1章 異世界でも人と喋れない 〜その22〜






中に入ると、和室に案内された。


やっと、落ち着ける......


「では、私は料理を持ってくるから、少し待っててね」


那美子さんは、部屋から出て行き、三人になった。


黄泉子さんはあまり家に帰って来ないらしい。仕事が大変だとか。


「....さっきの続きをまず、話しましょうか」


あ、忘れてないのか....。落ち着けると思ったのに......


『誤解です。私と初めての友達になった人がミラだっただけの事です』


「ちょっと!何言ってるの?私と影人は、婚約者....だから......」


....話を大きくしやがったなこの野郎。


「そこまで、話が進んで......2人きりで話を......」


『違いますから!本当に!ただの友達です!』


「....酷いわ!あんな事までしておいて......」


もう、話が進まねぇ......


「まぁ、冗談はこのくらいにして......痛い!お姉ちゃん!」


ミラに拳骨をかましてくれた。流石です、お姉さん。


「....本当のこの人との関係を話しなさい」


「....友達。でも、私は本当に影人の事が......好きなの!」


「そう....。なら、この話はこれで終わりでいいです」


え?マジかよ......


それで、通るの?....まぁ、誤解は解けたし、いいか。


「....私の話は、ご飯の後に全て話します」


....あ。そういえばやらなきゃいけない事があった。


『ミルさん、泣いて下さい』


「え?....何で......」


『我慢しなくていいと思います。泣きたい時に泣いていいと思いますよ?』


もう、充分我慢したんでしょう?ミルさんは......


「....え......あ......私は......」


そして、ミルさんは泣いた。涙を手で隠そうとしているけど、ミラが止めて抱きついた。


「....お姉ちゃん!もう、1人で......全部抱え込もうとしないで?」


「....うん」






....落ち着いた所でちょうど、ご飯が来た。聞いてたな?多分。


「....私は、お風呂の準備をするので、ゆっくり食べていて下さいね」


また那美子さんは、すぐに部屋から出た。


....申し訳ない気持ちより、風呂に入れるという幸福の気持ちが大きくて、嬉しくなってしまった。


「....食べましょうか」


「いただきます!」


「....いただきます」


俺は、手を合わせ、食べ始めた。


料理は、俺では名前がわからなかったが、美味すぎる!


....簡単に説明すると、野菜炒めだ!わからない野菜もあるが、その野菜が、とても美味しい!


好き嫌いがない俺は、ご飯と共に食べ進む。....ご飯が涙が出る程、美味しい......というか、美味しいしか言ってないな。


「....これ、あげるよ。お姉ちゃん」


「好き嫌いはダメよ。食べて」


....こんなに美味しいのに、嫌いなものがあるだと?


「....わかったよ。......影人これ、あげる」


そう言うと、ピーマンみたいなものを皿に入れてきた。残すのはもったいないし......


「....ミラを甘やかしては......」


別に、食べたいから食べただけなのに....


俺は、箸を置いて説明した。


『こんなに美味しいものなのに、嫌いなミラが馬鹿なだけです。甘やかしているのではなく、美味しいものを貰ったのです』


「....そうですか」


「....確かに食わず嫌いだけど......見た目が美味しくなさそうじゃん!....でも、影人がそう言うなら......」


そうすると、ピーマンみたいなものを舐めた。....早く食べろよ。


「う....苦い......。これ、いらない。食べて、影人」


おい、それは流石にないだろ......


「....舐めたのなら、自分で食べなさいよ」


「私に舐めさせた影人が、責任を取らなきゃいけないの!....早く......食べて....?」


なんか、変な意味に聞こえるぞ、その言い方。






結局、ミラが自分で食べて、後の残りはミルさんが食べた。....俺が食べても良かったんだけど。


「ご馳走様でした」


「ご馳走様!」


また、手を合わせて、俺は片付けを手伝おうと......


「あぁ、私がやりますから、影人さんは座っていて下さい」


「お姉ちゃん!私も手伝う!」


....いや、男が何もしなくていいのか?






風呂にも入って、ミルさんはぼろぼろの服を捨てて、那美子さんの服に着替えた。ミラは、丁度いいサイズがないので、ゴスロリ服のままだ。


....さて、一息ついた所で話を始めようか......


風呂の話を。


と、冗談を言ったが、本当に風呂が凄くてこの話だけで単行本が作れるよ?


....まぁ、どうでもいいか。


今日は宿屋が使えないので、色々話をした結果、泊めてくれると言っていた。


....マジでこの世界の人達は優しいな。






「私は、お茶を入れてきます」


那美子さん、すぐに部屋に出るけど......


『那美子さんは、何ですぐに部屋から出て行くのですか?』


「....那美子は人見知りで、私以外とあまり人と話さないんです」


そうだったのか......


「....そろそろ、話しましょうか」


ミラは先に寝た。....その方が、ミルさんは話しやすいだろうな。


『お願いします』

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