2章 俺だけが異世界に来たわけではなかった 〜その4〜


それで、家族の為に復讐か......


『復讐なんて事、しない方がいいよ。亡くなった家族が悲しむと思う』


「....でも私は、全てを失った。復讐する為に生きているようなもの」


あんな馬鹿な事言っていたが、色々失って、悲しかったんだろうな。


『復讐して、それが終わったら何するの?』


「....生きる意味なんてない」


そう言った。


....生きる意味なんてないだと?


『意味なんてないのは当たり前だろ!この世界は何か好きな事を探して、やる為にある!命を簡単に捨てるのか?家族から貰った命を!』


....こんな事言ってるけど、俺がこの世界に来た理由なんて、友達を作りたいだけで、馬鹿みたいな理由だ。


生きる意味なんて適当でいいだろ。美味しい物を食べたり、遊んだりする、そんな簡単な理由で生きていたって、いいじゃないか。


簡単に命を捨てるなんて事、しないで欲しい。


俺の言葉が届かなくたって、俺は友達を守ってみせる!


「....私は......」


サナは泣き崩れた。


馬鹿だな、本当に......






そして、すぐに泣き止んだ。....流石、20歳。


「....私は、何の為に生きればいいの?」


『サナの家族のような犠牲者を出さない研究をさせる、とか?』


何かを失った時、失った物が取り戻せない時、それを乗り越える。それで、人は成長する。立ち直れない人がいたら、助ける。


助けられない時だってあるけど、俺だったら、諦めない。復讐しても何も生まないから......


その先に進むしかないんだ。後戻りなんて出来ない、それがこの世界。


「....出来る?私にそんな事......」


『王様に、ついでに言えば何とか出来るかもな』


「....じゃあ、生きる意味がなくなる」


....さっきまで、カッコつけてた俺はただの馬鹿でした。


「....私の生きる意味は......」


『まだ考えなくていいんじゃない?国王に言ってから考えればいいでしょ。それより、朝ご飯食べない?お腹空いたし』


「....わかった」


俺は、まだサナの事を何も知らない。知った風に言っただけだ。


「私の事、何も知らないくせに!」


とか言う人じゃなくて、良かったよ。






....早く起き過ぎて、何処も飯屋が開店してない。


そうだ!おにぎり....1日ぐらい大丈夫だろ。


昼は、サナから逃げ続けていて、食べていなくて、残っていた。


夜は部屋で食べてたが、よく考えたら、サナは飯を食べたのか?


「....ご飯、食べたい」


お腹を壊す可能性....いや、何も食べてない人なんだ。あげよう......


『これで我慢してくれ』


「....ありがとう」


別に、俺が作ったわけではないから、那美子さんに感謝してくれ....






「....美味しかった」


『作ったのは、俺じゃないから』


「ご飯をくれて、ありがとうって言った。独り占めしなかった。貴方は」


いや、そんな酷い事しないから。


『そろそろ、準備しようか』


「....わかった」


1人なら透明化で何とか入ったり出来るけど、ダメと言っても聞かない奴だ。


いや、透明化も真似出来るのか?試してみるか....


『今から、オリジナル魔法を使ってくれ』


「わかった」


透明化を使って....


「....透明?」


見えない....成功か?


「この魔法、オリジナル....3つも持っているの?」


『違います。創造と透明になる魔法で2つです。身体強化なんて出来ません。靴に細工をして、速度を上げてただけです。嘘ついてすみませんでした』


「....敬語をやめて。それで、この透明でどうするの?」


『俺は身分証がないので、これで入る』


「....そんなの、言えば再発行できる....やっぱり、勇者か何かじゃ....」


『ちかいまずよ』


「....何?」


やばい、動揺して、濁点のつける文字を間違えるとか....


「貴方、隠し事。全て話して」


『人には、聞いてはいけない事がある』


「....身分証の再発行しに行こ——」


『すみませんでした、全て話します』


「....やっぱり。全てを話して」


くそ....もう、俺の正体がバレるのか......






「....貴方も友達がいなかったのね」


うるさい!サナも友達いなかったくせに!


俺は、この世界に特別な能力を持って転移で来た事、友達を作りに来た事を話した。


「....友達を作りに来た事は、話す必要がなかったと思う......」


....馬鹿過ぎる、俺。何でそんな事......


「....ふふっ」


ん?今初めて笑っていた気が......


くそ、俺が馬鹿な事で落ち込んでいたら見逃してしまった......


「....そろそろ、王都に行く?」


『そうだな、行くか。サナは、身分証あるよな?』


「....家族がいなくなってから、すぐ外に出て何も持って来ていない」


確かに、バッグなどを持っていないな。


....やばくね?


『サナも身分証ないんだね』


「この村は、身分証の確認がなくて良かった」


馬鹿だよね、うん。


『透明化で入るから、合図したら頼むぞ』


「私達は、完全犯罪のプロ」


変な事言ってるし......


とりあえず無視して、王都へ向かった。

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