3章 この世界は馬鹿ばかり 〜その8〜


「勇者が何も出来なくて、本当に悪かった。そして、呪剣の時もありがとう」


こちらこそ、ありがとう。マーク。


「誰も見てないから、泣いてもいいんだぞ?」


....いや、魔王とか見てるし....でも......


正直泣きたいよ。


『早く行け!』


「....じゃあ」


そう言って、手を出して来た。


「握手だ!絶対に忘れない!」


俺は力強く握った。


そして、マークも消えた。


俺だけだな。


友達がこれで0人か....


いや、待てよ?


『友達になって下さい。魔王さん、アルナさん』


「....友達?何それ......」


「魔王と友達になるとか、君も馬鹿なんだな」


馬鹿だってなんだっていい!友達がいない事実を消してやる!俺の記憶がなかったとしても!


「なる!友達ってわかんないけど」


「....私も別に構わん」


これでいい。俺は、友達がいる!


それを忘れない!


「友達になった仲だ。君に1つだけ言っておこう」


....何だ?


「この魔法は不完全だ。何かがあれば、記憶を戻せたりするかもな」


....それを忘れるってのに、何言ってんだか....


『ありがとうございました』


そう言って、俺は魔法陣の中に入った。


....よく考えたら、また転移するようなもんか。


友達を作ってくれよ?俺。






『——魔王もやってくれたね......まぁ、面白いからいいか——』






....本当に、異世界に....来ちゃったんだ......


俺は目が覚めて、周りの光景を見てすぐに思った。


記憶が残っていて、体も変化なし....異世界転移って感じか。


ここは宿屋みたいな所だな。


服は俺の想像通りで異世界風のカッコいい服になっている。


バッグは左手に持っていたバッグと違って中に紙やバインダーがある。


わかっているな、神!俺の奥義を使えるようにしてくれたんだな!


まぁ、これは最終手段だけど....






外を見てみるか....


俺は外がどうなっているか見てみたくなって行ってみた。


受付は、ジェスチャーで何とか出来た。


ドアを開けて外を見てみた。


本当に異世界に来た事を感じさせる光景だった。


所々、俺の想像通りだったりするが....文明が似ているだけか?


今日泊まれるお金を稼ぐ事から始めないと....


「....いた!影人さん!」


ん?誰か俺の名前を呼んだ?


....ありえないな。そもそも、漢字使う名前がありえないだろ....


「影人さん!影人さんだ......」


は?何この可愛い人....


「影人さん、やっぱり覚えてないですか?」


....いきなり変な事言って、何なんだ?


「では....」


そう言って、何故か俺の手に触れて来た。


家族ぐらいしか、俺の手に触らないからちょっとドキッとした。


ってか、何で俺の手を——






....え?


何で....覚えているんだ?


この人は....那美子さん。


絶対にそうだ。


覚えている。というか、何故か思い出した。


全てを。


俺はすぐに紙を取り出した。

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