まる問題ではなくて、父さま母さま、領民をも巻き込む問題になる。言葉を失っている私に助け船を出すように、彼女は二本の指を示す。

「私はあなたの自律無人機です。あなたの意志を示してください。私はそれを実現するための最適解を探索することができます」

「私は――」

 どうしたいんだろう。彼女を追い出してヒンチリフの平穏を保ちたい。彼女を保護して恩義に報いたい。自分の好奇心を満たしたい。領民を虐げる貴族ではありたくない。貴族という役割に一生を捧げたくない。心の内に浮かんだ思いを一欠片ずつつかみ取って言葉にするまでは暫くの時間が必要だった。

「この街を騒がせたくはない。でも……あなたを一人にはさせたくない」

 相反する沢山の気持ちを無理矢理一つに固めてようやく私はこの言葉を口にした。困らせてしまうかもしれないと、そう思いながら。

「わかりました。少し、お待ちください」

 彼女が沈黙すると、風が吹いているわけでもないのに髪がふわりと広がった。まるで髪の一本一本の間に斥力を生じているかのようだ。暖かい風が彼女の方から吹いたような気がした。

 矛盾していますというようなことを言うと思ったのに、彼女の横顔はあまりに真剣だった。その目はまるで世界の果てまで見通すようで、いや、本当に見えているのかもしれない。彼女は、人ではないのだから。古代、人は絶大な力を持っていたという。浜に寄せる波を見ながら、私は伝承に思いを馳せる。海の果てを星の海から見下ろす。機械の小舟を放って星々を訪ねる。太陽を地上に顕現させて全てを焼き尽くす。

「あの、大丈夫ですか」

 赤い双眸が私を覗き込む。自分の世界に気を取られていたようだ。佇まいを直して彼女に向き合う。

「攻勢戦略と逆襲戦略、最後に無制限攻撃戦略を提示します」

 彼女はまず攻勢戦略と逆襲戦略について触れた。前者は各地を旅しながら情報を集め、敵対者を積極的に打倒しようとするものだ。後者は敵対者と関わり合うことはせず、各地を点々としながらひっそり暮らす。もし干渉があれば苛烈な反撃を加えることで、相手に対して割の合わない対象だと判断させる。前者は後者よりも危険な場面が増える代わり、一度倒してしまえばもう心配はない。後者は安全ではあるが、いつまでも問題は残り続ける。

「いずれにしてもクロエさんのご同行が必須です。したがって、逆襲戦略においてクロエさんは二度とこの地を踏めないとご理解ください」

 重い宣告だ。彼女はどちらかというと攻勢戦略を勧めているのかもしれない。父さまがお許しになるかはさておき、この二つの趣旨はわかる。

「じゃあ、無制限戦略は?」

「私の全機能をもってあらゆる危険を粉砕します。真独立型微小機械による自己複製工場を当地に量産しつつ、その支配圏を無制限に拡大します。これが惑星全体を被覆した時点で未知敵対者も無力化されたものと見なします」

 冗談で言っているのかと思った。でも彼女の目はそう言っていない。まるで私に挑戦するような輝きが灯っている。

「あなたは、どれがいいと思うの」

「それは、あなたが決めることです」

 わかった。わかった。私は深呼吸をして彼女の提案を整理した。敵を倒しに行くのが攻勢戦略。敵から隠れて暮らすのが逆襲戦略、とりあえず全部壊してしまえば解決するというのが無制限攻撃戦略だ。彼女がこんな選択肢を入れた理由はよくわからないけど、無制限攻撃戦略は論外。最初の二つのどちらかということになるけれど。こうして整理してみると案外すぐに結論は出た。

「攻勢戦略、かな」

 だってヒンチリフには帰りたいから。

「わかりました。それでは同戦略を前提とします。よろしくお願いします」

 微笑みを浮かべて彼女が手を差し出してきた。応じて握ると、彼女も握り返してくる。その力は前のときよりずっと強かった。

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