2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その11〜






何だ?この状況....


起きたら、タミハさんが俺の隣で寝ていた。


....いや、おかしいだろ。俺は、何もしてないからな!


「......もう、朝ですか?」


違うわ!全然朝じゃない!1時間くらいしか経ってないから!


その瞬間、ドアが開いて......


「....何、してるの?」


え....サナ......?何で、ここへ?


鍵を閉めたはず....


「....サナ。影人さんの初めては私が貰った!」


いきなり、何言ってんの?俺は、何もしてない!本当に!


「....貴方、本当なの?」


怖い!顔が......


「冗談だよ。そんなの....って、何で私に近づいて......」


サナは、タミハにこちょこちょし始めた。


....俺は、何も見てない。


「....あは....やめ......漏れちゃう!......待って!」


そろそろ、止めないとやばそうだ。


俺は、サナの手を掴んだ。


「....交代?」


違う!馬鹿な事するのをやめなさいよ!


....タミハさんが泣き目じゃん。


『そろそろ、何で俺のベッドに入ってたのか、教えてくれないか?』


「あ....それは......その....」


「タミハも貴方が好きだから」


....は?何だって?


俺は、タミハさんに何にもしてないぞ?


『俺を好きになる要素なんてないだろ』


「....好きなタイプが影人さんみたいな人だからです!」


いや、お金を渡しただけだよ?


....全て冗談でした、で済んで欲しい....


「カッコいいし....優しいし......それに....」


やめて!恥ずかしい!


「....私は、貴方の良い所を......」


『頼む!やめて!』


何か話題を変えなくては....


そういえば......


『サナは何でここに?』


「....鍵が開いてたから、夜這——」


『馬鹿ですね』


どっかの誰かと一緒だな!


俺も鍵のかけ忘れとか馬鹿過ぎる....


「....私の事、話さなくても良いんですか?」


え....何?いきなり......


『無理に話す必要ないですよ。というか、寝ないの?』


「....ありがとうございます。本当に......」


そう言うと、泣いた....


どうしよう。


「....抱きしめるの。普通は」


いや、嫌だけど。


「....私を」


馬鹿だわ....マジで。






すぐに泣き止んだ。そして、話を始めた。


「....私は、話を聞いて欲しいです。お願いします」


『わかりました』


「....私は貴方がいない時に聞いたから、寝る」


そう言うと、部屋を出て行った。


行動が早過ぎるんだよな....


「....では、話します」






....家族を失ったり、子供に酷い事する親多過ぎない?


この世界の現状は、タミハの話を聞いて俺は思った。


タミハは、親に虐待を受け続けて、今日逃げ出したらしい。


そこで、ぶつかってしまった人と喧嘩しそうになって、サナが助けたという事か。


タミハは、17歳で俺と同い年。だが、俺は20歳と嘘をついているままだ。


....奴隷だけじゃない。生きる場所をなくした人達、様々な事を抱えている人を含めて、助けたい。


こんな事言っても、無責任なんだ、俺は。


別の世界から来て、ヒーローを気取っているだけなのかもしれない。


俺の能力は、友達を作る為にあるだけの無駄な能力。


友達を作る為に能力を使うんだ。友達は、奴隷でも何でもない平等が必要なんだ!


『頑張ったね。俺はこれから、タミハみたいな人をなくせるように国王に話して来る』


「....私も行きたい」


『わかってる。友達だから、一緒に行こう?』


「....彼女としては、ダメなの?」


....だから、そんな事はない!


はっきり言っておく。


俺は、友達を作りたい。それだけだ!


それ以上を望む事はない!


『ダメです。もう、話は終わりましたね?寝ましょう』


「え....いきなり?....まぁ、話は終わったし、スッキリしたからいいです。おやすみなさい」






俺はただ恥ずかしがっているだけなのかもしれない。


ただ、友達以上を望んではいけないと、心の中で暗示してただけなのかもしれない。

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