2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その15〜


「私の生きる意味を教えてくれた....影人と結婚したいです」


馬鹿野郎!何で感動エピソードをぶっ壊して変な事言ってんだよ!


「いいよ」


良くねーよ!国王!何、勝手に言ってんだよ!


「....ダメです!」


そうだ!言ってやれ、タミハ!


「私と結婚するんです!」


しないよ!何でそういう事になってんだよ!意味がわからない......


「....で、どうなんだ?影人」


馬鹿野郎共!俺が求めているのは......


『俺が求めているのは、友達だ!友達以上は望んでいない!』


「......」


え?何で皆、黙ってるの?俺は変な事言ってないぞ....


「貴方も馬鹿ね。本当に」


チヒラさんが、何か言ってる。


俺が馬鹿....だと?何故だ......


「そういう所、良くないですよ?」


黄泉子さんまで....


何で皆、笑ってるんだ?


「....貴方は、そういう人だった」


「でも、どんどんアタックしていけばいつか....」


....俺が、おかしいの?






とりあえず、国王との話は終わった。


今は、魔王の城へ行く準備をしている。行くのは明日で、近くの村までマーリンさんに瞬間移動で行く予定だ。


「何で、僕達は買い出しなんだ......」


「男女で分けてじゃんけんで負けたのは、影人だ」


だって、サナとタミハがうるさいから、逃げたくて......


『すみませんでした』


「まぁ、じゃんけんは誰がやっても関係ないよな」


....ガルさん。優しい!






「——影人と一緒が良かった....」


「サナ、私達はやる事がないけど、影人の為に何か出来るかもしれないよ?」


「....考えよう——」






「——マーリンさん、アルゼロスさんを無理矢理連れてくるって言ってたけど、大丈夫かな....」


「大丈夫だと思う。それより、暇なんだけど」


「男達に買い出し行かせたから....そうですね——」






「——着いたね。王都に」


「本当に王都に....」


「やっぱり私は来る必要なかったんじゃ....」


「いや、俺も意味わからないで来てるんだから」


「いいじゃん、男好きなんでしょ?」


「....早く、行くぞ——」






とりあえず、携帯食とか雑貨とか色々買った。


夜ご飯を、今は食べている。皆で集まって、宴会みたいになっている。


アルゼロスさんは、マーリンさんが呼んだけど来れないらしい。


「....影人、これ」


そう言うと、指輪を渡してきた。


....また馬鹿な事を....普通、あげる人逆だろ。


『馬鹿な事やってないで、飯を食え』


「....本気なのに」


俺は友達の方が気楽で良いんだ。まだ....


「友達がいなかった貴方は今、この光景を見てどう思う?」


いきなり、サナは言った。


俺の疑問を....


こんなに元の世界では、俺に優しくなかった。


俺は能力を持ってから何かが変わった。


ズルいんだ、俺は。能力を使って助けるとか言ってるけど、俺の力じゃない。


ただ、能力に任せているだけだ。


友達をこんなに簡単に作れたのは、俺の力なんかじゃない。


俺の事を好きになってくれたのも、能力があるだけなんだ。


能力がなかったら、この世界で魔物に殺されて終わっていたんだ。


....俺の力じゃない、皆。


俺が見ている世界は、ズルい俺が生んだ世界だ。


それでも、俺がこの能力で......


『こんな楽しい世界になったら、良いと思う』

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