1章 異世界でも人と喋れない 〜その7〜
「そうか....。君も戦って、くれるのか......」
今も倒れそうなガルさんにマーリンさんが肩を貸した。
「ちょっと、無理しないで!貴方いつも頑張ってるのに今日はさらに頑張って....こんなに疲れているじゃない....。何が......皆の笑顔が....大事......だとか、本当に......馬鹿なんだから....」
涙目で、マーリンさんはガルさんに言っていた。
俺は....
「集まってくれた冒険者、元冒険者の者共!よく聞け!私はこの街の長、ディーン・アルベルトの息子、そしてこの東の街イルスタン護衛隊隊長、アラン・アルベルトだ!」
....誰だよ。ってか、この街の名前初めて知ったわ。
金髪のカッコいい顔で、モテそうだな畜生。......俺とは正反対で、クラスのトップにいそうなキャラだな。
「指揮は、私が行う!前衛職業は——」
真面目にやっているな....。俺が思ってたキャラ通り。
とりあえず、ガルさん、マーリンさん、行きま......
いねぇ....
また、瞬間移動かぁー!!
....安全そうな後衛に行ってみたが、ガルさん達は見当たらない。前衛なのか?
「今回は、何故こんなことが起きたのか....説明する暇もない....。元冒険者が招集されていて、事の深刻さがわからない馬鹿ではあるまい。....さぁ!今こそ、この街を守る時だ!」
「おぉーー!!」
冒険者達が雄叫びを上げながら進軍していくのがわかった....
何故、いきなり街を守る話になっているのか....
そんな小さな疑問は、この空のようにたくさんある星の1つに過ぎなかった。
魔物が目視できる範囲では数百体の話だった....。いきなり、こんなの勝てるのか?
魔物は、俺が知っているゴブリンやオークなどと似ているな....
あの隊長....ただのイキリ野郎かと思ってたけど、指揮は凄いな。魔物の知能が低いことを知っていて、陣形の構成が完璧になっている。
見た所、無詠唱で魔法を発動しているが、俺は魔法が使えないし、関係ない事か......
前衛は、一軍と二軍に分かれている。一軍は、防御力上昇などの魔法でタンクとしての役割。魔物を引きつけて二軍に任せる。危なくなったら、下がったりと、状況に応じた行動が大事だ。
二軍は、一軍とは逆に、攻撃力上昇などの魔法でアタッカーとしての役割。一軍の引きつけた魔物の攻撃を行うだけだが、攻撃を与え過ぎると魔物の注意がアタッカーに寄せられるかもしれないので、気をつけるようにと、あの隊長さんが言っていた....
後衛の役割としては、支援と、引きつける役割が固まらないようバラバラに組まれている。支援の役割としては、自身強化の魔法の持続効果上昇と、回復。魔法で攻撃するより、魔力の効率を考え、この構成になっている。
....確かに後衛の方が少ないが、それを見抜いて、役割をすぐ構成するのは至難の業だろう。....回復は、ポーションが切れた人から使っていき、無理せずタンクを下げて、次の作戦に移行する。
ここで、引きつける役割の出番で、タンクと交代し、少量の魔力で攻撃することで挑発のようにして、逃げる。その間に、アタッカーに攻撃してもらうという作戦だが....防御力上昇などを使っていないので、ある程度の距離を保ちながら逃げるのが、難しい所だ....。それが、俺の役割でもあるが....
残りの人は、夜で視野が悪いので、光の魔法で照らす役割をしている。
....この陣形をずっと保つことが出来るように構成できるあの隊長は、何者なんだ?
......だいぶ時間が経って、魔物が減っている。魔物の死体がめっちゃあるけど、血とかが出ていない。....謎だ。
逃げている魔物もいるな。一晩中戦って....寝ないで朝になるな、多分。
「この陣形!崩して見よ!知能の低き、魔物共よ!!」
「....アラン隊長。来ました!」
「あぁ、そうだな。特殊部隊の準備と、前衛に——」
あの隊長何やってるんだろ。
まぁ、そろそろ終わるし....あれ?なんか....皆が戻ってる......
退却....じゃないよね?あそこに百段ぐらい飛び抜けてるやついる....よね....?
禍々しいオーラを放っているドラゴンの様な魔物が一匹....やばそうだが、このまま放っておくのか....?
「あの魔力....ちょっと特殊部隊だけで勝てるか微妙なんだが....」
「た....隊長!それは....」
「....最低でも、この街はもう......だが、私は最後まで戦い続けるぞ。この街を......この民達を、守る義務がある!!」
......どうしようか。皆、逃げちゃったよ。
俺も逃げた方がいいんだろうが、まだ友達を作ってないんだ....
こんな所で、街を壊されるのを見過ごす訳にはいかないんだ。
まだ....俺は!!
「ガルさんとマーリンさんに!ありがとうって....ちゃんと言わなきゃいけないんだ!!」
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