1章 異世界でも人と喋れない 〜その20〜
『早く、お姉さんを助けるぞ』
「何?いきなり......」
『うるさい!早くお姉さんを助けて、飯を食べたいんだ!行くぞ!後でまとめて話す』
俺は夜、朝のパンはミラにあげたし....昼も食べてない。
異世界に来て、食べない時間が多くなってるが、今回は本当にお腹が空いて、早く何かを食べたいという事しか頭にない。
「え....急に?ちょっと!待ってよ!黄泉さんは....」
「....あぁ、私はいいですよ。貴方は、早く行かないとあの人、行っちゃいますよ?」
「そうですね!ありがとうございます!黄泉子さん!....また、会いましょう!」
「....あの力。まさか......」
俺は、靴に命令して、ミラのお姉さんの場所に行った。
....ここは多分、奴隷商の家かな?
ここに命令で来たって事は、まさかミラのお姉さんは、避難していないのか?
....早く助けて、飯食べよう......
「ここに....いるのよね?」
そう言うと、勝手に家のドアを開けた......
「普通の家っぽいね。....いや、そこに地下があるわね......」
ミラが指を指した場所には、カーペットだ。多分、その下に......
「ほら、やっぱり......」
地下に続く階段があった。
....行くしか道はなさそうだ。二階はないから、ここに......
「早く......お姉ちゃんを!」
すぐに飛び出しそうになったが、俺はミラを止めた。
「何....するの?早く....お姉ちゃんが......」
『お姉さんは、俺が助けに行く。奴隷商が避難していない可能性もあるからな』
まぁ、本当は奴隷になって酷い格好になっているお姉さんをあまり見せない方が良いと思って......
「......やだ。私も行く。だって、影人が助けてくれるでしょ?....私は、一緒に行きたいの!」
うわ....言っても聞かなそう。
....仕方ない。無視して、行くか......
「え?....ちょっと!無視しないで!....置いて....行かないでよ......」
別に、置いていくつもりじゃ....
あ、やばい....泣きそうになってる......
『わかったから!待って!泣かないで!』
「うぅ....。......私、そんなに足手まといなの....?」
いや、ミラには凄く感謝してるよ。
ミラがいなかったら、俺は最悪、イルスタンで引きこもり生活を始めるかもしれなかったんだから....
『違うから、頼む、泣かないでさ、早く行こう?』
「うん....。わかった......」
そして、俺とミラは地下に行った。
ここは......酷いな。
牢屋のようになっていて、1つ1つ、値札のような紙が貼ってあった跡があって、人はその中にいなかった。
......多分、買われたのだろう。
ミラは俺の裾を掴み、震えながらもついて来ている。
奥まで進み、牢屋の中には誰もいなかった事を確認した。
....だが、ドアがあった。ここに......
「....ここに、いるかもしれない......」
そして、俺がドアを少し開けた瞬間......
「....な......に?」
ミラは、急な出来事に驚いて腰が抜けていた......
ドアが勢い良く開いて、誰かが針のようなものをいきなり俺に突き刺した。
......突然だったが、コートの上だったので、何とか編集で服を硬くしたら、刺さったが、体には当たらなかった....
しかし、コートの前を閉じておいて本当に良かったよ......。開けて、カッコつけてたら俺は....いや、考えないでおこう。
それより......
「え?....大丈夫なの?」
俺は、刺さった針を抜いて地面に捨てた。
「血は......何で?....影人って、本当に人間?」
いや、見た目でわかるだろ!
....そんな事よりもう1人驚いている人がいるようだが......
「あ....え......?ミ....ル?」
「え?....お姉......ちゃん?」
この人が、ミラのお姉さんか。服は、ボロボロだが、痩せ細っていたりはしないな。同じ金髪で、顔はやっぱりミラに似ている。
「....お姉ちゃん......お姉ちゃん!」
ミラはお姉さんに抱きついて泣いていたが、お姉さんは、肩を掴み、離した。
「ミラ、話は後で全て話すわ。とりあえず早く、ここから逃げて何処かへ....」
『魔物が街にいない事の確認が終わりました。司教の指示で行動して下さい。繰り返します——』
「やばい!早く逃げなきゃ......」
お姉さんは、ミラを引っ張って走ろうとした。
影の薄いキャラの崩壊が始まっていたところだが、俺は、改めて自分は影が薄いと自覚したよ。
「待って、お姉ちゃん!....影人!早く行くよ!」
はいはい....
で、お姉さんは今、凄く驚いているが、刺されても生きていて、驚いているのか、人がいた事に気づかなくて、ミラが言ってから気づいて驚いているのか......
....後者だと、悲しいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます