1章 異世界でも人と喋れない 〜その11〜






......服屋を教える代わりに服を買ってと言われ、強制的に悪魔と一緒にいるわけだが、誘拐犯と間違われないか?


悪い意味で影が薄くなくなる気がするんだけど......


「....着いたけど、またなんか言って——」


『入りましょう』


名前は、洋服屋テイルか。


中に入ってみると、広くて色々な服が売っているな。....子供用もあるな。


『その服のままでいいじゃないですか。何故、私に奢らせるんですか?』


「....自由になりたいのよ....。私はもうあの悪魔なんかに......」


悪魔は貴方だろ。


....まぁ、いいや。俺は自分に合う服を......


「....服、選んでよ」


『子供用の服は、そこにありますよ』


「....うわぁ〜ん!うわ——」


『わかりました』


そして、すぐさま似合いそうな服を探した。もちろん子供用じゃなくて、Sサイズで。


....マジでズル賢い悪魔だな。


選んだ服は、金髪に合う色を考えて、黒のゴスロリ服を選んだけど....怒んないかな?


別にゴスロリが好きじゃないから....合う服が選べないから仕方なくこれでいいだろうということだ。


....信じてくれ。ってか、何でこんなの売ってるんだ?


服を渡したら試着するとか言って試着しに行ったが....


やっと1人に....なれた。


このまま逃げてもいいが、流石にパジャマのままは嫌だ。本当に。






....これでいいか。試着は面倒くさいからやらなくていいや。


サイズは別に大丈夫だろ。上は黒コートの中に着るものがあればいいと思って黒のTシャツみたいなのを買った。


これで、パジャマ卒業だ。上も捨て....ズボンも黒で全身黒の暗殺者みたいな格好になっちゃった。


まぁ、コートの中を変えただけだから元々、暗殺者みたいな格好だったわ。


あと靴と靴下は....影で作ったやつのままでいいか。お金を節約したいしな。誰かのせいで。


「....どう?似合ってる?」


....出てきたわ、その誰かが。


って、可愛いじゃないか。いや、決してゴスロリが好きなわけでは......


『似合ってますよ。私は服買ったので、さようなら』


「....うわ——」


『買います、買わせていただきます』






で、何で着いて来るの?服買ったじゃん。しかも、着てるし....


まだ、俺に何か奢れと?


....まぁ、一応聞くか。


『なぜ、着いて来るのですか?』


「....別に着いて行っても、私の自由なんだから、いいでしょ?それに、次はどこに行くの?」


何なんだ?この人は......


まぁ、色々この街の情報を知ってるし、いいか。


『宿屋に泊まりたいんですが、場所を知りたいのです』


「それなら任せなさい!あっちよ!」


元気になるの早いな。


....やっぱり子供だな。






「ここよ。宿屋は、やっぱりここが最高よ」


宿屋ハリーか......


ってか、マーリンさんに宿屋の場所は聞いていたんだった......最悪だ。俺は馬鹿だ....


というか、名前が何屋さんとか多くないか....?


まぁ、気にしないよ、もう......


中に入ると受付が目の前にあった。


「2名様ですね」


『いえ、1人——』


「2人よ」


『おい!いくらなんでもそれはダメだ!!』


「えー、....ケチだなぁ」


『私は赤の他人です!早く家に帰って下さい!』


「....わかったわよ」






よし、悪魔は消え去った。


『ということで、1人です』


「はい、わかりました。一泊ですね?では50エンになります」


マーリンさんに泊めてもらった時も50エンだったな。


そういえばマーリンさん達はまだ、話してるのかな....?


『まだ、外に用事があるのですが』


「その場合ですと、この用紙に記入して、また来た時に受付に番号を言えば鍵を渡します。今日のみですが」


とりあえず用紙を書いて....風呂があるか聞きたいな。


名前は考えるの面倒だからミル・リーリアでいいや。....年齢も20歳って事にしておこう。


『できました。そして突然すみません、銭湯のようなものはありますか?』


「大浴場なら外に出て左にずっと真っ直ぐ行けばローリア大浴場という大きな看板があるので、そこに行けばいいのですが、今は多分、冒険者達が沢山いて、混んでると思いますが......」


『そうですか、ありがとうございます』






....くそがぁーー!!汗を流したかったのに....


外に出てとりあえず......


「....私の家なら風呂あるけどな。なんなら、泊まってもいいけど」


『あのさ、何で家に帰ってないのかな?』


もう、夕方の時間だ。


そして、ドアを開けたら悪魔がいた......


「だって、夜ご飯を食べたい....」






『そろそろ本当のこと話して下さい。家族とかに虐待とかをされているのですか?』


俺はミルさんが、家族の話をすると足が震えていた事を気付かないふりをしていたが、今言わなきゃと思った。


....俺は、いつからこんなお人好しになったのかな?


友達いないのにさ......


「私は、別にそんな......」


『話さないなら別にいいです、無理に聞き出したりはしませんよ。ただ、相談はいつでも聞きます』


「....うわぁ〜ん!うわぁ〜ん!」


おい、ちょっと待て、何故いきなり泣くんだ?


とりあえずドアの前だと迷惑だから......

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