2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その9〜






外に出た。袋からお金も。


「勇者はベルベストにいたの。とりあえず、そこに行くよ」


マーリンさんが、魔法陣を出した。


これで、瞬間移動するのか。


....だけどまた、気絶したりしないかな?






....目が覚めた。やっぱり、気絶してたわ。


でも、あのダミ声神の所には行かなかったな。色々と、質問したかったんだが......


「影人さん....1回やったんだから、慣れてよ....」


慣れるとかあるの?


「勇者は、あの家にいたわ」


マーリンさんは、指を指した。


豪邸じゃねぇか!何、呑気に暮らしてるんだ!


「....魔王討伐を放棄して、何を......」


「行こう。勇者を戻しに」


いや、俺が戻すんだよ?ガルさん。






ドアを無理矢理開けた。ガルさんが....


怒ってる......


勇者が何してるんだ!って感じなんだろうな。


「おい!勇者が何してるんだ!」


....ガルさん、俺がやるんだよね?話は俺が....


「いきなり、ドアを無理矢理開けるなんて良くないと思うよ?」


そうだな。わかる....


「魔王討伐はどうしたんだ?」


「やらないよ、そんなの。僕は、もう誰の指図も受けないで楽しく暮らしたいんだ」


こんな職務放棄する勇者が、文明を発展させたとは思えないな....


「....この人は、勇者を元に戻す為に来たんです」


俺に振るな!話せないんだぞ?


「....は?君......魔力がない。まさか、君も勇者なのか?」


違うが、少なくとも貴方も今、勇者じゃないと思うよ。


『初めまして。勇者を戻しに来た者です』


「....よくわからないが、僕を戻しに来たというなら、戦おう」


よくわからないが、話が早くて助かるな。


『何処で戦えばいいですか?』


「それなら、転移装置があるからこれで行くよ」


勇者の後ろには、魔法陣のようなものがあった。


....玉座の所にもこんなのがあったな。


「面倒だから、僕と君とエイナとあと1人ね」


エイナっていう人はわからないがとりあえず、1人しかついてこれないと......


「....私はいい。黄泉子は?」


「......ガルさんに任せます」


ガルさん....どうするんだ?


というか、マーリンさんは瞬間移動で行けるのか。


「....行かせてくれ。私がどれほど無力なのか、観なくてはならない」


「決まった?じゃあ、行こうか」


勇者、ガルさん、エイナっていう人が魔法陣に入っていった。


俺は、勇者に勝っても意味がないと思う。


何かが、あるはず......






「....ここは、何だ?」


特に何もない。ただ広いだけの場所。地面は土....


「とりあえず、1対1の何でもありで、降参するか、死ぬか、それで良いよな」


死ぬ?....何でそこまで?


「わかっているよね?僕と戦う覚悟はそれくらいじゃなきゃ....」


まぁ、死なないだろ。


「影人。頼んだぞ」


....やりたくて、やってるわけじゃないんだ。勇者を戻す為に戦うだけ。


「では....始め!」


早くね?始めるのが。


「....君が先に攻撃していいよ」


舐めてる....完全に......


じゃあ、1発殴る....


っていう事はしない。


何故なら、勇者はおかしい。確実に。


「....ふふ」


エイナっていう人がおかしな笑い方をしている。


....多分だが、エイナさんが何かをしているな。


操るオリジナル魔法とか?


....わからないが、勇者よりもエイナさんを......


「来ないのか....じゃあ、僕から行くよ」


やばい、来る!


勇者は、鞘から剣を抜き、俺に斬りかかった。


まぁ、手袋で止めるけど。


「....これで......」


どんどん力が強くなってきている。


オリジナル魔法は何なのか知らないけど、とりあえず戦闘不能にしとこうか。


俺は、剣を折った。


「あ....僕を......折るだと?」


勇者がいきなり変な事を言った。


「は?....呪剣を壊した?」


エイナさんも何か言ってる。


呪剣?まさか......


勇者がいきなり倒れた。


「......あのオリジナル....報告しないと....」


「呪剣....そういう事か。....影人!あいつを倒せ!」


ガルさんも何か言っているが、もう逃げちゃったよ?


『もう、追いつけません』


「あいつ、特殊の魔物だな」


人型だったけど、そんな魔物もいるのか....


『とりあえず、帰りますか』


「....どうやって?」


あ......






「う....ん?......ここは....」


勇者が起きたようだ。そんな事より....


「どうやって帰るんだ?マーリンもいないし、魔法陣も起動しない....」


ずっと悩んでいたら、いつの間にか夜になっていた。


「....それなら、これで......」


勇者がそう言うと、魔法陣が光った。


「帰れる....勇者、ありがとう!」


怒ってた時とまるで違うな....


勇者の話は後にして、俺達は魔法陣の中に入っていった。

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