1章 異世界でも人と喋れない 〜その6〜


『まず、怪我をして倒れていた私に声をかけてくれて、助けてくれてありがとうございました』


「あんな所で倒れていたら、普通気づくでしょ」


気づかない人が多いので、影が薄いと言われているんだよな......


『怪我が酷くなって足が動かず、倒れてしまったのです。怪我は、森で負ってしまい近くの街へと、ここに来たわけです』


「事情はわかるけど....普通の人は、普段あんな所に行く用事なんて......」


『深くは追求しないで貰えるとありがたいです』


「....わかったわ。お金もちゃんと払って貰ってるし、しょうがないわね」


『すみません、ありがとうございます。マーリンさん』


「あぁ、まぁ名乗らなくてもわかるだろうけど....マーリン・コードよ。......後で、名前教えてよね」






マーリンさんが2階に行って、空気になっていたガルさんは......


「....ん?あぁ、話は終わったのか?」


どうやら疲れているらしいな。俺が来る前もマジックショーを1人でやっていたのだから。


『はい。とりあえずわかって貰えました』


「良かったよ。あぁ....悪い。もう寝るから......」






ガルさんも部屋に行っちゃった......


どうしよう、宿は......


2階に行ってみるか?酒は飲まないけど......流石に飲めない人が来たら迷惑か。


....本当にどうし——


『緊急事態発生、緊急事態発生....魔物の群れが、東の森から接近中。街の中の冒険者、元冒険者は、直ちに街の東口へ集合して下さい。その他の人は、教会の地下へと避難を行なって下さい。繰り返します——』


なんだ?いきなりアナウンスみたいなのが....


それに2階からどんどん人が降りてくる。避難した方がいいのかな......


「....君!早く教会へ!」


ガルさん!どうなっているのか、聞きたいが......


よし、避難するか。


道がわからないので付いて行こうとしたが....ズルだ!マーリンさんと瞬間移動で一緒に逃げやがった......


外に出ると、街の人達は右へ左へと、いろんな方向に走っている。


....大丈夫。俺は、運はあるはずだ!


右だ!!






はい。なんか、いっぱい強そうな人が集まっているな......もど——


「君!!」


....何度も聞き覚えがある声だな。


何故、影の薄い俺を見つけるのか......


「やっぱり君か....。何でここに?教会へ....まさか、君も冒険者か元冒険者なのか?」


違うけど、君もって事はガルさんは冒険者なのか?


....マジックショーしてるのに?


「....ちょっと貴方!いきなり走って....って、君も冒険者なの?」


ガルさん、マーリンさん。2人して聞いて、俺は....






小さく頷いた。

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