2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その6〜


『違います、勇者ではありません』


「お前、名前は?」


『薄井影人です。喋れないので、私は文字で話させて頂きます』


「....じゃあ、影人。何をしにここに?」


『私は、人が平等に生きられるようにする為に、国王に話を』


「....そんな事より、魔物の件で忙しいんだ」


....忙しいだと?長とかに任せて何をしているって言うんだ?


『魔物より、私は平等を優先します。私が——」


「おい....魔物より優先されるもの?....舐めるなよ?お前」


何だ?いきなり怒って....


「魔物に何も失ってないから、そんな事が言えるのか?....もういい、決闘だ。それで、話を聞いてやる」


何で国王と戦うことになるの?


「国王、睡眠は....」


「いらない。本気でいかないと....あの2人を倒したんだ。実力は相当あるはずだ」


....2人って、門の2人?弱過ぎ......


俺が強過ぎるのか。


「....貴方、勝てるの?」


サナが心配そうに見ている。


『勝てるよ。多分』


多分という、保険をかけておく。意味はない。


「....この魔法陣に」


国王が指を指す方向は、玉座の後ろだった。


よく見ると、神の擬態本に描かれていた魔法陣みたいなものがあった。


そして、1人ずつ入っていって、消えた。


多分、転移魔法かなんかだろう。


「....俺は、魔物を......」


国王は、入る時に何か言ってた気がするが、気にしない。


俺は、国王と戦うのかよ....


でも、話が早くなるからいいかな?嫌だって言われるよりも説明がしやすくなるしな。






転移してから周りを見た。


広い....闘技場?


「ここは、闘技場だ。ルールは、魔法とか何でもありで、倒れてから10秒経つか、降参で勝利の決定。これでいいよな?」


『はい、大丈夫です』


最も、拒否したらやばそうだし、ここは乗っかろう......


「10分後だ。そっちに、休憩室みたいなのがある。準備しろ」


そう言うと、国王は闘技場の外に出た。


準備って言っても、特にないな。


「....貴方、頑張って」


『応援ありがとう、サナ』


「うん....」


なんか、心配そうにしているな......


まぁ、大丈夫だろ。


....勝てるはずだ。俺の能力は強い。






10分が経った。


そして、国王が来た。....武装して。


「....そんな、軽装で随分と私を舐めているようだな」


軽装ではないんだよな....


周りに観客はいなかったが、その方が能力を使いやすくて助かる。サナは見てるけど。


「....両者、指定位置に」


もう、始まるのか?まぁ、いいや。


....すぐに終わらせよう。


「では......始め!」


クラーマって人が、始めと言った瞬間に透明化で国王の背後に回った。


「オリジナルは、透明になるのか....だが、魔力感知で....」


....見つかるわけがない。


俺は魔法が使えないんだから、魔力もないだろう。


そんな事より、創造で握力の創造をした。


まぁ、少し手加減して....


「何故だ!魔力感知が——」


国王の背中を殴って、闘技場の端まで吹っ飛ばした。壁には、当たってないから大丈夫なはず....


いや、もうボロボロじゃん。


頼む、もう降参してくれ....


「ぐ....くそ......そういう事か....」


早く!降参!降参!


「....まだだ!」


あれ、本気になっちゃった?


国王は、力を溜め始めている....


俺は、魔法を使う前に話をしたりしないので、力を溜めている間にもう一度、殴ろうと思った。


透明化は、まだ切れていないから....行ける!


俺は、国王に近づいてお腹を殴ろうとした。


でも、防具もボロボロだし、なんか弱いものいじめみたいになってる気がする。


....あ、やばい。透明化切れた。


「....透明が切れたのか?なら——」


面倒くさくなったので、吹っ飛ばした。


うん、爽快!


国王は、倒れていて動けそうにない。


....勝ったな!






10秒のカウントで俺は勝利した。


だけど、話が出来そうにないので、明日また来るように言われた。


身分証を見せれば入れると言っていたが、そんなものはない!


また動けなくして、無理矢理入る。


「....凄い、貴方」


『また、修業で覚えたと嘘をつかなくてはいけないな』


俺とサナは、とりあえず王都を歩いている。


『お腹空いたな。昼飯食べるか』


「わかった」


....なんか、言葉が短くない?ずっと思ってたけど。






美味しそうな匂いがしたので、とりあえず入ってみた。


中には、人がたくさんいた。だけど、2人分は、席を取れるな。


「....奢ってくれるの?」


そういえば、意味もなく奢る気がする。


『次、会った時に返せばいい——』


....2回目。


後で、紙を買い足しておこう。


「貴方についていく。一生——」


『馬鹿だろ!何でそういう考えしか出来ないんだ!』


いきなり何言ってんの?


「私の生きる意味を見つけた....それは、貴方と一緒に生きること」


....友達って、何だろう。馬鹿しかいないの?

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