1章 異世界でも人と喋れない 〜その15〜







「おい!逃げるぞ....何で開かねぇんだよ!!おい!聞こえてんだろ!ミル!!」


よし、窓も閉めてドアも鍵をかけて固定出来た....


私はもうあの悪魔から逃げる!逃げ続けてやる!!


必ず....お姉ちゃんを助けるんだ!私の平和な世界を取り戻すんだ!!


「....くそっ!!死んでも知らねぇからな!!」


やった!


後は、魔物がここに来るのか心配だけど....大丈夫。


私は1人で....やるんだ......


....少し、眠い....寝よう。






そして、起きたらすぐにアナウンスが鳴った。


『魔物が街にいない事の確認が終わりました。司教の指示で行動して下さい。繰り返します——』


このアナウンスは....魔物がいなくなったのかな?


靴を履いて....早く家から出なきゃ....


......その前に——






よし、外に出れたけど....


とりあえず、どうしようかな?広場の方に....あの悪魔に見つからないようにしないと......






....広場に来たけど、お腹空いたな....






....ずっとここに居るけど、どうしよう。悪魔に見つかるのも時間の問題だし....。お昼になったよ....


夜、朝、昼、食べないで....本当にどうしよう......


....あそこにいる人....お腹鳴ってるな....


よし、美味しいご飯屋さん教える代わりに奢って貰って......


大丈夫、1人でやるんだ。....よし、行こう。






「....美味しいご飯屋さん、教えてあげようか?」






「——で、今に至るわけよ」


『俺も前に家でやった事あるけど、ケチャップとかで、血みたいな風に地面とかにやっただろ』


「....まぁ、これが復讐という事でいいでしょう。どうせ、何とも思わないわよ」


....本当にやってんのかよ....。冗談で言ったんだが......


『色々大変だったんだな。お姉さんは今どこに?』


「わからないわ....奴隷商人に売られているとは思うけど、何処にいるか......」


確かに、奴隷っぽいのが街に少しだけいたが、こんなに差別の酷い世界なのか。


『そうか。でも、ミラは俺にここまで話したんだ、もう赤の他人じゃないな』


「....じゃあ、結婚を......?」


『そういう事言ってるんじゃないから!俺はミラのお姉さんを助けたいんだ』


「....何で?......私はただ、奢られただけの人なのよ......?人に優しくし過ぎよ......馬鹿」


まぁ、強制的にだけど。


「....でも、お願い。助けて....お姉ちゃんを。私のたった1人のお姉ちゃんを!!」


泣きながらミラは言った。


......俺が人を助けるのには理由がある。


『わかった。でも、タダで助ける訳にはいかないな』


まぁ、お金がないから、ただの冗談で言ったつもりだが......


「....わかったわ。お姉ちゃんを助けてくれたら、私を好きにして......」


....馬鹿じゃないの!?自分を簡単に......


『そういう事言うな!冗談でもそんな事言っちゃダメ!俺はただ、友達になって欲しいだけなんだ』


「....友達?」


そうだ。....俺は友達を作りたいんだ。


俺は、もうあの時のようになっては....いけないんだ......






——数十年前、俺は小学校でも友達なんて、いなかった。


でも、友達になろうとしてくれた人がいたんだ......






「....小学校なんて、行く必要あるのかな......?」


まぁ、そう言いながらも登校するけど。....親に怒られるのが嫌なだけだけどな。


やっぱり暇だな、友達がいないと......


話かけようとしないから、友達が出来ないのかな?


....まぁ、いいか。どうせ話せないしな。






また、退屈な昼休みだな。


......ラノベでも読むか。






....さっきからずっと誰かに見られてる気がする....


自意識過剰なだけだといいんだが......


その時から、毎日....見られていた気がした。






そして、小学5年生の始業式の帰りに......


「あ....あの、君....僕と....友達に......」






「え....?ねぇ、何で無視するの?」


....無視するなんて酷いな。誰だよ、そんな酷いことするやつ......


「ねぇってば!」


そう言って後ろから俺の近くに来た....


ちょっとオタク感のあるデ....ふくよかな体型の人が......


というか俺....喋れないんだけど....。どうしようか......


「あの....同じクラスになった山田だけど....いつも君を見てたの....僕なんだ....気づいてた?」


....そうだったのか。


クラスの人は覚える必要ないと思ってたからよくわからんが、とりあえず....見るのやめて欲しいな......


視線を感じると、ラノベを読むのが恥ずかしくなる。


それで....昼休みに教室で1人でラノベ読んでいるやつに何の用だ?


「....それでね......えっと....友達になって欲しい。....ずっと、ラノベを読んでて、話が合いそうだから......」


....何で?


よくわからないが、とりあえず帰りたい......


観たいアニメあるし....保留みたいな感じで......


そして、俺はランドセルから教科書を取り出した。


薄井流必殺技....指を指して、説明するというだけの技....


それを使ってとりあえず帰ろうと思って....


......あった!


『そして、俺は家に帰ろうとした。』


よし、ここに指を....はい、これでいいでしょう。


このまま手を動かさずに、山田君に、教科書を見せていたつもりだったが......


「....そんな....君は、僕をそんな風に......うわぁ〜ん!」


そう言い残し、山田君はどこかへ....


俺は、再び指の指す方向を見直して見たが......


『....だがその帰り道に、敵が出てきたので倒しながら帰った。』


ちょっと左に指がズレてたぁーー!!


しかも、敵ってとこだけを指してるようにも見える......


....まぁ、とりあえず帰るか。

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