3章 この世界は馬鹿ばかり 〜その5〜






「話を聞け!アルナ!」


....俺は、言った。


言えた....


一気に力が抜けて、透明化も切れた。


魔王が一瞬で小さくなり、人型になった。


そして、地面に倒れた。


....何で、全裸の女になるんだよ!


俺は、布を創造し、色々隠した。


「え....戻ったの?」


....わからないですよ、ミルさん。


「何故だ!何で戻す事が出来たんだ!お——」


「黙ろうか、マウスト?って言う魔物」


あ、見つけたんだ。ガルさん....


ガルさんがマウストの口を封じた。


「私の店の紐で縛って、魔法は使えないし、生きてるだけでも感謝して欲しいわ」


マーリンさん、色々売っていたんだな。よく見てなかったから、わからなかったよ。


「....う......ん?に....人間!?」


魔王が起きたみたいだ。


子供みたいな体型で....文字ぐらい、わかるよな?


『話を聞いてください、アルナさん』


「あ....そうだ!お父さんは......」


アルナさんは周りを見渡す。お父さんなんて、いないのに。


『お父さんは、死んだのです。そして、殺したのは人間ではありません。マウストって言う魔物が毒を仕込んで殺したのです』


「お父さん....やっぱり......」


そして、泣き始めた。


「うわぁ〜ん!うわぁ〜ん!」


え....どうすればいいの?






少し時間が経って、泣き止んだアルナさんはまた話し始めた。


「....私を殺さないの?」


『殺しません。私達は魔物と共存をする為、魔王を元に戻しに来ました』


「そうだったんだ。....マウストを私は殺し——」


『それはダメです』


復讐したって、意味がないんだ....


「何で....私の事に首を突っ込むの?」


『お父さんは、復讐を望んでいないと思います』


「....じゃあ、私を殺して!」


何で、死にたいってすぐ思うんだよ!


まぁ、俺もやる事がなくなって自殺しそうになった。


でも俺の時は、母さんが助けてくれた。


今度は、俺が助ける側に回るんだ。


『何も戻らないけど、私達も魔物にたくさん人が殺されました。私達も色々失いました』


こんなの、助けじゃないけど、死ぬよりよっぽどマシだ。


『生きてください。そして、謝って罪を償って下さい』


「....魔物に殺された人を生き返らせればいいんでしょ?」


え?....え?


『そんな事が出来るんですか?』


「あぁ....魔物には、効かない魔法だけど」


....出来るかもしれない。


俺は考えた。魔物には効かない....


『サナ、真似ってそっくりそのまま真似るのか?』


「いきなり....貴方の思っている事、妻の私は——」


出来ると言う事で、いいんだな!






サナのオリジナル魔法は、真似。


魔物と人間は、種族を分けて考える。


真似=鏡として考えていく。


魔物と同じ事をしている人間。


これを鏡のように考えて、魔物がやっている事は、人間でも出来るはずだと考えた。


要は、アルナさんの魔法は人間にしか使えない。同じ種族には使えないと言う事だ。


サナが真似したら、人間には使えないが、魔物に使えるという可能性を感じた。


でも....


「多分、大量の魔力、体力の消耗があると思う。その時は、私にキスを....」


いや、しないけど?


まぁ、冗談が言えるくらいだ。大丈夫だろ。


「....本当にお父さんは、助かるの?」


『わからない、やってみなきゃ』


俺がやるわけじゃないんだけどね?


....頼んだぞ、サナ。


アルナさんが魔法を使ったのを真似して、サナは目が青くなった。


魔王のお父さんの息の音が聞こえた。


「....キス......」


サナが倒れた。


冗談言って、倒れんな!


....良かった。気絶してるだけだ。


「....お父さん!お父さん!」


泣きながらアルナさんはお父さんに抱きついた。息の音が聞こえたんだと思う。


....可愛い魔王だな。

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