第22話:検証

 朝日が昇り、暖かな日差しが部屋に飛び込む。隣のベッドには未だアオが布団にくるまって寝ている。


 今日から一週間を休暇にすることを決めると、ついつい寝過ごしてしまった。


 アオもなんだかんだで疲れてるだろうし、休みなのだから昼に起きようが夜に起きようが関係ない。


「んぅー、けんとぉぉ」


 服が着崩れた状態で甘ったるい声で名前を呼んでくるアオ。目に毒だし、なぜこうも警戒心がないのか。デレた猫みたいだなぁ、なんて考えているとゆっくりと起き上がり瞼を擦る。


「おはよぉ」

「おう、おはよう」


 にへらっと笑って挨拶をしてくるアオ。

 今更だし二部屋取ると高いから一部屋にしようと提案してきたのはアオだが、これは俺の精神衛生に悪い。明日からは二部屋にするよう説得しようと固く心に誓った。そう、間違いがあってからでは遅いのだ。


「んじゃあ俺は門の外に行ってくる。能力の検証だな」

「はーい。あおはとしょかんいくね」

「おう。気をつけてな」


 まだ寝ぼけた様子のアオにそう言い残し、俺は部屋を出る。俺たちが泊まっている草原の風という宿の女将に挨拶をし、外へ出る。


 今日は陽射しが強い。もうすぐ夏が来るのかもしれないなとぼんやり思いながら門まで歩く。


「おはようございます。ご依頼ですか?」

「いえ、ちょっと訓練に」

「最近大きな盗賊がアッカード周辺に移動してきたと聞きます。お気をつけて!」

「ありがとうございます。お勤め頑張ってください」


 俺の言葉に、門兵はピシリと敬礼を返す。門兵というと賄賂や汚職のイメージがあるが、彼に関してはそう言うことは一切無さそうだ。

 まぁこれも国や街によるのだろう。少なくともここアッカードはそういうことがなさそうで良かった。

 領主はアレなのに、シュノーと言いイミシアと言い門兵の彼と言い真面目な人材が多いのだろうか。


 くだらない事を考えているとアッカードが少し遠目に見えるというところまで知らず識らずのうちに歩いていた。

 周りに同業者もいないようだし、そろそろ構わないだろう。


「ブック」


 ボンッと言う音ともに本が現れる。これ、音を立てずに出すことは出来るのだろうか。記憶が確かなら出来ていた気がする。


 消えろ、と唱えた後もう一度ブックと唱える。今度は音を立てないイメージを込めて。


「なるほど」


 無音で手元に現れた本を見るに、ある程度の自由があるらしい。

 自由が効くということは俺の能力の詳細についても実はわかるのではないだろうか。


「ステータス」


 バラバラバラバラと勢いよくページが捲れ、最後のページが開かれる。確かここは初めてカードコレクターを使った時に表示されたページだ。



 名前:ミウラ・ケント

 種族:純人族

 職業:カードコレクター

 能力アビリティ:カード化、実体化、パック購入、指定購入、変換

 称号:蒐集家



 前と表示されていない内容は変わっていない。ただ、アオの看破によると俺は他にも算術などのスキルを持っているはずだ。


 そこら辺どうにかならないのだろうか。

 そう考えたその時、ページが白紙へと変わる。



 名前:ミウラ・ケント

 種族:純人族

 職業:カードコレクター、協会員

 能力アビリティ(カードコレクター):カード化、実体化、パック購入、指定購入、変換

 能力アビリティ:算術II、言語理解、文字理解

 称号:蒐集家

 魔力値:5406500/5658000

 所持CP:508290



「かなり様変わりしたな。やっぱ召喚って魔力使ってたのか。それもずっと。でも、なんでだ?」


 一分間におよそ2000ずつ程回復していくそれを見て疑問が浮かぶ。


 元々存在するものがカードになってるだけのはずなのに何で召喚すると対価を支払う必要があるのだろうか。いや、カードにしたり戻したりするときに使うのなら理解できるんだけど。


 アレだろうか、活動に使用したエネルギー、代謝のようなもの。たしかにそう考えるとしっくり来る。

 千年原始人に野営を命じた時は心配そうにしていたし、夜食を食べていた形跡もあった。つまり千年原始人はこのコストを抑えようとしたのではないだろうか。


 この仮説が正しい気がしてきた。まぁ外していたとしてもそう遠くはない気がする。


 そして次がお楽しみ、ガチャの時間だ。


 俺はカードが大好きだが、ソシャゲも大好きだった。

 あの類まれな物欲センサーを躱し、レアを引き当てた時に溢れ出る脳汁。小遣いをスった回数は数知れず。


 この世界では生き死にがかかっているため程々にしようとは思っている。


「だが! 男には引いてはならぬ時がある」


 俺は手元にある金貨61枚のうち、20枚をCPに変換する。あとでアオに怒られるかもしれないが、その時はその時。


 現在の金貨1枚のレートはこの前より少し上がって51200CPだ。俺の手元には今150万を超えるCPが存在した。


 俺はパック購入のところをタッチし、目的のものを探す。魔物は今は持て余し気味だから魔物だけのパックを買うつもりはない。

 魔法は興味はあるが、それだけだと面白みが欠ける。


 そう、やはりランダムパックだ。闇鍋こそ至高。


 俺は胸の高揚を抑えきれず、ランダムパック購入を選択する。

 そして喪失感と共に手の中に光に包まれたパックが現れる。


 期待に包まれながら、一枚一枚確認していく。


 レア度2:魚沼産こしひかり

 レア度1:ひのきの棒

 レア度1:とがった牙

 レア度1:裂けすぎるチーズ

 レア度1:木の靴

 レア度2:旅人の服

 レア度1:おつまみ便利帳

 レア度2:モンストロエナジー

 レア度2:上質なシャツ

 レア度1:たわし


 これがおよそ20万円の結果。


「吐きそうだ」

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