2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その19〜
『俺が話せなくなったのは——』
——まだ、5歳の時だった。
俺は、母さんに黙って母さんのプレゼントを買いに行った。
「....何がいいかな?」
その時は色々なものを見て、何が良いか考えたりして、楽しかった。
その時は。
「....え?」
俺は、その時何が起こったのかわからなかった。
腕を掴まれ、誰かが刃物を俺の顔に突きつけた。
「....おい!警察!来たら、こいつを殺すぞ!」
いきなりでわからなかった。でも、刃物を見て泣きそうになった。
「....うわ——」
「おい、喋ると殺すぞ」
刃物を顔にもっと近づけた。
俺は、声が出せなくなった。
ずっと、心の中で叫んでた。
怖かった。声を出した時、どうなってしまうのか、想像してしまった。
でも、少し時間が経ってから、警察が拳銃で弾を手に当て、俺は逃げる事が出来た。
血は、赤色の服だったので、あまり目立つ事がなかった。
普通は、警察に保護されるんだろうが、俺は逃げた。
もう、人と話せない....
そう勝手に思って。
親とかには、病気と判断されないように、過ごしてきた。
家なら、安心出来ると。
独り言なら話せると。
でも、それはただ殻にこもっているだけだって、わかっている。
本当は、人と話す事が出来るって、わかってる。
....ただ、怖いだけじゃない。声を出そうとすると、あの声が聞こえてくるんだ。
もう、いないとわかっていても。
『——という事です』
「....無理に話す必要はないんじゃない?」
....そう言うと思っていた。優しいな、皆。
「....って事はさ、私と家族になれば話せると言う事じゃない?」
いや、そういう事じゃない。
「....ちょっと待った!私が影人さんとお話をします!」
タミハ?聞いてたのか?
「....皆、ドアの前で聞いてた」
サナが言うと、皆出てきた。
....少し、恥ずかしいな。こんな理由で話せないって知られたら。
「....悲しい話だ!」
ザックさん....
「影人、そんな事情が....」
ガルさん....
「僕は、君の事を何も知らなかったよ....」
マークさん....
「まぁ、これでスッキリしたんじゃない?」
マーリンさん....
「....早く、それを言いなさいよ」
チヒラさん....
「......話せなくても良い人じゃん、影人さんは」
黄泉子さん....
「話せなくても、大好きですよ?」
タミハ....おい。
「....私と結婚しても、話せない?」
いや、サナ?
「....家族になればいいんだね!影人!」
....ミラ、待て!
「影人さんの子供の名前....」
待ってくれ!ミルさん!
「影人さんとの老後について......」
意味がわからないよ!那美子さん!
『何で、最初はいい感じに慰めてたのに、後半おかしくなってるの?』
「顔色、良くなっているよ?」
話題変えるな!って....え?
「....死んでた顔が生き返ってる」
いや、顔色悪い俺を馬鹿にしてたの?
「....これなら、明日行けそうだね」
....皆、ありがとう。
俺は今日、気持ち良く寝れそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます