3章 この世界は馬鹿ばかり 〜その7〜


友達をなくして世界を平和にするか、たくさんの友達とこの世界で楽しく過ごすか....


....そんなの決められない。決めたくない。


これは、ただの我儘だ。


勇者が....別の世界の人が記憶を消されてもいいって言っているんだぞ?


俺だって....言わなきゃいけないのに。


ただ、文字で書いていていいのか?


俺も踏み出さなきゃいけないんだろ?


記憶をなくしたら話せない。


でも、言葉を口に出したじゃないか。


ただそれだけの事が俺には、出来ないのか?


出来るだろ!俺!


やってみせろよ!俺が成長した所を見せるんだ!






「記憶を消して下さい」


言った....


「....聞き間違いじゃなかったのね。このイケボ」


ミラ?別に俺はイケボじゃないし....


「....始めるぞ......」


そう言うと、変な呪文を唱えた。


あの転移の時と同じ感じだ....


「勇者、お前は宿屋で起きるようにしてある」


じゃあ、俺も宿屋で....って、記憶がなくなるから、関係ないんだよな。


「この魔法陣に入れば、全て終わりだ」


....終わるのか......


「じゃんけんで入る順番を決めるわよ!」


何言ってんの?....馬鹿だな、やっぱり......






俺はじゃんけんで勝った。つまり、1番最後だ。


....こういう時は、運良いんだな。


「何で最初....」


サナ、前も負けてたよな。


「....私に生きる意味を教えてくれて、ありがとう。影人」


ありがとう....


そう言って、サナは魔法陣の中へと、消えてった。


「....私ですね、次は」


次は黄泉子さんか。


「あの時、助けてくれなかったら私、死んでたかもしれなかったです。助けてくれて、ありがとうございました。私も影人さんの事、好きですよ?」


....え?ちょっと待....


そう言って、魔法陣の中に入った。


冗談を言って、消えるなんて....


「俺だな、次は」


ザックさん。変な事言わないで下さいよ!


「俺って、記憶が変わったら男好きじゃなくなってるかも....」


「いいから!早く入りなさい!」


ミルさんが怒鳴って言った。


「....好きだ!影人!じゃあな!」


本当にやめて下さいよ....


そして、ザックさんは消えた。


「....私ですね?」


タミハ....


「あの時サナが助けてくれて、影人さんが私を救ってくれて、本当に嬉しかったです。ありがとうございました!大好きです!」


....前と比べて、元気になって良かった。


タミハも消えた。


「私か....」


ミラ、元気ないな....


「....影人......忘れないよね?」


俺は頷いた。


「皆、泣くのを我慢してたけど、私はもう....無理——」


「泣いたらダメよ。ミラ。泣いたら忘れるのが、悲しくなるだけ。泣かなければ、忘れないって!大丈夫だって....」


泣きそうじゃん....ミルさん....


「....わかった。もう泣かないよ」


ミラ....成長したんだな。


「大好きな人を忘れたりしないんだから!」


そう言って、ミラも消えた。


「....私も行きます。ありがとうございました。影人さん。私も大好きですよ?」


ミルさんも消えた。


馬鹿が多いよ。本当に......


「....影人さん。私は....」


那美子さん....


「私は絶対に忘れないです。影人さんを戻しに行きますから」


そう言って、那美子さんも消えた。


....戻しに行くなんて、出来ないじゃないか。


「私も、すぐに行きますよ....」


チヒラさん、強がって....


「影人さんの事、私も好きですから」


え?....黄泉子さんといい、冗談を何回も....


「冗談じゃないからね、覚えておいてよ」


そう言って、チヒラさんも消えた。


「次は私か」


ガルさん....


「マーリンを忘れはしない。絶対に!」


「私もガルを忘れない!」


2人で走って魔法陣に飛び込んだ。


後は、マークと俺だけ。


「....僕達だけか」

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