3章 この世界は馬鹿ばかり 〜その4〜






魔王の姿は、ドラゴンのような形をしていて大きい。


とにかく大きい。


「....さて、どうしようか」


ガルさん、作戦立ててないの?


まぁ、俺も人任せだけど。


「とりあえず、マウストって奴を探すのと、魔王を惹き付ける人達で別れましょう!」


タミハは作戦を立てていたのか?


....って、魔王がこっちを見てる!


「ニンゲン、コロス!」


魔王って、あんな感じなのに喋れるのな。


って、やばい!こっちに来る!


魔王が近づいて来た。大きいので、遅いけど。


「私は影人と一緒に....」


そんな事言ってる場合か!サナが言ったら....


「もちろん、私も一緒に行きますよ?」


ほら、タミハも....


「ちょっと!私も一緒だからね!影人!」


ミラも....


「危ない!影——」


魔王が俺に近づいていたのか......


気付かないなんて....馬鹿だな、俺。


ミルさんが言う前に、俺は魔王に攻撃され、気絶した。


影で、守られているはずなのに....






『....3回目って、相当運があるね、貴方』


ダミ声神か。


....どうすれば、魔王は元に戻るんだ?


『....貴方は無理だけど、魔王の耳元で、話を聞け!アルナ!って言えば戻るよ』


....魔王の名前がアルナって言うのか。


あと2つ....


他の世界の人を殺す以外の元の世界に帰る方法を教えてくれ。


『それは....無理に近いけど。本当に聞くの?』


....聞かないって選択肢を選ぶわけないだろ。


『....転生すれば良いんだよ。貴方の世界に。確率は物凄く低いけどね。だって、転移でも確率は低いんだからね?』


そうか....どの道、無理なのかよ。


最後の質問だ......俺は——






....ありがとう、ダミ声神。


『その呼び方....まぁ、いいや、頑張ってね——』






「....影人!影人!」


ミラ?....今、どういう状況だ?


目を開けると、俺はザックさんにおんぶされてる。


屈辱だ....


「影人!起きたのね!今、魔王を惹きつけて....」


周りを見ると、部屋がボロボロになっている。


俺が気絶してる間に結構頑張ってくれたんだな。


俺も、気絶しているだけのお荷物じゃないって事を教えてやるよ!


ザックさんのおんぶを無理矢理脱出して、魔王の方へ俺は走った。


「....何やってるの!貴方!」


サナ、そんな大声出せるの?


「また、死にたいんですか!?」


別に死んでないよ?タミハ....


俺は、靴で跳んで、魔王の耳元の近くまで透明化で近づいた。


後は....


「は——」


『喋ると殺すぞ』


う....思い出す......


結局、話せないのか?


俺は言った事に責任が持てない人間でいいのか?


助けるって、守るって、言ったんだ。


世界を変えるんだ。


世界を変えるのに、俺すら変えられないのか?


....いや、神が言ったんだ。






——俺は、話せるようになれるのか?


『....貴方が一歩、踏み出せば良いんだよ——』






俺は、一度でいい。


今だけ、一言だけ、話せればいい。


大丈夫、死ぬわけじゃない。口を開けばいいだけだ。


声を出せばいいだけだ。


「は....な......」


『喋ると殺すぞ』


....うるさい!俺はもう立ち止まるわけにはいかない!

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