2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その16〜


「そう....でも、貴方は自分の能力のおかげだと思ってる」


....そうだよ。俺の力なんかじゃ....


「貴方は、能力に頼ってると思ってる」


そうだよ!俺はズルいんだ!


「それを違うとは言わない。でも、それでも貴方と知り合えた私は嬉しい」


....笑顔。


笑っていた時に見れなかった、あの笑顔。


俺は、初めてサナの笑顔を見た。


「貴方が能力を持っていなくても....影人は友達を必ず、作っていた」


そんな事....


「能力を持っているのが、貴方なんだから、それを受け止めて」


俺は......


「だから、結婚して」


『しないから!』


....ありがとう、サナ。


俺は、能力に頼ってる。そんな俺で、良いと言ってくれた。


「....また、振られた......」


馬鹿だな、俺も。






飯を食べ終わって、宿に着いた。今度はサナとタミハをガルさん達と同じ宿にさせた。


俺は、1人で違う宿に行った。


ゆっくり出来る。そう思っていた......






「——あれ、影人じゃない?」


「あの服....間違いないね、影人さんだ!」


....なんか、聞いた事ある声が聞こえた気がするが、幻聴だな。いるわけない。


疲れているな....早く、寝よう......


「無視すんな!」


俺が宿屋のドアを開けようとしたら、後ろから怒鳴ってきた。


何で、ミラ達がここにいるんだよ!


マーリンさんがいるからガルさん達はすぐに来れたけど、貴方達は無理だろ!


って....変な男がいる......


「初めまして、俺はミルの知り合いのザックだ」


....この人が、瞬間移動のようなオリジナル魔法を持っているのか?


前からずっと思ってたけど、この世界の10%しか使えないはずのオリジナル魔法を覚えている人が多過ぎない?


『おやすみなさい』


俺は、宿に逃げ込もうとしたが....


「もう、逃がさないわよ....影人、あの手紙について、話して貰おうかしら?」


ミラが、怒ってる......


俺が1人で宿に泊まりたいという願いは、叶わなかった。






『全て話しました。許して下さい』


「嫌です。影人さんは人の気持ちを知らな過ぎです」


俺はミルさん達の予約した部屋で、正座をさせられている。それも、2時間程。


土下座はないのに、何で正座は教えてんだよ!国王!


「すぐ帰るって言って....嘘ついて......」


『そろそろ、寝ても良いですか?』


「ダメ....って、もうこんな時間ですか。....良いでしょう」


やった!


「私達も連れて行くんだったら」


....やっば!


『何考えているんですか!危険なんですよ?』


「嫌です!もう、影人さんを1人にしちゃいけないと、わかりましたから」


え....俺の信用がないのか?


「そうよ!私だって....心配したんだから......」


いや、手紙出したじゃん!


「あの....私とザック君は関係な——」


「俺は、君に一目惚れした!影人!結婚してくれ!」


....は?何だ?この人....


「邪魔です!ホモザック!私は、影人さんと話を....」


「俺がいなかったら、ここに来れなかったんだぞ?少しは、影人と話したい....」


「あの....あの......」


ホモ....マジかよ......


「話を聞いてください!」


....へ?那美子さん?


大声で話を止めたのは、確かに那美子さんだった。


「私は....行く必要ないですよね?」


....戻った。


「....ダメよ?那美子。貴方も影人さんと一緒に寝た仲間でしょ?」


「え....あれは....違....」


顔が赤くなっている。....ちょっと可愛い。


「という事で、私達も一緒に行くから」


....何言っても、ついてきそうだな......


『わかりました。今日は、寝かせて下さい』


人が多過ぎだ....


「嫌!私も一緒に寝る!」


馬鹿がいたわ......


「ちょっとミラ?耳貸して?」


....?俺に聞こえないように話している。


「....そういう事ね!わかったわ。おやすみなさい!影人!」


....何だ?元気になって......


まぁ、いいや。寝よう....


俺は、この部屋から出て自分の部屋に向かった。

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