第6話 オレオレ(一人称視点)で語る、犯人のヤス(三人称視点)で語る
毎度毎度、タイトルで遊んでおります、ネーミングセンス皆無な初心者物書きです。
センスがないゆえに、重要人物なのに名前のイニシャルがかぶったり、主人公格の人物と最終兵器の名前が似通って、後で悶絶したりするんですぜ。
脱線しましたが、今回は一人称視点の話と三人称視点の話です。
三人称視点も定義や区分がさまざまなのですが、それぞれの定義について語るのではなく、自分が書いてみて思った書きやすさと書きづらさ、そして陥りやすい問題について書こうと思います。
一人称視点について。
小説家になろうでも、カクヨムなどよくネット小説で見られやすい形式で、主人公をカメラマンにした視点語る形式です。いわゆる、FPSですかね(異論は認める)。
俺は、とか私は、とかで始まる形式の話がこの類になるかと思います。
メリットとしては、作者の感情をまんま主人公に反映できるので、主人公の心情描写が書きやすいです。話し口調でも書けるので口語も多用でき、地の文もラフに書きやすいし、読み手側も読みやすいです。
前回の物書き雑記帳で書いた文末の「た」で終わるか、「うの音」で終わるか、という文末に同じ音が連続する問題も、一人称視点だと事象をト書きで書く時に主人公の心情を交えながらかけるので起きにくい、と個人的に思っています。
じゃあ、一人称視点のデメリットは何かというと、主人公以外の登場人物の心理描写や表現が難しいことです。主人公以外の人物を表現する場合、必ず主人公というフィルターを通さないといけません。
なので、恥ずかしいという感情を表現するにも、顔を赤くさせてもじもじしている、というように書かないといけないですし、何に対して恥ずかしいのか、という理由も主人公の推測で書かないといけません。ただ、この推測もあまり正確には書くことができないです。
例えば、登場人物の恥ずかしさを描くとして、それが、好きだという相手(主人公)に自分の失敗を見られたという恥ずかしさだとします。
これを主人公視点から正確に表現しようとすると、どうでしょうか?
「そうか、好きな俺に失敗したところを見られて恥ずかしくてもじもじしてるというわけか」
となります。
何なんでしょう、この主人公、どんだけ自意識過剰で俺様なんだって印象になりますし、あまりにも主人公が正確にわかってたら、エスパーかよ!ってツッコミたくなります(※あくまで個人的感想です)。
だから、一人称視点で書ける登場人物の心情描写は少なめになっていきます。
どうしても登場人物の心理描写を入れる場合には、視点を登場人物の一人称に切り替えて話す必要があります。そうなると、主人公側からの視点も挟まなきゃいけなくなって同じシーンを繰り返したり、回想を挟むことになります。そうなると、今している話の時間軸がわかりにくくなったり、主人公視点→他登場人物の回想→主人公視点という手法を繰り返すと物語のワンパターン化を招いて、かつ話が進まない、なんてことにもなったりします。
だから、一人称視点で他登場人物の視点を主眼にした話を書く時は、主人公に好印象を持つきっかけであるとか、ここは語らないと読み手に伝わらないとか、目的をもって切り札的に書くことを心掛けたほうがいいのかな、と個人的に思いました。
三人称視点について。
物語に出てくる人物の特に誰とは視点を定めずに書いていく形式です。全体を俯瞰的に見れるように物語の視点を置いたり、場面によっては主人公だったり、キーマンとなる人物にフォーカスを当てたりします。それも形式によって分類が分かれるのですが、ここではその説明は省きます。で、例えるならTPSですね(異論は認める)。
メリットは、主人公の関与していない場面も書きやすい点です。一人称だと主人公が見た景色、気づいたこと、聞いたこと、知っていることしか書けないというデメリットがありますが、反対に三人称だと書くことができます。
例えば、戦記物で他国から攻め込まれる場面があったとして、一人称視点では主人公側の捉え方なので敵国の行動が突発的なように映りますが、三人称視点では敵国の事情や背景、攻めてくる思惑を描けるので突発的ではなく計画的であったことを描けます。つまり、事象がなぜ起きたのか、という理由を説明しやすいんです。
じゃあ、三人称視点のデメリットは何かというと、主人公の心情描写が薄れやすく、読み手も主人公に共感しにくい、ということです。一人称視点では地の文を書く時に主人公の考え方、捉え方が反映されるので主人公の人となりが見えやすいです。三人称の地の文では事象のみを書きがちになるので、主人公の心情描写を明確に入れないと、主人公が何考えてるのか伝わらないまま場面だけが進んでいく、なんてこともあります。
あと、複数の視点から描ける三人称視点は、セリフを入れたときに誰が話したのか、ということがわからなくなりがちです。特に同じ場面で3人以上、会話したときがそうですね。
自分は現在戦記物を書いていますが、同じ場面で5人以上話すなんてことをよくやるので、「~が言った」、「~が話した」、「~が~な表情を浮かべた」、などセリフの前後でこのような描写を入れて、誰が言ったのかわかるように書くようにしています。その分、地の文の書き方がワンパターン化してしまうのが頭の痛いところですね。
と、このように視点ごとのメリットデメリットについて、ざっと書き出してみました。それぞれデメリットはありますが、メリットに変えたり、メリットを生かすこともできます。
一人称であれば、主人公視点から登場人物の心情を推測するなら、主人公が登場人物の心情をあえてずれた受け止め方をして、登場人物とすれ違いを起こさせて、トラブルを描くとか。
三人称視点なら複数の視点の心情描写を描けることを生かして同じ場面で両方の心理描写を書くことによって、互いの駆け引き具合を神視点で楽しめるよう演出したりとか。
どちらも書きやすさは、自分の書きたい小説の傾向によって変わってくると思います。成長ものであれば、主人公の心情描写が書けた方が伝わりやすいので一人称にしたり、群像劇なので視点や場面がよく切り替わるなんて場合は三人称の方が書きやすいと思います。
一方で、それぞれのメリットデメリットを理解した上で、あえて伝わりにくい手法で工夫する、というのも小説家としての腕が鍛えられるので、選択肢として面白いんじゃないでしょうか。
……と、語ってはみましたが、そんなテクニックあふれる小説を自分も書いてみたいものです(ため息)。
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