2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その14〜






「やっぱり、城の飯はうまいな!」


「ちょっと!ガル!食べ方が汚い!」


朝ご飯を食べている最中だった。


....俺達がいない間にたくさん食べていたようだな。


「....貴方、やっと来た」


「話が長かったんですね?」


....静かに飯は食べられないようだ。


「貴方の席は、ここ」


何で、指定されるんだよ。


「ちょっと待った!影人さんは私の隣で....」


腕を掴まれた。


嫌だ!1人で食べたい....あの端の席に......


俺は、走って席を確保した。


左隣には、チヒラさんがいた。


「....ハーレム状態なんですね、貴方」


『違いますから!ただの友達ですから!』


いきなり変な事言わないで下さいよ!何なんだ?この人....


「ガルから聞いた通り、魔力がないのね」


....魔力感知だっけ?オリジナル魔法じゃないのか?


『そうで——』


「....あーん」


紙を見せる前に何故か、料理を俺の口元に持ってきた。


....食べていいのか?


「ちょっと!サナ、あれを見て!」


「....浮気発見」


浮気じゃないだろ!何で結婚した事になってるんだよ!


「面白いですね、あの子達」


フォークを戻してくれた。


『チヒラさんも、変な人じゃないですか?』


「....そうかな?」


自覚してないのか....


「....あーん」


サナが料理を近づけて来た。


なので、食べた。


「ずるい!サナ!」


「早い者勝ち」


いや、何がだよ。


「私もやる!」


「....あ、あーん」


何故か恥ずかしがっている。


俺は、こんな事をやられた事がなかったので、恥ずかしがる意味がわからなかった。


....美味しい。


「....美味しい?」


『美味しい。ありがとう』


「やった....」


え?顔が赤くなってる....何でだ?


「....ハーレムじゃん。やっぱり」


それは、違うから!チヒラさん!






朝ご飯を食べ終わり、再び国王の所に来た。


「....では、話を聞こう」


今度は、皆がいる。皆の前で、言うんだ。


『仕事を持たない人、奴隷、家族による暴力、虐待を受けている人など含めた、お金のない人達に仕事を与えたり、無償の教育施設を作ったり、安い宿の設置などで平等な人間関係を作りたいんです』


これが、俺のやりたい事だ!


「....仕事を与えたりは出来る、無償で教育は、教師をやってくれる人が問題だ。安い宿も冒険者とかでいっぱいになる可能性もある」


色々な問題があるけど、俺がやりたいのは....


『最低でも、奴隷と家族の暴力、虐待をなくして欲しいのです』


ミラやミルさん、タミハのような人を作ってはいけない。絶対に。


「......家族の問題は、少し難しいかもしれないが、新しい法を制定する事にしよう」


....出来るという事で、良いのか?


「法については、原案の作成をした後、別の国との審議の結果で、作られる。少し時間がかかるが、影人の頼みだ。魔王を何とかしてくれる代わりにやっておこう」


....これで、終わりではないんだ。


『もう1つ、お願いがあります』


俺は、サナが言った方が良いと思った。


『サナ、自分の口で説明する?』


「....うん」


俺は、大丈夫だと信じている。サナなら....


「....話せ」


「......私の家族は、魔法研究の実験台として、王都の魔法研究所に連れて行かれました——






「——大丈夫。すぐに帰ってくるから」


「帰って来たら、美味しいご飯作るから、待っててね」


家族の最後の言葉は、嘘でした。


私は全てを失って、復讐を考えていました。


だけど、復讐を止めてくれました。


復讐以外の私のやるべき事は、私のような人がいない世界を作る事。


私は、魔法研究の実験で人を巻き込む実験をやめて欲しいです!」


「....」


国王は少し黙り込んでから、口を開けた。


「言いたい事はわかった」


国王は、続けて口にした。


「実験には、失敗が必ずあるものだ。失ったものは取り戻せないし、君には悲しい思いをさせた。....他人を巻き込む実験をするのは、やめさせよう。すまなかった」


「....ありがとうございます」


サナは、泣きそうになりながらも話した。


「あと、もう1つ」


「....何だ?」


ん?聞いてないぞ?1つじゃなかったのか?

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