1章 異世界でも人と喋れない 〜その9〜






俺は目が覚めて、まずやらなきゃいけないことが一瞬でわかった。


腹ごしらえだ。


まず、飯を食える場所を探そう。


マーリンさんは....いないな。寝ているのかな?


とりあえず外に出てみるか......






広場の方に来てみたが、何かまた、騒がしいな....


この騒がしさ、まさか....


いや、そんなことはないな。


魔物が街を襲おうとした騒ぎがあったのにマジックショーなんか、やってるわけ......






「はい、次は....このポーションを一瞬で消します。......3....2....1....はい!なくなりました!!」


「おぉーー!!」


まぁ、街の人達の不安とかを消すには良いことなのかもな。


....飯屋を探すか。


「....ん?あれ?君!用事があるとかで来れないってガルが言ってたのに何でいるの!?」


マーリンさんか。影が薄いというキャラはもう俺にないのか?


ガルさんや、マーリンさんは特別なのかな?


....というか寝てたんじゃないのか?


いや、俺が寝過ぎたのか。


『用事は魔物の件の騒ぎで、別の日にやろうと思っていまして。しかし、街の危機が嘘だったかのようにマジックショーをやっていますが』


「....まぁね。ガルはこのマジックショーが初めてのショーで、ずっと楽しみにしていたんだ。魔物が来た所で止めたくないとガルは言って聞かなかったよ。....これで街の人達は不安とか忘れて、楽しんでくれて良いショーなんじゃない?」


そうか....疲れているのに、大変だな。


「....ったく、何で俺がこんな所に......」


「あっ、アルゼロス!」


「....お前、俺がガルのショーに行く必要が....って、こいつ誰だ?」


太い声と筋肉を自慢しそうな濃い顔したでかい男が近づいて来た。....男が好きなわけではないけど、顔はカッコいいな。


「いや、この人は喋れない人なんだ。....椅子で人が寝てたでしょ?この人だよ」


「そんなの見てねーよ。....お前、名前は?」


俺、名前は....どうしよう。普通に薄井影人って、言ったら漫画でよくある....


「薄井影人?珍しい名前だな....」


とか、絶対言われる....。それだけは避けなければ......


「こんにちは、マーリンさん、ゼロさん、それと君は......」


「おい、ゼロって呼ぶな、アラン。こいつ、名前も喋れないんだとよ」


言い方、ちょっと酷くね?....性格はちょっと嫌いだな。


....で、隊長は何でいるんだ?


「まぁ、紙で一応話はできるけど......」


「はぁ....まぁ、そんなことはどうでもいいんですよ。話の続きのことなのですが......」


どうでもいいとはなんだ!....というか何の話だ?


「人が多いだろ!....こっちで話せ!」


3人とも何しに行ったんだろう......まぁ、いいか。


そろそろ飯屋を探すか。観客には気づかないだろうが、お腹がたまに鳴って少し恥ずかしい。






「....美味しいご飯屋さん、教えてあげようか?」

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