3章 この世界は馬鹿ばかり

3章 この世界は馬鹿ばかり 〜その1〜






「——まだ、勇者は来ないのか!早く魔王を倒してくれよ!」


「俺が——」






俺達は魔王の城まで、勝手に命名した自動歩行靴を使い、向かっている。


「....久しぶりだわ。この靴使うの....」


「私もだけど....」


ミラとミルさんは靴を使った事があるけど、他の人は....


「....何でも出来るんだね、影人は」


ガルさん....何でも出来るわけではないです。


「....僕と影人とガルさん、一応ザックさん含めて男4人に対して、女は8人......」


「アルゼロスを誘ったんだけど、忙しいらしくてね....アランは、いつも忙しいし......」


無理に呼ぶ必要はないかな。俺が色々やるわけだし。


「俺を一応って....どういう事だ!マーク!一夜を過ごした仲だろ?」


「....最悪でしたよ!ザックさんが男好きだったとは......」


....男なら、何でも良いのか?


「....この影って、本当に万能ですね......」


「確か、刺激を受けると硬くなるって....」


....変な意味に聞こえるよ?チヒラさん。


皆に、俺の影で作った防具のようなものをあげた。


これで、攻撃を受けてもある程度は防いでくれるだろう。


「....私が影人の隣で歩く」


「では、私は逆の隣に....」


うるさい....


「....お姉ちゃん。あの人達、抜け駆けしてるわ......」


「行くわよ、ミラ。影人さんの隣、争奪戦!」


....マジで騒がしくなったな......


「待って下さい....」


那美子さんまで......


でも、今は楽しい。騒がしくなったこの今が。


「そろそろ、城が見えてくる頃だけど....」


マーリンさんが呟くと、王城の何倍かわからないぐらい大きな城が見えてきた。


「....国王の情報によると、魔王城は魔力が半分以下になるらしい」


俺の能力は魔法じゃないから、関係ないな。


そういえば、勇者のオリジナル魔法って何なんだ?


『マークのオリジナル魔法を知りたい』


「....僕のオリジナル魔法は、大した事ないよ。聖剣を生み出す魔法と、何でも魔法が使える魔法だけど、僕は魔物を倒したくないから必要ないんだよね」


....貧弱勇者!強いじゃないか!大した事あるじゃないか!


『ありがとう、マーク』






そして、魔王城の入り口に到着した。


魔王の刺客的な魔物がいるわけでもなく、誰もいない。


「....開けるよ?」


マークが扉を開けた。


「....は?」


中を見ると、よくわからない光景が目に入った。


「ようこそ!勇者様御一行、魔王城へ!」


魔物がそう言って、中はパーティー会場のようになっていた。


....テーマパークか何かなの?


「どういう事なの?」


マーリンさんが疑問に思っている。まぁ、皆が疑問に思う事だ。


「....特殊の魔物が多い」


ガルさんの言っているとおり、人型で話せる魔物が多い。


....これが、罠なのはわかってる。でも、こんなに豪勢な飾り付けをする必要があるのか?


疑問に思っていると、魔物が話し始めた。


「ここでは、様々な強化魔法をかけた料理で、魔王戦に備えて欲しいのです」


そう言うと、魔物が指を鳴らし、後ろから料理が運ばれてきた。


「....罠ね。毒とか入っているかもしれないわ」


いや、マーリンさん。皆、食べるわけ......


正直美味しそう。


「美味しそうだわ!影人!」


ほら、子供がつられそうになってる。


「....無視すれば良いでしょ」


チヒラさん。そう言って、料理に手を伸ばそうとしてますよね?


「......私の料理より....美味しそう....影人さん?」


何で俺の方見てくるの?別に、那美子さんの料理は美味しいからね!


「皆!食べないなら、俺が食べるからな!」


何で?


マークが料理を食べようとした。


「待って下さい!罠なのはわかっていますか?」


タミハが止めてくれた。


「私が味見を....」


馬鹿じゃん!罠だってわかってんのに、味見とか....


「ミラ!ここにミラの好きな甘そうなカレーが....」


もうダメだ。ミルさんもダメになったじゃん。


後は....


「....そろそろ、行きません?」


黄泉子さん!まともな人が残っていた!


「....いただきます!」


まともじゃない!おかしくなってるよ!


「俺は、遠慮する....」


ザックさん!変人がまともになっていて、逆におかしい。


「朝にお腹壊して....」


魔王戦だってのに、何してんの?


「....影人、あーん」


食べないよ!サナ!


俺は、ガルさんとマーリンさんぐらいしかまともな人がいないと、今思った。


「....おい、魔物。これに、毒などは入っていないか?」


ガルさん、入っていても入ってないって言うでしょ!


「入ってないですよ?」


ほら、だから......


「なら、食べてもいいな」


簡単に信じ過ぎだ!何でだよ!


「....残っているのは、私と影人さんだけ......」


いや、ザックさんは?


というか、俺は....


『食べませんよ?普通に考えて』


「でも、よく考えて。魔物達が魔王を倒して欲しいから、こんな事をやっているのかも....」


....食べたいなら、食べたいって言え!


俺は、魔物に直接聞いてやる!

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