1章 異世界でも人と喋れない 〜その10〜







....何だ?何で子供が影が薄いというキャラがなくなりつつある俺に話しかけてくるんだ?


ってか、お腹鳴ってたのを気づかれている....恥ずかしい。


「美味しいご飯屋さん....教えるから、奢って」


見ず知らずの人に何言ってるんだ?この子供....


女の子だし、金髪で顔は可愛いけど......すぐ誘拐とかされそうだな....


文字、わかるかな......


『君、お母さんはどこかな?』


「子供扱いしてるでしょ....。私、これでも20歳よ」


!?歳上だと....?


いや、異世界だと子供はこんな冗談を言うのか、頭いいなぁ。


『嘘はいいから、早くお母さんの所に行こうか』


「....嘘だと思ってるの?......これで信じて貰える?」


そうすると、身分証のようなものを見せてきた。身分証って簡単に渡して良いものなのだろうか。


....確かに写真は同じ顔だな。名前は....ミル・リーリア、年齢も20歳って、書いてある....。普通、生年月日とかの気が....あっ、そうか。


『凄いね、ミルちゃんは。でも、おままごとは今しないよ、早くお母さんの所に行こうか』


「....そろそろ、怒るわよ。歳上に向かってちゃん付けとは......。この身分証がおままごとの道具って言いたいの!?本物よ!!何なの?」


こっちの台詞なんだけど......。いきなり来て奢ってとか....


『百歩譲って、ミルさんが20歳とします。ですが、いきなり奢ってとか言われると』


「急にさん付けとか....やめてくれない?ミルでいいわよ。で、何で奢って欲しいのかだって?そんなの決まってるじゃない......」


....何が決まってるんだ?


「財布をなくしたのよ!」


よし、飯屋を探しにいくか。


「....ねぇ!ちょっと!何で置いていこうとするのよ!ご飯奢ってよ!ご飯!ご飯!」


『うるさい!何で私が奢らなきゃいけないんですか!』


「お腹空いたの!....だって君、ご飯屋さん知らなそうな感じだったじゃん!私が教える代わりに奢ってよ!」


『確かに知らないけど、自分で見つけるから、さようなら』


「....わかったわ、これだけは使いたくなかったけど......」


....何するつもりだ?


「うわぁ〜ん!うわぁ〜ん!この人が私の初めてを奪ったの!無理やり——」


『一緒に行きましょう』


....こいつ、本当に20歳な気がする。このズル賢さが。


「....なんか悪口言った?」


『いや、気のせいだと思いますよ』






「ここが私のおすすめのご飯屋さん」


....はぁ。色々と悲しいなぁ。この店、雑貨屋マーリンの目の前の店だわ。


知っておけばこんな悪魔と出会う筈がなかったんだ....。マリアの飯屋....飯屋って書いてるのに気づかない俺は馬鹿だ......


....こいつもだけど。


「....また、悪口言ってた気がするんだけど」


『気のせいですね、入りましょう』


「ねぇ!ちょっと!何で軽くスルーするの?....まぁ、いいわ」


ドアを開けると綺麗なお店で、人は多分、魔物の件で今は少ないが、いい匂いがするし....少しはミルに感謝....一応するか。


「いらっしゃいませ!2名様ですか?」


『1人で——』


「2人です」


俺の紙がぁーー!!


紙をバインダーから外して、くしゃくしゃにしやがった....


「無駄な足掻きはいいわよ。君は私に奢る運命なのよ」


うわ、最低だ。


....毎回奢らせて生きてきているの?この人は。


....まぁ、とりあえずチップである程度はお金があるが....節約しておきたいのに......






席に座ると、お冷、おしぼりを出してくれた。....前から思ってたが、この世界は、なんか日本だか外国だかの知識が混ざってよくわかんないんだよなぁ......


また、気絶した時に神様に会えたら聞けるかな?


「ご注文はお決まりでしょうか」


「えーと....お子様セット!それと、オレンジジュース!」


「かしこまりました。お子様セット一点、オレンジジュース一点ですね」


....やっぱ子供じゃねぇーか!....騙されかけた俺が馬鹿だったぜ。


「あの、お客様、ご注文は....」


やばい、困ってる....


どうしよう....色々あって選べないな......


『おすすめはありますか?』


「本日のおすすめは期間限定のランダムステーキです」


ランダムステーキ?どういうものなんだろう....


....まぁ、何でもいいか。


『それを1つ下さい』


「はい、ランダムステーキ一点ですね。....ご注文の確認をします。お子様セット一点、オレンジジュース一点、ランダムステーキ一点でよろしいでしょうか」


俺は、頷いた。


「かしこまりました、お子様セットのおもちゃをすぐにお持ちします」


「やったー。おもちゃ!おもちゃ!」


....飯を食ってから、歯磨き....は出来なそうだな....うがいで我慢するか。


次に、服を買って、風呂があったら入って....夜飯を食って、寝る。


....これが今日の予定だな。


そういえば....


『何で、お子様セットなんだ?20歳なんだろ?』


....一応。


「私は....ここのお子様セットの甘いカレーが好きなのよ」


子供だから、辛いのが苦手なのね。


....悪魔なのに可愛い所は一応あるんだね。


「....やっぱり何か悪口を言ったわよね」


『幻聴が聞こえるんですか?寝た方が良いですよ?』


「....うるさい!うるさい!あっ、料理来たよ」


貴方の方がうるさかった気が......


「こちら、お子様セットです。次に、オレンジジュースです。そして、ランダムステーキです」


来るの早いな....


というか、ランダムって何だ?


....まさかとは思うが、魔物の肉を....んなわけないか。


「いただきま〜す」






....美味しかった......


ご飯が欲しかったが、しょうがなかった。大き過ぎてご飯食べてたら、食べ切れなかったし....


まだ肉の謎は解けてないけど、もういいか。


「美味しかったでしょ?」


『そうですね、ありがとうございました。さようなら』


「いや、ちょっと待ってよ!これから、何するの?」


『何故、教えなきゃいけないんですか?』


「いや、着いて行くけど何か?」


『さようなら』


「....うわぁ〜ん!うわぁ〜ん!この人——」


『服屋に行きます。一緒に行きましょう』

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