2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その8〜


こんな人がいる世界じゃダメだと思っているから、国王に話をしたいんだ。


必ず、助ける。


「....私は....タミハ」


『無理に話さなくてもいいよ。もう、大丈夫だから』


「....ありがとうございます......でも、もう帰る所がないんです....」


事情は知らんが、とりあえず俺も約束の時間に間に合わないし......






「——私は、1人と聞いたけど」


『色々あって助けました』


「本当にお人好しだな....」


ガルさんの時は、ほぼ強制だったじゃん!






サナとタミハさんは、別の席で飯を食べている。いくらでも、食っていいって言ったけど....


サナは、食べたよな?


「....そろそろ、本題に移ろう」


空気が重くなった。マーリンさんと黄泉子さんもいるけど、無言になっている。


「....君は、オリジナル魔法を2つ持っている。そうだね?」


『そうですが、もう話の先が見えているので一応言っておきますが、私は勇者ではありません』


「....本当に?では、修業で....」


『はい。修業をずっとして、2つ使えるようになりました』


「嘘だね....。君は、魔法を使えるのかな?」


マーリンさん、鋭い!やめて!


「....影人さん、使える?」


くそ....黄泉子さんまで......


もう、嘘を突き通せないようだ....






全てを話した。もちろん、友達を作りに来た事は言わなかったよ。


「....でも、その力があれば怪我なんてしなかったんじゃ......」


『その時は、使い方がわからなかったんです』


「....勇者じゃなくても、魔王討伐も出来るだろ?その力があれば......」


出来るだろうな、多分。でも....


『俺は、そんな為にこの世界に来たわけではないので』


「....魔物が人をどれだけ苦しめたか、影人は知らないだろう?」


知らない。


皆は失っていて、俺だけ良い思いしているのは、おかしいと何度も思ったよ。


『俺は、魔王を倒す必要がないと思っています。倒すのはただの復讐になります』


「....馬鹿だな!君は!」


「ちょっと....店なんだから、静かに......」


『魔物を倒した分、魔王に謝ります。それで、襲うのをやめさせる。これで、終わりにします』


「そんな夢、叶うはずがないんだ!」


わかっている。でも、魔王を倒した所で魔物がいなくなるとは限らないし、もっと暴れる可能性だってある。


勇者を探そうと思っていたけど、勇者は魔王を倒したらどうするのか、わからない。


俺は....俺が......


『共存できる世界を作ってみせます。俺が、必ず』


ただカッコつけただけなのかもしれない。


この世界に平和なんて訪れないのかもしれない。


ただ、俺が来た。この能力は影の創造。


創造する....俺が望む、平和な世界を。


「....馬鹿だよ、本当に」


「君にその力があるなら....勇者も戻るかもしれないね......」


「....どう言う事ですか?マーリンさん」


何故、黄泉子さんがマーリンさんに疑問を....


「....勇者の所に瞬間移動した。それで、勇者は暮らしていたの。普通に」


「は?どういう事だ....」


「何があったかはわからない....でも、勇者を戻せるのは、君しかいない」


押し付けてるだけじゃね?それに、勇者はもう探す必要ないし....


「....勇者に人が勝つ事はほぼ無理、でも影人さんの能力なら勝てると......」


「勇者を戻せるなら、信じるよ。影人に力を貸す」


....話が勝手に進んでいるが、とりあえず勇者を戻せばいいんだな。


「....瞬間移動で、今から行ってもいいけど......」


マーリンさんは、本当に便利だな....


『行きましょう』


「....私も行く」


サナが話に突っ込んで来た。....やめて欲しい。


「私も....」


タミハさんも?


「1度に瞬間移動出来るのは4人まで。ガル、黄泉子、影人さん、あと....」


『サナとタミハさんは宿で休めばいいよ、俺の予約した部屋にタミハさんが入れば』


「そんな....いいんですか?」


『あ....服とかは、このお金で買ってくれ。サナが何とかしてくれるだろ』


「....私に任せて」


よし、馬鹿がいなくなったな。


「では、外に出ましょう」


待て、皿がたくさんある。


めっちゃ食ってやがる、サナ......


そろそろ、お金なくなるよ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る