1章 異世界でも人と喋れない 〜その25〜






召喚勇者という人は多分、俺がいた世界と同じ世界の人だ。


そして、色々教えたりしていたんだろうな。ゴスロリ服なんて普通あるわけない。


俺を勇者と勘違いした黄泉子さんの事を考えて見ると、俺は召喚された人だと思われていたという事だ。


変な言い方だけど、勇者が召喚されたと思ったのは....


俺の憶測だけど、勇者がもう死んで、新たな勇者を召喚されたと思ったんだろう。


だけど、2人目の勇者が俺の可能性。そして、勇者が生きている可能性が俺の視点である。


....もし、俺が勇者なんだとしたら......


「....影人!何考えているの?まさか、私の妄想を......」


「それは、無いですよね?あるのだとしたら、私の妄想を......」


....決めた。俺は勇者を探す。いなかったら......


でも、その前にやらなきゃいけないんだ。俺は......


『王都に行って、国王をぶん殴って来ます』


「....馬鹿だね」


「そうですね、いきなり何言ってるんですか?」


『奴隷という物をなくして、お金の無い人達を全て、俺は救いたいんです』


「だから!そんな勇者でも何でもない影人が、何でそんな事を......」


そうだ。俺は、勇者のような主人公じゃない、魔王討伐なんて、どうでも良い。人は、死ぬかもしれない。


けど、仕事すら貰えない人は奴隷だ、なんて世界、間違ってる。人は、平等に生きている。それを示すには、国王をぶん殴って言わせるしかないんだ。


『本気です。俺には、それが出来る魔法があります』


「....ダメ!ダメよ!私の前から....離れないでよ......」


『大丈夫です。すぐに帰りま——』


久しぶりに紙が!....って、何で......泣きそうに?


「....まだ......冗談だと思ってるの?....好きなの......着いて行っちゃ....ダメなの?」


「そろそろ、我儘はやめなさい、ミラ」


そんなに俺は、鈍感じゃない。でも......


『危ないので、行かせられないです。お金は、1週間分ぐらいは持つでしょう。これを』


そして、お金をミルさんに渡した。


「....こんなに?ありがたいのですが、影人さんは......」


お金は、まだあるから大丈夫だ。


「....本当に、帰ってくるのね?私との約束....」


『ちゃんと帰って来ます。帰って来た時に、ミルさんと友達になる約束を、今するので』


「....そうね。良かったね、お姉ちゃん!影人の2人目の友達よ?」


「私は、その先が....」


....馬鹿なんですかね?リーリア家は......


『すぐ帰るので、もう出発したいんですが』


「あ、まさか、あの靴をまた......」


まぁ、便利だしね。


「しかし、王都ってここからだと結構遠い気が......」


『そろそろ、行きますね。では、さようなら』


「あっ....。色々と、早いんだから......早く、帰って来てよね」


「....さようなら」


そして、俺は王都へと向かう。


友達を作る為に......じゃないのかもな....


今は......






「——僕はもう、指図されないで生きていく」


「そうですね。強き者が来るまで....待ちましょう?」


「そうだな——」






「——誰か!助けて!!あれは、僕じゃない!!誰か——」






1章 完。

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